野村不動産ホールディングスらグループ会社6社は、経費精算システム「Concur」に生成AIを組み込み、申請ミスの防止と差し戻し対応の削減に取り組み、約4000時間の業務効率化を見込む。導入の決め手は?
野村不動産ホールディングス(野村不動産HD)を含むグループ会社6社は、経費精算システム「Concur」に生成AIを組み込み、申請ミスの防止や差し戻し対応の削減に取り組む。既存システムを改修することなくAI機能を追加し、年間約4000時間の業務効率化を見込む。導入を支援したテックタッチが2026年6月16日に発表した。
野村不動産グループは、デジタル変革によって企業の成長力を高める「野村不動産グループDX宣言」を掲げている。その一環として、従業員が付加価値の高い業務に集中できる環境づくりを進めてきた。
経費精算業務では法人カード利用率が90%を超えており、電子化や申請手続きの効率化は一定程度進んでいた。しかし、領収書を伴う精算では依然として手作業による判断が必要だった。
例えば、1枚の領収書に複数の税率が含まれている場合は明細を分割して入力しなければならない。また、インボイス制度への対応として適格請求書発行事業者番号の有無を確認する必要もある。こうした作業は担当者の負担が大きく、入力ミスや選択ミスによる差し戻しを完全に防ぐことは難しかった。
こうした課題を解決するため、同社が採用したのがテックタッチの「Techtouch AI Hub」だ。
最大の特徴は、既存システムを大きく改修することなく、業務画面上に生成AIを追加できる点にある。今回の導入では、利用中のConcurの操作性を維持したまま、AIによるチェック機能を業務フローへ組み込んだ。
導入の決め手となったのは、複雑な判定業務をリアルタイムで実行できることに加え、各社の経費規程や運用ルールを反映したAIを画面上に埋め込める点だった。既存業務を大きく変えずに成果を創出できることが評価された。
新たな仕組みでは、添付された領収書をAI-OCRが自動解析する。
AIは領収書の内容を読み取り、適格事業者番号の有無を判定するとともに、複数税率が含まれる場合には明細化の必要性を判断する。これまで利用者が行っていた複雑な確認作業や入力作業をリアルタイムで支援することで、申請ミスの発生を未然に防ぐ。
野村不動産HDの担当者は、「領収書1枚から複数の税区分を判断し、内容を明細化して入力する作業は従業員にとって大きな負担だった」と説明する。今回の導入によって、従業員は迷うことなく正確に経費処理を進められるようになるとしている。
同社では年間約17万件の領収書付き経費申請が発生している。
AIによる自動チェックと判定を業務フローに組み込むことで、申請者だけでなく承認者の負担も軽減できる。不備による差し戻し対応を最小化し、年間約4000時間のオペレーション効率改善を見込む。
今回の取り組みは、単なる経費精算の効率化にとどまらない。従業員が特別な操作を意識することなく、日常業務の中で生成AIの支援を受けられる環境を整備した点も特徴だ。
生成AI活用が進む中、多くの企業ではチャットbotや文書作成支援が中心となっている。一方、野村不動産グループの事例は、既存業務システムにAIを組み込み、業務ルールに基づく判断そのものを自動化することで、生産性向上とAI活用の定着を同時に進めようとする取り組みとして注目される。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「野村不動産HD、Concurに生成AIを実装 経費精算の判定自動化で年4000時間削減」(2026年6月17日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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