テレビは技術進化の結果、もはや「テレビ番組を流すだけ」の道具ではなくなった。テレビの画質の向上や用途の拡大の歴史を解説する。
PCやスマートフォンが普及した今でも、テレビは主要なメディアであり続けている。テレビは1世紀にわたり、技術進化を続けてきた。本稿は1880年代からのテレビの歴史を説明した中編「『ブラウン管とは何か』『テレビの父は日本人』――テレビは謎に満ちている」に続き、アナログ放送からデジタル放送への転換、スマートテレビの登場など、現代のテレビの技術進化を振り返る。
従来、テレビ放送には連続した波形で情報を伝達するアナログ電波を使う必要があった。アナログ電波を使ったアナログ放送は画質が悪く、ノイズの影響を受けやすい傾向にある。このデメリットが、テレビ画面の大型化によってより目立つようになっていった。
そのような中で、ビット(0と1)の組み合わせで情報を伝達するデジタル放送技術が、米国の放送業界を変えた。テレビ放送に利用可能な信号をアナログ信号のみとしている規則を取り消すよう、テレビ業界の各社は連邦通信委員会(FCC:放送通信を監督する米国の行政機関)にロビー活動を実施した。1990年代はデジタル放送実現のための取り組みが着実に進展したが、アナログ放送に取って代わるのにはさらに何年もかかった。
デジタル放送の利点として、ノイズに強く鮮明な画像が伝送できる点と、必要な周波数帯の削減できる点が挙げられる。米国の次世代テレビ諮問委員会(ACATS)は2009年に、20年をかけた調査の結論として、米国内におけるテレビ放送の方法をアナログ放送からデジタル放送に変更することに決定した。アナログ放送を受信するテレビは、移行期間の終了後は、特別なコンバーターを付けなければ放送信号を利用できなくなる。アナログ放送システムは、移動体通信ネットワークに売却された。
画質を追求するテレビジョン業界の取り組みは、デジタル信号への切り替えだけではない。1990年代に、HDTV(高精細度テレビジョン放送)が日本で発明された。米国では1998年、HDTVテレビが1台数千ドルで発売された。HDTVの映像は、ディスプレイの1平方インチ当たりの画素数が従来のテレビ映像よりも高くなるため、視聴者はこれまでよりもリアルな映像を見られるようになる。数年でHDTVテレビの製造コストが落ち着くと端末価格も下がり、一般消費者も購入できるようになった。
HDTVは、映像テレビが小さくて不鮮明なそれまでのテレビよりも体験が豊かなことから、ビデオゲーム用のディスプレイとしても優れている。HDTV受像機は「映画を見るための単なる画面」をすぐに脱却し、用途を広げた。
映画やテレビ番組のコンテンツを保存するメディアも、ビデオテープからDVDに移行して画質が向上した。ハイビジョン放送やスーパーハイビジョン放送など、放送される映像の画質が改良されるのに合わせて、こうした高画質映像を受像できる最新のテレビを視聴者が買い求めた。
近年はインターネットとテレビの融合が進みつつある。PCはさらに進歩し、オンライン動画の人気が高まった。オンライン動画は登場当初、PCとテレビをケーブルで接続しないと、テレビで見ることはできなかった。1997年にDVDのレンタルを主な事業として設立したNetflixは、2000年代後半からデジタル動画をストリーミングで提供する業態へと転換し、オリジナルコンテンツの制作も手掛けるようになった。しかし当初、これらのストリーミング動画はPCでしか視聴できなかった。
インターネット通信やWebコンテンツの閲覧が可能なスマートテレビが登場したことで、こうしたストリーミング動画をテレビでも視聴できるようになった。スマートテレビは、さまざまなテレビ専用のアプリケーションが利用できる。スマートテレビは音楽プレーヤーへの接続といった視覚的でない用途から、リモコンやジェスチャーで操作するゲームまで、テレビの用途を広げた。現代のテレビは、コンピュータとの差が狭まり続けている。
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