「管理職=昇進」は正しいのか 情シスキャリアの本当の選択肢技術者として現場に残ることで得られるものは

情シスとして経験を積むほど、ある選択に直面する。「現場に残るか」「管理職になるか」だ。本稿は、Google Cloud AIディレクターのアディ・オスマニ氏の講演を基に、情シス人材のキャリア選択を整理する。

2026年04月22日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 情報システム部門(情シス)としてキャリアを重ねると、避けて通れない瞬間がある。「そろそろマネジメントをやりませんか」と言われるタイミングだ。

 一般的には、「管理職イコール昇進」「現場に残るイコール頭打ち」と考えられがちだが、その考えは正しいのか。本稿は、Google Cloud AIのディレクター、アディ・オスマニ氏の講演を基に、個人として能力を発揮する「個人コントリビューター」(Individual Contributor :IC)としてキャリアを積むか、管理職の一員となるか、比較する際の論点やそれぞれの目的を整理する。

プレイヤーと管理職、より良いのはどっち?

 ICとしてのキャリアと、マネジメントのキャリアは本来、別物だ。求められるスキルも、評価軸も全く異なる。ICは、設計やトラブル対応、改善で価値を出す。一方管理職は、従業員と業務を動かして価値を出す。

 つまり、「できる情シスほど管理職へ」という構図は、合理的とは限らない。それでも、「管理職イコール昇進」「現場に残るイコール頭打ち」という誤解が残っている。

情シスに多い「役割の混線」

 情シスの場合、この問題はさらに複雑になる。なぜなら、現場業務とマネジメントを分離しにくい構造だからだ。以下の通りに業務を遂行し続けている場合、「管理職になっても現場から離れられない」状態になる。

  • 障害対応は自分でやる
  • ベンダー調整も自分でやる
  • その上で部下を評価する

 この状態は、キャリアの選択ではなく、ただ業務が上乗せされただけになる。本来選ぶべき選択肢は次の2つだ。

  • 技術で影響力を持つか
  • 人と組織で影響力を持つか

 前者は、アーキテクチャの設計やトラブル対応で価値を出す。後者は、優先順位付けやリソース配分で価値を出す。つまり、どちらが優れているかという論点はなく、何をもって価値を出せるかがポイントだ。

それでも「現場に残ると評価されない」現実

 しかし、評価制度がこの選択肢に沿っている企業だけではない。そのような企業では、以下の課題に直面する場合がある。

  • 技術で貢献しても評価されにくい
  • 管理職にならないと給与額が上がらない
  • 本人の適性と無関係に昇進が決まる

 つまり、キャリアの選択肢がなく、上から強制された道筋をたどらざるを得ない。

情シスが直面する本当の問題

 この問題の本質は、個人のキャリアではなく、組織設計にある。従業員の評価軸が少ない企業では、全員が同じ方向に押し出される状態になる。その結果、以下の課題が発生する。

  • 技術に強い人が現場を離れる
  • マネジメントが苦手な人が上に立つ
  • 現場の意思決定が遅くなる

 これらの課題が積み重なれば、情シス全体の生産性は下がる可能性がある。

ICとして職場に残る選択肢はあるのか?

 では、ICとして現場に残ることは、メリットのない選択になってしまうのか。この質問を考えるに当たって重要なのは、「影響力をどのように出すか」だ。

 管理職が、権限で従業員や仕事を動かすのであれば、ICは、「ICとしてのリーダーシップ」を発揮すればよい。例えば以下の役割を担うことが可能だ。

  • 障害時の意思決定をリードする
  • 技術選定の軸を定義する
  • 若手が担当する業務設計や運用のレビューを実施する

「メンター」か「スポンサー」か

 もう1つ重要なのが、「メンター」(助言者)になるか、「スポンサー」(支援者)になるかだ。

 オスマニ氏はメンターを、「アドバイスを与え、質問に答え、フィードバックを提供する人」と定義する。一方スポンサーは、「別の誰かのために積極的に働きかける人」としている。「スポンサーは具体的に何をするのか」を情シスの文脈で考える場合、次のような行動を挙げることができる。

  • 有望なメンバーを重要な案件に推薦する
  • 他部署との調整で後押しする
  • 評価の場で成果を言語化する

役割にかかわらず、現場に貢献できる職場であるか

 最終的に、ICであろうと管理職であろうと、「その役割をもって貢献できるかどうか」が重要だ 。どの道を選ぶかは個人的な選択だ。「それぞれの道で求められる責任とスキルを理解することで、今のあなたにとって正しい選択ができるはずだ」(オスマニ氏)

本稿は、2025年12月19日に公開された「Individual contributor or manager: choosing your engineering path」を記事化したものです。

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