シリーズBで1億ドル調達
「AWSは高すぎる」不満層が流出? インフラ管理を“全自動化”するRailwayの衝撃
クラウドインフラ企業Railwayは、シリーズBラウンドで1億ドルの資金調達を完了した。同社のサービスや、注目される理由、課題を紹介する。
クラウドプロバイダーRailwayは、GPUもKubernetesも使わないインフラ向けに、効率的なハードウェア設計と組み込みの自動化を軸とした独自のアプローチに基づいたサービスを提供している。その結果、スタートアップから企業ランキング「Fortune 500」に並ぶ企業まで、数千社のユーザー企業を獲得したという。さらに同社は2026年1月、シリーズB(成長段階)の投資ラウンドで1億ドルの資金調達を完了したことを明らかにした。同社が注目される理由は。
AI時代のインフラを再定義したRailwayの強みは
この背景にあるのは、人工知能(AI)アプリケーション需要の急拡大によって、従来型のビルド/デプロイ手法がボトルネックになりつつある点だ。開発の現場では、ChatGPTやClaude、CursorといったAIツールが普及し、「コード生成は秒単位」になった。一方、Terraformなど従来型のツールを用いたビルド/デプロイは2~3分かかることも珍しくない。このギャップが、AI時代の新たなボトルネックになっているという。
2020年にGoogle Cloud Platformを基盤とするPaaS(Platform as a Service)プロバイダーとして創業したRailwayは、「インフラをユーザーから見えなくすることで、管理の負担を開発者から切り離す」(make infrastructure invisible)というテーマを掲げる企業だ。ユーザーが、インフラではなくプロダクト開発に集中できるようにするための基盤を強化する方針を取っている。
この裏には、生成AIなどの普及で「コードは書ける。しかし、インフラや運用関連の構成要素をどこにどうデプロイすればよいか分からないというユーザーの増加がある」。Railwayの創業者兼CEOのジェイク・クーパー氏はこう指摘する。「既存のクラウドサービスは複雑で遅い」という課題意識も広がりつつある。
クーパー氏によれば、同社は開発者がプロビジョニングや監視、セキュリティのあらゆる詳細を管理しなくても済む形で、VMやコンテナ、データベースといった、より低レイヤーのクラウドリソースへのアクセスを提供するようになった。
「Railwayは2020年からの5年間で、ハードウェアからネットワーク層、オーケストレーションエンジン、ダッシュボードからデータセンターに至るまで、全てを自分たちで構築してきた」。クーパー氏はこう語る。「コンテナ向けには一般的なビルドやデプロイ系のAPIを用意し、VMレベルではクローンやスナップショットといった操作ができる機能もある。ログ、トレース、カスタムメトリクスといったテレメトリーを最初から備え、完全なクエリエンジン付きで顧客の監視も管理している」
1億ドルの資金調達を完了したRailwayは、中小企業やFortune 500企業を含む2万5000社、10万人の有料ユーザーを獲得している。Railwayのプレスリリースによると、同社の顧客として以下の企業が挙げられている。
- AIやテック分野のスタートアップ
- Bilt Technologies
- Cooper Square Technologies(Profoundの名称で事業展開)
- HappyRobot
- 人事系ソフトウェアベンダー
- Intuit傘下のGoCo
- エンターテイメント系企業
- TripAdvisor傘下のCruise Critic
- MGM Resorts International
Railwayの競合には、Amazon Web Services(AWS)の同名サービス、Microsoftの「Microsoft Azure」、Googleの「Google Cloud」といった大手クラウド事業者のサービスや、Render Services(Renderの名称で事業展開)、Northflank、Replitといったユーザーの使いやすさを強調するクラウドプラットフォームベンダーが存在している。
一方Railwayは、独自設計のラックスケールハードウェアと、Kubernetesのような汎用(はんよう)基盤に頼らず、物理サーバの制御からアプリケーションの実行までを自社で一貫して設計している点を強みとしている。ユーザーにとっては、数分ではなく数秒でサービスを立ち上げられることにつながっていると、クーパー氏は指摘する。
大手クラウドサービスの価格を下回る
クーパー氏によると、Railwayは性能だけが強みではない。クラウドインフラのコストを、大手クラウド事業者よりも低く抑えられる可能性があると同氏は強調する。
例えば、アプリケーションサービス向けのエグレス料金(外部へのデータ移行料金)は、Railwayは1GB当たり0.05ドルだ。一方AWSは、月間100GB~10TBの範囲では1GB当たり0.09ドル。同社の情報によれば、AWSの仮想マシンサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)からインターネットへの転送量が月100TBを超えた場合にのみ、1GB当たり0.05ドルまで割引が適用される場合がある。
これについてクーパー氏は、ハードウェア設計を自社で制御しているため、高密度でアプリケーションサービスを詰め込み、実際に使用された基盤リソース分だけを秒単位で課金できると説明する。これは「AWS Lambda」や「Google Cloud Run」といったサービスと比較できるという。AWS Lambdaは、コード関数へのリクエスト数と実行時間に基づいて課金される。Google Cloud Runは、秒単位のリソース使用量やリクエスト数、ジョブ単位に応じた可変料金を提供しており、そこにはネットワーク転送コストも含まれる。
Railwayは、ユーザーのアプリケーションサービスが使用する基盤クラウドリソースに基づいて秒単位で課金し、Proプランは月額20ドルから始まる。エンタープライズ向けの価格は公表していない。ただし、ハードウェア上でのワークロード密度が高いため、同等のサーバレス製品と比べて、長期的な総コストは低くなる可能性があるとクーパー氏は説明する。
「私たちは、Google Cloud RunやAWS Lambdaに相当するものと、それを支えるハードウェアを一体で構築した。1台のマシンで1万プロセスを動かせるレベルに到達できている」(クーパー氏)
大手クラウド事業者は、特に小規模企業に対しては、無料枠や、最大35万ドル分のクラウドクレジットを提供する「Google for Startups」プログラムのような助成の枠を設けている。Railwayも2025年にスタートアップ向けプログラムを開始し、高い成長を記録したスタートアップ企業10社に最大5000ドル分のクレジットを提供した実績を持つ。
Railwayの今後と課題は
Railwayは、AIインフラ需要の拡大という追い風を受けている状態だ。同社は、自社のサービスをAIモデルの学習基盤ではなく、AIを組み込んだアプリケーションを高速にデプロイ、運用するための基盤として位置付けている。例えばスタートアップのAIインフラベンダーKernelは、Railwayのユーザーだ。
ただし、RailwayはGPUを割り当てて利用できる形のクラウドサービスを提供していない。これについてクーパー氏は、「私たちは、ゼロから構築してきた仕組みを踏まえ、CPUユースケースの最適化に注力してきた。現時点で具体的なGPU計画は明らかにできない」とInforma TechTargetへのメールで答えている。業界アナリストは、GPUをサポートしていない点が、AIワークロードをさらに取り込む上で制約になり得ると指摘する。一方、Railwayが狙うのは「AIを全面導入する企業」よりも、「開発から本番までを速く進めたい」ユーザーの需要に寄せたポジション取りだと評している。
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