Broadcom買収後のVMware価格改定により、多くの企業がコスト増に直面している。この危機的状況で注目される解決策と、クラウドを含む競合ベンダーの戦略を分析する。
企業のIT部門では深刻な問題が広がっている。BroadcomによるVMware買収後にライセンスモデルが変更され、その後、多くの組織がハイパーバイザー利用のコスト増を報告している。
この状況に対応するため、企業は複数の緩和策を同時に進めている。調査によれば、仮想化関連の予算を増額する動きに加え、アプリケーションをコンテナを前提とした形への近代化や、代替ハイパーバイザーへの移行の検討など、多様な取り組みが進んでいる。
BroadcomによるVMware買収後のライセンス変更は、企業のIT戦略に根本的な見直しを迫っている。TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)の最新の調査によると、企業が選択している主なアプローチは以下の通りだ。
コンテナとは、アプリケーションとその実行に必要なコンポーネントをひとまとめにして、軽量かつ効率的に動作させる仕組みであり、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」などを使って運用するのが一般的だ。代替ハイパーバイザーにはMicrosoftの「Hyper-V」の他、「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)や「Nutanix AHV」などがある。代替とはいえ、移行時には互換性の検証、運用ツールやスキルの見直しといった負担が伴う。
ハイパーバイザーの値上がりを経験した組織のうち、46%がパブリッククラウド戦略の加速を計画していることは注目に値する。この動きは、パブリッククラウドが既存の選択肢を補完するだけでなく、企業のIT運用の中核となり得ることを示している。
オンプレミスの仮想化環境をパブリッククラウドに移行および近代化することは、VMwareで培った運用体験を維持しながらコストを最適化できる現実的な手段である。これにより、データセンターのインフラや運用にかかる負荷を軽減できる。さらに運用体験の一貫性を保つことは、デジタル運用のスピード向上、人員の負担軽減、事業リスクの低減にも直結する。
ESGの調査によれば、IT意思決定者の84%が「データセンターとクラウドで運用体験の統一は大きなメリットがある」と回答している。特に大規模ユーザーは、VMware技術を前提に社内ツールや自動化、業務プロセスに多くの投資をしている。そのため、拡張された仮想化環境の存在自体が、技術切り替え時の追加リスクとなり得る。
オンプレミスで利用しているVMware環境を、クラウドへ移行しやすくする新たな取り組みが始まっている。AWSは2025年8月5日に、AWSはVMware製品を使うためのサービス「Amazon Elastic VMware Service」(EVS)の一般提供を発表した。EVSを使うと、プライベートネットワーキングサービス「Amazon Virtual Private Cloud」(Amazon VPC)を基盤として活用できる。その上で、VMwareが提供するプライベートクラウドサービス「VMware Cloud Foundation」を実行できる仕組みだ。EVSにより企業は、アプリケーションを作り直したり、既存の運用ルールを大きく変えたりすることなく、従来のVMwareツールをそのまま活用できる。
さらにAWSは、仮想マシンの利用をより柔軟に支援するため、サードパーティー製のストレージやデータ保護サービスも利用可能にしている。対応するオプションには以下があり、容量拡張やバックアップ体制の強化に役立つ。
競争はAWSだけにとどまらない。以下のような主要なクラウドサービスでもVMware環境を稼働させられるサービスが提供されている。
いずれのサービスも、オンプレミス環境からの移行を容易にし、同時にサードパーティーのストレージやデータ保護技術の利用を可能にしている。AWSの今回の発表は、すでに激しい競争が展開されているクラウド市場において、さらに差別化を進める動きだといえる。
IT意思決定者は、コスト増に直面する多くの組織が複数の対策を同時に進めている現実を理解し、その中でパブリッククラウドの活用が特に重要な選択肢であることを認識すべきだ。調査によれば、平均的な企業はハイパーバイザーコストの上昇に対応するために、3つ以上の施策を並行して実施する傾向がある。
短期的には、Hewlett Packard Enterprise(HPE)やMicrosoft、Nutanix、Red Hat、Verge.ioといったプロバイダーが代替基盤を拡充している。仮想化環境の多様化が進む可能性が高い。多様化は柔軟性を高める一方で、運用管理や調達、セキュリティ統制の複雑さという新たな課題も生み出す。
そのため、意思決定者は既存ツールの利点を生かしながらクラウド利用を加速させ、可能な部分からアプリケーションの近代化や代替基盤の導入を段階的に進めることが求められる。拙速な切り替えではなく、慎重で現実的な進め方が不可欠だ。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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