Gartnerが示す移行戦略の現実解
「AIで脱メインフレーム」は幻想 Gartnerが“失敗率70%超”と警告する3つの理由
Gartnerは2026年6月18日、2026年開始のメインフレーム移行プロジェクトの70%超が想定効果を得られないと予測し、生成AIへの過信に警鐘を鳴らした。
生成AIを使えば、メインフレーム移行を短期間で完了させられる――。こうした期待が高まる一方で、その過信が大規模な失敗を招く可能性がある。Gartnerは2026年6月18日(米国時間)、2026年に開始するメインフレーム移行プロジェクトの70%超は想定した効果を得られないと予測した。
Gartnerはさらに、2030年までにメインフレーム移行を支援するベンダーの75%が事業モデルを転換するか、事業を停止するとみている。Gartnerがこのように発表した背景には何があるのか。
「生成AIで脱メインフレーム」が危険な理由
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Gartnerのバイスプレジデントアナリストであるアレッサンドロ・ガリンベルティ氏は、「生成AIを使った移行支援への過剰な期待」と、「移行を計画している企業が持つレガシーインフラのスキルの程度」との間にギャップがあると指摘する。同氏は具体的に以下3つの課題を挙げている。
1.AIの実力と期待のギャップ
ベンダー側の宣伝文句とは裏腹に、生成AI機能を搭載したサービスのレガシーコードの変換、移行能力は、未だ発展途上だという。
2.投資家からベンダーに対する圧力
ベンダーは、投資家からの圧力によって、「生成AIの機能が実際にどのような成果をもたらすか」十分に検証できていないまま自社製品にAI機能を組み込まざるを得なくなっている。
3.人材不足と業務の重要性
メインフレームが担うシステムは「絶対に失敗が許されない」極めて重要な基幹業務であるにもかかわらず、それを維持・理解できる経験豊富なベテランエンジニアの流出が急速に加速している。
メインフレームは「捨てる対象」とは限らない
ガリンベルティ氏によると、メインフレーム移行市場は転換点を迎えている。IBMに加え、21CS、BMC Software、Broadcom、Rocket Softwareといった独立系ソフトウェアベンダーや、DXC Technology、Kyndrylなどのマネージドサービスプロバイダーは、メインフレームへの投資を今も継続している。これは、メインフレームが依然として戦略的な投資対象であり、モダンなプラットフォームとして使い続けられる可能性を示している。
そのため、全ての企業がメインフレームから完全に脱却すべきとは限らないとガリンベルティ氏は指摘する。さらに、企業のメインフレーム環境の規模や複雑性によって、取るべき戦略は大きく異なると同氏は強調する。
メインフレームを利用する多くのユーザー企業にとって生成AIは、「移行を加速するための手段」ではないとガリンベルティ氏は指摘する。むしろ、既存環境をその場でモダナイズする「インプレース・モダナイゼーション」(In-place Modernization)の手段として活用した方がはるかに効果的だという。つまり、生成AIの役割は「メインフレームを捨てるための道具」ではなく、「メインフレームを安全に使い続けながら、中身をリフォームするための道具」になり得るということだ。
中規模環境こそ判断が難しい
特に難しい判断を迫られるのが、中規模のメインフレーム環境を持つユーザー企業だ。ガリンベルティ氏によれば、この層はメインフレーム市場で最も大きなセグメントだ。この層については、既存投資を最適化する戦略と、限定的な脱却を組み合わせる必要があるという。
全面的な移行にはリスクが伴う。十分な準備がないまま進めれば、期待した効果を得られないだけでなく、新たな技術的負債を抱える可能性がある。そのため、全社一律で移行するのではなく、ワークロードごとに投資対効果とリスクを見極めながら、個別に判断すべきだとガリンベルティ氏は指摘する。
小規模なメインフレーム環境では、MFaaS(メインフレーム環境をクラウドのように利用するホスティングサービス)を活用したコスト効率の高い戦略が選択肢になる。併せて、古いサードパーティー製ソフトウェア(ISVソリューション)の置き換えや、「インプラットフォームモダナイゼーション」(メインフレームで稼働しているシステムやプログラムをモダナイズすること)が現実的だとガリンベルティ氏は紹介する。
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