知らぬ間に“候補外”へと転落
「AIで取引先を外す」経営者41.1% “見られる側”の対策は半数が未着手
人手不足や売り上げの伸び悩みを背景に、経営判断の相談相手として生成AIの活用が進んでいる。一方で、「自社が生成AIからどう見られているか」という視点が抜け落ちている実態が明らかになった。
人手不足や売り上げの伸び悩みといった課題に直面する中小企業において、生成AIは単なる業務ツールにとどまらない。経営戦略の立案や取引先の選定など、経営の根幹に関わる意思決定プロセスに組み込まれつつある。生成AIを経営判断の情報源として重要視する声は少なくない。
生成AIを強力なリサーチ手段として使いこなす経営者がいる一方で、重大な見落としも浮かび上がってきた。それは、「自社が生成AIの回答でどのように表示されているか」という視点の欠如だ。生成AIを使って他社を評価し、時には候補から外すこともあるにもかかわらず、見られる側としての意識が希薄な現状がある。
マーケティング会社のIDEATECHが2026年5月28日に発表した調査結果は、こうした生成AI活用における経営者の意識のギャップを示している。調査は同月13日から14日にかけて、業務で月に数回以上生成AIを利用する中小企業の経営者や役員311人を対象に実施された。
生成AIを意識した情報整備を怠ることが、いかにビジネス機会の損失につながるのか。調査の具体的な数値から、AI時代の新たな情報発信の視点を読み解く。
評価する側の“無防備”な実態
調査結果からは、生成AIが日常的なツールとして定着している状況と、経営者のシビアな判断基準が見えてくる。
まず、経営課題として上位に挙がったのは「人手不足、採用難」(48.2%)や「売り上げの伸び悩み」(37.6%)、「利益率の低下」(23.2%)だった。こうした課題の解決手段として生成AIが活用されており、使用経験のあるツールとしては「ChatGPT」が76.8%で突出している。次いで「Gemini」(53.1%)、「Microsoft Copilot」(35.0%)と続く。直近1カ月で最も利用しているツールとしても、「ChatGPT」(54.5%)と「Gemini」(27.1%)が上位を占め、特定サービスへの集中傾向がうかがえる。
生成AIに相談する経営テーマとしては、「経営戦略、中期計画」(23.5%)、「マーケティング、販促」(23.2%)、「営業、販売戦略」(22.8%)が上位に並んだ。一方で、「特に相談したことはない」と答えた割合も31.2%に上っており、業務の効率化ツールとしては使っていても、経営の根幹に関わる意思決定の壁打ち相手として活用できている層と、そうではない層の二極化が存在していることも分かる。
取引先や検討先の企業情報を生成AIで調べた経験については、「何度もある」「数回ある」「一度だけある」と回答した経営者は合計で55.7%に達した。注目すべきポイントは、生成AIでの調査結果を基に、その企業を「候補から外した経験がある」(14.5%)、または「優先度を下げた経験がある」(26.6%)と回答した割合が41.1%に上った点だ。生成AIが提示する情報が、B2B(企業間取引)における一次スクリーニングとして機能し、実際のビジネス機会の損失や獲得に直結している実態が明らかになった。
情報が不十分あるいは不正確だと感じた場合の対処としては、「『Google』などの検索エンジンで追加検索して調べ直す」が54.3%、「企業の公式サイトを直接確認する」が46.3%となった。生成AIの情報だけで判断を下すのではなく、検索エンジンや公式サイトを併用して情報の裏付けを取るという、多角的な情報収集プロセスが定着しつつある。
生成AIは単なる調査ツールにとどまらず、新たなビジネスのきっかけを生み出す役割も果たしている。生成AIを通じた情報収集によって、それまで知らなかった経営の選択肢や打ち手を新しく知った経験を持つ経営者は57.6%に達した。その後に取った行動として、「公式サイトを見に行った」が52.0%で最多となり、次いで「社内で導入を検討した」(30.7%)、「経営仲間や顧問先に相談した」(30.2%)と続く。生成AIによって認知を獲得した企業やサービスが、その後実際の検討フェーズに進むケースが一定数存在している。
「どう見られているか」という意識の不足
生成AIがビジネスの情報源として機能する中、自社情報の管理に関する課題も明確になった。自社の会社やサービスが生成AIの回答でどのように表示、紹介されているかを確認したことがあるかという問いに対し、「確認したことがない」と答えた経営者は52.7%に上った。「自身で試しに聞いてみたことがある」(24.8%)などの確認を含めても、半数以上が自社の表示状況を把握していない。
生成AIを通じて他社を評価し、時には候補から除外しているにもかかわらず、自社が生成AIからどう評価され、顧客にどのように提示されているかを把握していない経営者が半数以上を占めている。情報収集の側としては生成AIを活用していても、見られる側としての意識は追い付いていないのが現状だ。
今後、B2Bの購買プロセスや取引先選定において生成AIの影響力はさらに高まる見込みだ。企業は自社の公式サイトやプレスリリース、外部メディアへの露出を最適化し、生成AIに正しく情報を認識させるための対策を講じる必要に迫られている。経営戦略の一環として、生成AIにおける自社の見え方を管理する新たな視点が求められていると言える。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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