Apache 2.0で使えるGoogleの本気
なぜ開発者はローカルLLMに向かうのか APIコストの呪縛を解く「Gemma 4」
Googleは、スマートフォンや小型デバイス上で動作可能なオープンモデル「Gemma 4」を公開した。Google DeepMindのAI開発者エクスペリエンス担当リーダーが、その特徴や使い方を紹介する。
生成AI(AI:人工知能)を“クラウド経由”ではなく、スマートフォンや小型デバイス上で直接動かす流れが加速している。こうした中、Google DeepMindが2026年に公開したオープンモデル「Gemma 4」が注目を集めている。Gemma 4は、スマートフォンや「Raspberry Pi」のような小型デバイスでも動作可能な軽量設計を特徴としつつ、画像や動画、多言語対応など高度な機能も備える。ローカルAIは企業ITにどのような変化をもたらすのか。
Gemma 4が変えるAIの商用利用
Gemma 4は、Google DeepMindが開発したオープンモデル群だ。パラメーター数は20億から310億まで複数用意されており、用途に応じて選択できる。最小モデルはスマートフォン上での動作を想定しており、最大モデルでも一般的なGPU搭載PCで動かせる規模に抑えた。Google DeepMindは、「開発者が自分のデバイス上で扱えるAI」を重視して設計したとしている。
特に小型モデルは、音声、画像、動画を扱えるマルチモーダル機能を搭載している。音声入力からテキスト化や翻訳も可能で、スマートフォン上で直接AIアシスタントを動かす用途を想定する。一方、大型モデルは音声入力には対応していないものの、高度な画像理解や動画解析機能を備える。
さらにGemma 4は140以上の言語で学習しており、多言語対応を重視している点も特徴だ。Google DeepMindのオマル・サンセビエロ氏は、「米国だけではなく、世界中で利用できるモデルを目指した」と説明している。
なぜ“ローカルAI”が重要なのか
ローカルAIやオープンモデルが注目される背景には、プライバシーや規制対応の問題がある。医療や政府系など、データを外部のクラウドサービスへ送信できない環境では、オンデバイスAIの需要が高い。Gemma 4はローカル実行を前提としており、インターネット接続なしでも利用可能な構成を取りやすい。
企業独自の用途に合わせてファインチューニングしやすい点も強みだ。例えば金融分野など特定業務に特化したAIモデルを、自社データで追加学習して独自利用できる。サンセビエロ氏は、「企業がモデルの挙動をより細かく制御できる」と説明する。
一方で、小型モデルには知識量の制約もある。Google DeepMindは、「小型モデルだけで世界中の知識を保持するのは難しい」とし、高度な知識や複雑な推論では、大規模クラウドAIとの併用が必要になるとの見方を示した。
“ハイブリッド推論”が主流になる?
こうした制約を踏まえ、ローカルAIとクラウドAIを組み合わせる「ハイブリッド推論」も注目されている。
例えばソフトウェアベンダーCactus Computeは、入力内容の複雑さに応じて、ローカルモデルで処理するか、高性能クラウドAIへ転送するかを自動的に切り替える仕組みを開発しているという。簡単な処理は端末側で実行し、高度な推論のみクラウドへ送ることで、コストやプライバシー、応答速度を最適化するのが狙いだ。
Gemma 4は、こうした“ローカルAI前提”の時代を見据えたモデルとも言える。Raspberry Piや「Jetson Nano」など、GPUリソースが限られた小型デバイスへの実装も広がりつつある。
Apache 2.0採用で企業利用を後押し
Gemma 4ではライセンスの変更もあった。従来の独自ライセンスから、オープンソースライセンス「Apache License 2.0」へ移行した。これにより、企業利用時の法務リスクや導入ハードルを下げる狙いがある。
これについてGoogle DeepMindは、企業やスタートアップ、非営利団体などから「ライセンスが導入障壁になっていた」というフィードバックを受けて変更を決めたとしている。
企業IT部門にとっては、クラウドAIを全面的に利用するだけではなく、「どの処理をローカルで実行し、どこをクラウドへ送るか」を設計する時代が近づきつつある。Gemma 4は、その選択肢を広げる存在になりそうだ。
■本稿は、2026年4月24日に公開された「From smartphones to Raspberry Pi: Running Gemma 4 anywhere」を記事化したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社ビザスク] 製造業の新事業創出 成功の鍵は「タラレバ問題克服」と「3つの判断ポイント」 -
製品資料
[日本シーゲイト株式会社] 実験のやり直しを防止 研究データ基盤に求められる高可用性ストレージとは -
製品資料
[株式会社Leaner Technologies] もっと安く買えるのに…… 間接材購買で“コスト削減機会”を逃さないためには -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] フィールドサービスの熟練技術者が「AIエージェント」を求めている理由 -
製品資料
[株式会社グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタンス] 基礎から分かる「就労ビザ」 アメリカ進出を目指すなら知っておきたい取得戦略
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
DXを阻む「動くだけ」のレガシーシステムに決別するための生成AI活用術
-
2
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
3
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
4
全社標準「Copilot」にダメ出し? 現場の8割が不満を抱く“致命的な欠点”
-
5
AIが本番環境を削除し復旧に13時間 「暴走」ではなかったAWS事例
-
6
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
7
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
8
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
9
「HDD終了」は本当か 巨大クラウド2社が下した大容量フラッシュへの決断
-
10
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
登録セキスぺが語る「SCS評価制度」の舞台裏 星を取得すべき理由と対応のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
OSSでは困難 100超のサービスを持つマネーフォワードが実践した統合監視術
-
4
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
5
月1000枚の紙を削減 9年動けなかった組織が、業務改革のその先に得たもの
-
6
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
7
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
8
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
-
9
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー