BroadcomによるVMware買収で起きたこと 金融機関はどう費用を下げたかコスト最適化とシステム変革を同時に実現

BroadcomによるVMware買収でライセンス費用増に直面する企業が多い中、ある金融機関は、ライセンスコストを前年比14%削減したと発表した。

2025年10月07日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 BroadcomがVMwareを買収したことでライセンスモデルが変更された結果、利用コストの増加に悩まされている企業が続出している。一方、VMwareのプライベートクラウド基盤「VMware Cloud Foundation」(VCF)へ移行したことで、ライセンス費用を前年比14%削減することに成功した金融機関がある。

VMwareを使ってもコストを削減できている理由

 フィリピンの大手銀行Metrobankのシェルバート・デラクルーズ氏(ITインフラ部門責任者)は、「他社は、不意を突かれる形でライセンスモデル変更の影響を受けた。Metrobankは、プライベートクラウドの構築や運用を標準化してきたことが功を奏した」と語る。

 デラクルーズ氏によると、MetrobankにおけるVCFへの移行計画は2020年に始まった。Metrobank社内では、Microsoftの「Hyper-V」やVMwareのサーバ仮想化製品群「VMware vSphere」など、ハイパーバイザーやツールが乱立し、データやシステムのサイロ化が発生していた。これらの問題を解消するため、同行は独自のプライベートクラウド「Skynet」を構築する決断を下し、その基盤としてVCFを選択したという。

 VCFの早期導入はライセンス更新の際に優位に働いた。一方VMware vSphereなど単一コンポーネントのみを利用していた企業は、VCFのサブスクリプション型に移行することでコスト増に直面した。

 「年単位でみるとコストは縮小した」。デラクルーズ氏はこう述べている。「VCFを1年分購入する方が、旧来の永続ライセンスに加えて1年分の保守、サポートサービスを購入するよりも安価だった。結果的に、約14%のコスト削減につながった」(同氏)

 ただし同氏は、5年間の総所有コスト(TCO)で比較した場合、サブスクリプションモデルは永続ライセンスモデルに比べて約5〜10%高くなることも認めた。それでも「他で報告されているような急激な値上げとはかけ離れている」と強調する。

 Metrobankの内部調査によると、同社ではVCFに含まれるコンポーネントの90%以上を使用している。

 デラクルーズ氏によると、プライベートクラウドの導入の効果はコスト削減だけではない。ソフトウェアのモダナイゼーションも促進したという。これにより、従来のモノリシックなアプリケーションを、より柔軟で管理しやすいAPI駆動型の分散アーキテクチャへと変革させることができた。

 一方で、社内の全システムをモダナイズし、移行できたわけではない。情報やノウハウが継承されていない、サプライヤーのサポートが終了しているといった古いアプリケーションについては、隔離環境で動く専用クラスタを設け、他のシステムから物理的、論理的に分離した。アプリケーションが攻撃を受けた場合に備えて、マイクロセグメンテーションを用いて潜在的なセキュリティ侵害が広がらないようにした。

 VCFの貢献はこれだけでない。デラクルーズ氏によると、Metrobankが2022年にクレジットカード会社を買収した際、買収先企業のvSphere環境にVCFを拡張することで、クラスタやネットワーク環境を統合し、本番ワークロードの移行を効率的に実施することができた。

 買収の際、人員とプロセスの再編成も実施した。サーバ、ネットワーク、ファイアウォール、データベースごとに組んでいた縦割り型のチームを解体し、部署や役職に制限を設けず多様なメンバーで編成したクラウド管理者チームを新設したのだ。

 チームのメンバーには、サーバ管理の専門スキルだけでなく、ネットワークやセキュリティ、データベースに関する知識も求めているとデラクルーズ氏は説明する。

 この変革では、VCFのユーザーインターフェースが役に立ったとデラクルーズ氏は強調する。深い専門知識がなくても自分の専門外の作業を実行できるようになったからだ。「ネットワークの詳細を知らないサーバ担当者でも、NSXの画面に入り、ネットワークセグメントを作れるようになった。ただし、問題の発生を防ぐ安全装置(ガードレール)を設置する必要はある」(同氏)

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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