「AIのせいで自分の仕事がなくなる」といった不安の声が聞こえてくるようになった。LinkedInのCEOは、キャリア構築における「5Cs」の重要性を説く。今後5年で需要が爆発的に増える3つの仕事とは?
AI(人工知能)の普及によって、「どの仕事が消えるのか」という議論が加熱している。特にホワイトカラー職では、生成AIが要約や翻訳、文章作成などを高速で処理できるようになり、「人間の仕事が奪われるのではないか」という不安が強まっている。
ビジネスSNSを運営するLinkedInのCEO、ライアン・ロスランスキー氏によると、エントリーレベルの職業の採用率は約12%低下しているという。そして、採用率の低下は「AIとは全く関係がない」という。一方同氏は、「AIは雇用を破壊するだけの存在ではなく、新しい仕事を大量に生み出している」と強調する。
本稿は、LinkedInのCEOが紹介する「今後5年で需要が爆発的に増える仕事」や将来的なキャリア構築で重視すべき「5Cs」を紹介する。
同氏によれば、現在LinkedIn上で特に需要が拡大しているのは、「データアノテーター」「データセンター関連職」「フォワードデプロイドエンジニア」の3種類だ。
データアノテーターという仕事は、一般にはまだ広く知られていない。しかし、生成AIの品質向上を支える重要な役割を担っている。
生成AIは、単に大量データを読み込めば自動的に賢くなるわけではない。AIが出力した内容を、人間が評価し続ける必要がある。例えば、医療分野であれば、実際の医師がAIの回答を確認し、「どこが正しいか」「どこが危険か」「どの表現が誤解を招くか」を評価する。
そのフィードバックが再びモデルに反映されることで、AIの出力は改善される。
ロスランスキー氏は、「あらゆる分野、あらゆる言語でこの作業が必要になる」と説明する。つまり、AIが進化するほど、人間の専門知識への需要も増えるという構造だ。
ここで重要なのは、「AI時代だから専門家が不要になる」のではなく、「専門知識をAI改善に使える人材」の価値が高まる点だ。これは、専門職の役割そのものが変化し始めていることを示している。
AIブームでは、生成AIやAIエージェントばかりが注目されがちだ。しかし、その裏側には巨大なインフラ需要が存在する。
AIモデルを動かすには、膨大な計算資源が必要になる。そのため、データセンター建設や運用、保守、設備管理に関わる需要は急増している。ロスランスキー氏によると、LinkedInでは、データセンター関連の仕事が60万件以上存在するという。
興味深いのは、データセンター関連の仕事で必要とされる人材が、必ずしもソフトウェアエンジニアだけではない点だ。
データセンターには、電力設備、冷却設備、保守運用、物理インフラ管理など、多数の現場系業務が存在する。そのため、「手に職」系のいわゆる「トレード職」と呼ばれる仕事への関心が高まっているという。
ロスランスキー氏は、特にZ世代(1997〜2007年生まれ)がこれらの仕事を「AIに置き換えられにくい仕事」と見なしていると語った。若者のキャリア志向がオフィスワーク中心だった時期もあったが、「AIに代替されにくい現場型の仕事」が再評価され始めているという。
これは、AIによって「高学歴ホワイトカラーが安全」という前提が揺らぎ始めていることを示している。
ロスランスキー氏が挙げる3つ目の職業が、「フォワードデプロイドエンジニア」だ。
これは単なるAIエンジニアではない。企業の業務現場に入り込み、「AIをどこで使えば事業価値につながるのか」を設計する役割を担う。
例えば、マーケティング部門でAIを活用する場合、単にAIツールを導入するだけでは意味がない。どの業務を自動化するのか。どのデータを使うのか。どこにリスクがあるのか。人間の判断をどこに残すのか。こうした設計が必要になる。
ロスランスキー氏は、従来はこうした役割をIT部門が担っていたと説明する。しかし、「業務理解」と「AI理解」の両方を持つ人材が求められつつあるという。
つまり、AI時代に価値を持つのは、「技術だけ分かる人」でも、「業務だけ分かる人」でもない。その両方をつなげられる人材だ。
ロスランスキー氏は、AI時代の変化は仕事だけではなく、「キャリア観そのもの」を変え始めているとも語った。
LinkedInのユーザーから発信される最も多い要望は、「典型的なキャリアパスを見せて欲しい」というものだという。しかし、実際のデータを見ると、「一直線のキャリア」はほとんど存在しない。人々は職種を横断しながら、スキルを広げている。
ロスランスキー氏によれば、特定職種に必要なスキルはここ数年で25%以上変化した。2030年までには70%が変化すると予測している。
そのため、「5年後に何になりたいか」を考えるより、「今後数カ月で何を学ぶべきか」を考える方が重要だという。これは、企業側の採用基準にも影響を与えている。
インタビューでは、「履歴書よりもLinkedInの投稿内容を見る」という話題も出た。企業は学歴や肩書だけでなく、「何を発信しているか」を重視し始めているという。候補者の投稿を見ることで、専門性や考え方、人柄を把握できるからだ。
ロスランスキー氏は、LinkedInを単なる履歴書サイトではなく、「自分の知識や考え方を証明する場所」と位置付けている。
では、AI時代に最も重要になる能力は何か。「AIリテラシーは重要だが、それだけでは不十分だ」というのがロスランスキー氏の回答だ。むしろ今後は、人間にしかできない能力の価値が高まると同氏は強調する。
そこでロスランスキー氏は、将来のキャリア構築のために学ぶべき5つの「人間スキル」(5Cs)を紹介している。
例えば好奇心は、新しい技術や変化に対して自ら学び続ける姿勢を指す。AIツールが次々に登場する中で、「自分の仕事にどう使えるのか」を試し続ける人材は、変化への適応力を持ちやすいという考えだ。
勇気は、変化を恐れず新しい役割や働き方に踏み込む力を意味する。AI導入によって業務や組織構造が変わる中では、従来のやり方に固執せず、新しい挑戦を受け入れる姿勢が求められる。
創造性は、単にアイデアを出す力ではなく、AIでは見つけにくい新しい組み合わせや発想を生み出す能力だ。
さらに思いやりは、顧客や同僚の立場を理解し、人間同士の信頼関係を築く力を指す。そしてコミュニケーションは、異なる立場の人々をつなぎ、対話を通じて物事を前に進める能力だ。同氏は、AIが要約や翻訳などの作業を代替できるようになるほど、こうした「人間同士をつなぐ能力」の価値が高まると説明している。
AIが文章を書き、情報を要約し、翻訳する時代になるほど、「人と協力する力」「他者を動かす力」「異なる意見を調整する力」が重要になるという考えだ。
同氏は、「ソフトスキル」という呼び方自体が誤解を生むとも指摘した。「ソフト」という言葉は重要度が低い印象を与えるが、実際にはこれまで以上に重要になっているという。
AI時代の変化は、「どの仕事がなくなるか」という単純な話ではない。
むしろ、「どの能力が価値を持つのか」「人は何で評価されるのか」「仕事とキャリアをどう設計するのか」という、働き方そのものの再編が始まっている。
本稿は、2026年2月20日に公開された「LinkedIn CEO: These 3 Jobs Will Explode in the Next 5 Years」を記事化したものです。
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