Qualcomm、AMD、Intel 「AI PC半導体」の“王者なき戦い”が始まるAMD、NVIDIA、Intelの攻防【中編】

Microsoftの「Copilot+ PC」を巡り、半導体ベンダーの競争が激しくなる見込みだ。QualcommやIntel、AMDなど半導体ベンダーのトップは、「COMPUTEX TAIPEI 2024」で何を語ったのか。

2024年07月28日 09時00分 公開
[Bridget BotelhoTechTarget]

 MicrosoftのPC新シリーズ「Copilot+ PC」を巡り、PCおよびAI(人工知能)技術向けのプロセッサを手掛けるベンダーの競争が激しくなる見込みだ。

 Copilot+ PCに最初に搭載されたプロセッサを手掛けるQualcommの他、IntelやAdvanced Micro Devices(AMD)といった半導体ベンダーのトップが、2024年6月に台湾で開催されたカンファレンス「COMPUTEX TAIPEI 2024」(以下、COMPUTEX)で登壇。AI PC(AI処理の機能を搭載するPC)分野のプロセッサ新製品について説明した。混戦のAIプロセッサ市場で主導権を握るのはどのベンダーなのか。

Qualcomm、AMD、Intel “王者なき戦い”の行方は?

 MicrosoftのWindowsデバイス担当バイスプレジデントであるパバン・ダブルリ氏が、AMDのCEO、リサ・スー氏の基調講演で登壇した。ダブルリ氏はAIワークロード(AI技術関連の処理やタスク)に求められるプロセッサの処理能力が、従来の一般的な用途よりも大幅に高まっていることに触れた。その上で「CoPilot+ PCには少なくとも40TOPS(毎秒40兆回の演算実行回数)以上のNPUが必要だ」と説明した。

 その要件を満たすCoPilot+ PCとして、Microsoftが最初に発表したのがQualcomm製のプロセッサを搭載するPCだった。Qualcommのプレジデント兼CEOのクリスティアーノ・アモン氏はCOMPUTEXで、同社がSoC(システムオンチップ)「Snapdragon X」シリーズでAI PC市場に参入すると発表した。Qualcommによると、Snapdragon XシリーズはAI処理性能が45TOPSと40TOPS以上を達成していながら、バッテリー駆動は数日持つという。

 アモン氏は自身の基調講演で、「この新しいPCが従来のPCと違う点の一つは、Windows PCが時間の経過とともに賢くなっていく点だ」と述べた。Qualcommは、NPUが処理性能向上の鍵になると説明する。AIワークロードの処理をCPUとGPUからNPUに移すことで、処理性能の向上と電力節約が大きく前進する設計だ。

 IntelのCEOパット・ゲルシンガー氏は、COMPUTEXでCopilot+ PC向けの新しいSoC「Lunar Lake」(開発コードネーム)を発表した。ゲルシンガー氏は、「x86」(命令セットアーキテクチャの一種)系のCPUとGPUに、NPUを組み合わせることの利点を強調した。同氏によると、Lunar Lakeでは処理能力と電力効率(消費電力当たりの処理性能)が大幅に強化されていると強調した。

 Lunar Lakeは2024年第3四半期から、PCベンダー20社の80機種以上のCoPilot+ PCに搭載される計画となっている。Lunar LakeのNPUの処理性能は48TOPSで、生成AI用途の処理性能の大幅な強化を図っているという。ゲルシンガー氏は基調講演で、QualcommのSnapdragon X Eliteを引き合いに出した。「Snapdragon X Eliteがx86のプロセッサより優れているという話があったが、まずその点を否定しておきたい」と語った。

 AMDのスー氏もCOMPUTEXの基調講演でAIワークロード向けの新プロセッサを売り込んだ。同氏は、同社の新SoC「AMD Ryzen AI 300」を紹介し、AIワークロードを効率的に処理する上ではNPUが重要な役割を担う点を強調した。

 3社が発表したNPUの処理性能を比較すると、QualcommのNPUが45TOPSなのに対し、AMDのNPUは50TOPS、IntelのNPUは48TOPSとなっている。いずれもAI PC向けのプロセッサとして処理性能の大幅な向上を実現している。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリスト、ゲイブ・クヌート氏は、AI PCの軍拡競争(軍備拡張競争)が急速に進んでいるとみる。「TOPS競争の時代に突入した」とクヌート氏は語る。

 GPUベンダーNVIDIAがCOMPUTEXで発表した取り組みの一つも、NPUを強調した3社とやや路線は異なるもののやはりAI PCを意識したものだった。NVIDIAは、同社製GPUを搭載するAI PC「RTX AI PC」を紹介した。

 コンサルティング会社J. Gold Associatesのアナリスト、ジャック・ゴールド氏は、次のように予測する。「AI PCのシェアは2、3年以内にPC市場の65〜70%を占め、企業向け市場ではさらに大きな数字になる可能性がある」

 AI PC市場におけるプロセッサベンダー別の売れ行きはどうなるのか。ゴールド氏は「企業向け市場ではIntelが過半数を押さえ、AMDがそれに続く形になる」と予測。Qualcommについては「コンシューマー市場のハイエンド分野と中小企業向けで人気が出る可能性があるが、過半数を押さえるまでには至らない」と予測する。


 次回は、データセンター分野におけるプロセッサベンダー各社の新たな取り組みをまとめる。

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