「ライセンス配布係」から「運用設計者」へ
営業現場の半数が資料作成でAIを活用 情シスが「安全対策」以上にやるべきことは
スライドチームが営業担当者293人を対象に実施した調査によると、資料作成業務に生成AIを利用している人は半数以上に達した。AIの普及に合わせて情シスは営業担当者をどのように支援すればいいのか。
営業部門での生成AI活用が拡大中だ。資料作成代行会社スライドチームが営業担当者293人を対象に実施した調査によれば、「資料作成業務で生成AIを利用している」と答えた人は53.9%に達した。半数以上の人材が利用している実態からは、営業資料の作成にも生成AIが浸透し始めていることが分かる。
一方で、この結果から見えてくるのは、「生成AIを導入するかどうか」が課題だった時代は終わりつつあるということだ。今後の競争力を左右するのは、生成AIをいかに安全かつ効率的に業務へ組み込み、組織全体で活用できる環境を整備するかである。
本稿では、営業現場のAI活用の現在地を整理するとともに、情報システム部門(情シス)が今後担うべき役割を整理する。
情シスは営業担当者をどう支援すればいいのか
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調査によると、「資料作成業務を負担に感じている」と答えた営業担当者は65.2%だった。さらに、1週間の業務時間のうち資料作成に費やす時間は、「1~5時間」が42.0%、「6~10時間」が28.7%で、週6時間以上を資料作成に充てていると答えた回答者の割合は全体の43.4%だった。
本来、営業担当者が価値を生み出すのは顧客との対話や提案活動である。しかし実際には、提案書や報告書、会議資料の作成が本来業務を圧迫している可能性がある。資料作成に生成AIを使っているかを尋ねた質問では、53.9%が「使用している」、46.1%は「使用していない」と答えた。資料作成の効率化に向けて生成AIを利用する流れは拡大傾向だ。
生成AIは「資料を作るAI」ではなく「考えるAI」として使われている
営業現場での利用実態を見ると、生成AIは単純にスライドを自動生成するツールとして使われている訳ではないことも分かった。
資料作成のどのような用途で生成AIを使っているか聞いたところ、用途の上位は、「文章作成・要約・整理」「アイデア出し・ブレーンストーミング」「情報収集・リサーチ」で、資料作成の上流工程で活用されるケースが多かった。
一方、デザインやレイアウト調整といった最終工程への利用は下位にとどまっていた。
つまり現状の生成AIは、「スライドを完成させるツール」というよりも、「考える作業を支援するアシスタント」として位置付けられていることが示唆されている。
時間は削減できても、人間の仕事はなくならない
資料作成で生成AIを使ったことでどの程度作成時間を減らせたかを尋ねたところ、34.2%の回答者は「3~4割」と答え、5割以上削減できたと答えた回答者の割合は24.7%に上った。その一方で、調査からは新たな課題が示された。
調査では、「理想通りの出力を得るプロンプト作成が難しい」「情報の正確性に不安がある」「出力内容の確認や修正に時間が掛かる」といった回答が上位を占めた。
この調査結果からは、生成AIは資料作成時間そのものを短縮する一方で、「AIが作成した内容を評価し、修正する」という新しい仕事を生み出していることが分かる。
情シスが整備すべきなのは「使わせない仕組み」ではなく「安全に使える仕組み」
営業担当者が利用しているAIを見ると、「ChatGPT」や「Gemini」といった汎用(はんよう)AIが中心であり、用途特化型のAIやAIエージェントの利用はまだ限定的である。
こうした状況で情シスが目指すべきなのは、一律にAI利用を制限することではない。むしろ、利用可能なサービスを明確化し、機密情報の取り扱いルールやアクセス制御、ログ管理などを整備した上で、社員が安心してAIを利用できる環境を提供することが重要になる。
「よいプロンプト」を個人の知恵で終わらせない
調査では、「理想通りの出力を得るプロンプトを作ること」が最大の課題となっていた。これは裏を返せば、優れたプロンプトやAIの使い方そのものが業務ノウハウになっていることを意味する。
営業提案書や会議資料、報告書などで効果的だったプロンプトを組織全体で共有し、テンプレート化すれば、個人のスキルに依存しない形で生産性を高められる。AI活用を組織の資産へ変える役割も、今後の情シスやDX推進部門には求められる。
AI時代の情シスは「導入担当」から「運用設計者」へ
今回の調査から分かるのは、営業現場では既に生成AIの利用が一般化し始めており、多くの利用者が資料作成時間の短縮という成果を実感しているということだ。
しかし、企業間の差を生むのは、AIを導入したかどうかではない。AIを安全に利用するためのルールを整え、プロンプトやノウハウを組織で共有し、人間によるレビューを前提とした業務フローを構築できるかどうかだ。
生成AIの時代に、情シスの役割は「ライセンスを配布する担当者」から、「AIを業務へ定着させる運用設計者」へと変わりつつある。
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