「テレワーク×出社」で社内ネットワークの“あれ”がもう限界?ネットワークインフラの新たな試練

テレワークとオフィスワークを組み合わせる働き方が広がっている。そうしたハイブリッドワークで従業員が働きやすいネットワークを作るのは簡単ではない。ネットワークの何を変える必要があるのか。

2024年07月26日 07時00分 公開
[Shamus McGillicuddyTechTarget]

 働き方として、オフィスワークとテレワークを組み合わせるハイブリッドワークが普及したことで、企業のネットワークインフラには複数の課題が発生している。コンサルティング企業Enterprise Management Associates(EMA)の調査レポートによると、ハイブリッドワークを取り入れる企業のネットワークの要件は、従来とは異なるものになりつつある。ハイブリッドワークで企業が直面しているネットワークの課題とは何か。

社内ネットワークはもう限界? 何が課題なのか

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 EMAは、北米と欧州のIT専門職354人を対象に在宅勤務とネットワークインフラについて調査したレポート「Modernizing Network Engineering and Operations in the Era of Hybrid and Remote Work」を2023年8月に公開した。ネットワークの監視やトラブルシューティングなど、ハイブリッドワークをサポートする業務に関わっている人物が調査対象となった。

 ハイブリッドワークを採用している企業では、在宅勤務の従業員と、オフィスに出社している従業員が共に働くことになる。従業員は異なる場所で働く同僚とコミュニケーションを取るために、音声通話やWeb会議などのリアルタイム通信をするアプリケーションを利用することになる。

 調査に協力したIT専門職の約90%が、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック(世界的大流行)が始まってから、音声通話やWeb会議の利用が増えている」と答えた。

 あるエネルギー企業では、コラボレーションツール「Microsoft Teams」の社内利用率がパンデミック前に約50%だったが、パンデミックを経て100%になった。同社のプロジェクトマネジャーは「Web会議が飛躍的に増えたため、帯域幅の拡張が必要だった」とEMAに語った。

 EMAの調査では、回答者の76%が「ハイブリッドワークによって本社や拠点のネットワークの帯域使用量が増加している」と回答している。

 従業員はデスクや会議室、休憩室などオフィス内のどこでもWeb会議をする。そのため、ハイブリッドワークが常態化すれば、IT部門はオフィスのどこでもネットワークに安定して接続できる利用環境を整える必要がある。EMAの調査では、回答者の90%が「無線LANの拡張やアップグレードを求められている」と答えた。

 先述のエネルギー企業でも、無線LANの利用環境が検討事項の一つになった。「ハイブリッドワーカーは縦横無尽に動き回るが、アクセスポイントがカバーできる範囲がまだ不十分なため、接続できないことがある」(プロジェクトマネジャー)

 ハイブリッドワーカーは自宅とオフィスのどちらも利用する。このことが、ネットワークの管理を複雑なものとしている。企業のネットワークは従来、オフィス内の従業員が拠点からアクセスすることを想定しているが、ハイブリッドワークになると従業員が自宅からインターネットを介してアクセスする接続が加わるからだ。拠点からのアクセスは通常、ファイアウォールやIPS/IDS(侵入防止システム/侵入検知システム)で保護されているが、従業員の自宅にそのようなセキュリティ対策の仕組みはない。そのため、リモートアクセスをする従業員用の追加のセキュリティ対策が必要となる。

 結果として、リモートアクセスする従業員と出社する従業員向けに、ネットワークのアクセス制御や認証のシステムを別々に構築して運用している企業が珍しくない。これはIT部門にとって負担であると同時に、従業員にとってもストレスになりやすい。

 EMAの調査では、回答者の76%が「会社でネットワークを利用する場合と自宅からネットワークを利用する場合のネットワーク接続ポリシーを統合する必要がある」と答えている。ネットワーク接続ポリシーとは組織内のユーザーがどのようにネットワークにアクセスできるかを定めたルールや手順のことだ。

 EMAの調査によると、ネットワーク接続ポリシーを上手く統合ができれば、テレワークやハイブリッドワークの生産性の向上が期待できる。ネットワークの安全性が高まるだけでなく、従業員が作業中にストレスを感じることが少なくなるとも考えられる。

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