AI資産の“共通流通基盤”へ
MCPとどう違う? Linux Foundationの「OpenSharing Project」の役割やメリットは
The Linux Foundationは、AI資産を安全に共有するためのオープンプロトコル「OpenSharing Project」を発表した。
生成AIやAIエージェントの活用が広がる中、企業間や異なるクラウド環境でAIモデルやエージェント機能を共有するニーズが高まっている。しかし現状では、ベンダーごとの独自仕様や個別連携が障壁となり、AI資産の流通や再利用は容易ではない。
こうした課題の解決を目指し、Linux Foundationは2026年6月10日(現地時間)、「OpenSharing Project」を発表した。これは、組織やプラットフォームをまたいでAI資産やデータを安全に共有するためのオープンプロトコルである。本稿では、その概要や導入メリット、そしてMCP(Model Context Protocol)との違いを整理する。
1.OpenSharing Projectとは? 業務にどう役立つ?
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OpenSharing Projectは、組織間でAI資産やデータを安全に共有するためのベンダーニュートラル(特定ベンダーに依存しない)なオープンプロトコルだ。
従来のDelta Sharingは主にデータ共有を目的としていたが、OpenSharingではAIモデルやAIエージェントの機能まで共有対象を拡大している。そのため、異なるクラウド環境やプラットフォーム間でも、共通の仕組みでAI資産をやり取りできることを目指している。
2.共有対象となる「AI資産」
OpenSharingで共有できる対象は、単なるデータセットだけではない。The Linux Foundationの発表によれば、主な共有対象は以下の3種類だ。
- AIエージェントのスキル(Agent Skills)
- AIモデル
- 非構造化データ(Unstructured Data)
「Agent Skills」とは、AIエージェントが特定の業務を実行するための能力や処理ロジックを指す。例えば、社内システムへの問い合わせ、ワークフロー実行、分析処理などの機能を他組織や他システムでも利用できるようにすることが想定されている。
また、AIモデルそのものや、文書、画像、ログなどの非構造化データも共有できるようになる。これによって、企業は個別仕様に合わせた変換や再実装を繰り返す必要がなくなる可能性がある。
3.解決される業界の課題
従来、AIエージェントを大規模に導入しようとする企業は、プラットフォームごとの以下の壁に阻まれていた。
課題1.AI資産のサイロ化
従来、企業がAIモデルやAIエージェントの機能を他組織と共有しようとすると、ベンダー独自のマーケットプレイスや個別のシステム連携(カスタム統合)に依存する必要があった。そのため、組織やクラウド環境が異なるたびに新たな連携を構築しなければならず、AI資産が各環境に分散・サイロ化するという課題があった。
OpenSharingは、単一のオープンプロトコルによってAI資産を共有できる仕組みを提供することで、組織やプラットフォームをまたいだ安全な共有を可能にする。
課題2.利用環境ごとに個別対応が必要だった
従来は、AI資産を提供する側と利用する側でクラウドやデータ基盤が異なる場合、それぞれの環境に合わせた個別対応が必要になるケースが多かった。このことが、AIエージェントの大規模な展開や企業間連携の障壁となっていた。
OpenSharingは、基盤となるストレージやシステムの違いを抽象化する仕組みを採用している。そのため、公開されたAI資産やデータは、利用側がオンプレミス環境であっても、異なるクラウドやプラットフォームであっても利用できることを目指している。
課題3.データ基盤間の互換性が不足していた
企業によって採用するデータ形式や共有方式は異なるため、異なる基盤同士では互換性が十分ではなく、AI資産の移植や共有が難しいという課題があった。
OpenSharingは、従来から対応していたDelta Sharingに加え、オープンソースのデータ表形式「Apache Iceberg」の受信側にも対応範囲を拡大する。複数のオープンテーブル形式との相互運用性を高めることで、データ基盤間の断片化を抑え、AI資産の可搬性向上を目指している。
4.プロジェクトの意義と今後の展望
The Linux Foundationは、このプロジェクトの目的を「AI資産を安全かつ相互運用可能な形で共有するための共通フレームワークの提供」と説明している。
AIの普及が進む現在、企業間で共有すべき対象はデータだけではない。AIモデルやエージェント機能、業務ノウハウを実装したスキルなども重要な資産になりつつある。
OpenSharingは、それらを特定企業の独自仕様ではなく、コミュニティ主導のオープンな仕組みで流通させることを目指している点に特徴がある。
今後、多くのベンダーやクラウド事業者が参加すれば、AI版の「共通物流インフラ」のような役割を果たす可能性がある。一方で、実際に業界標準となるためには、主要プラットフォームによる採用やエコシステムの拡大が重要になるだろう。
5.OpenSharing ProjectはMCPとどう違う?
OpenSharingとMCP(Model Context Protocol)は、ともにAIの相互運用性を高めるためのオープンな取り組みであるが、目的は異なる。
MCPは、AIモデルやAIエージェントが外部ツールやデータソースと接続するためのインタフェース規格である。AIがデータベースやファイル、SaaSなどへアクセスするための「接続方法」を標準化することが目的だ。
一方、OpenSharingは、AIモデルやAgent Skills、データそのものを組織間・プラットフォーム間で共有・配布するためのプロトコルである。言い換えれば、「何を利用するか」を流通させるための標準規格である。
整理すると、MCPは「AIが外部資源を利用するための接続規格」、OpenSharingは「AI資産そのものを共有するための流通規格」と位置付けられる。
そのため両者は競合する技術というより、相互補完的な存在である。OpenSharingで配布されたAI資産を、MCPを介してAIエージェントが利用する、といった組み合わせも将来的には考えられる。
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