ERPシステムの切り替えプロジェクト、第2フェーズは支店への拡大Column

本社でのシステム稼働を見届けたわれわれは、リソースが潤沢とは言えない支店での切り替えに乗り出した。

2006年09月12日 10時20分 公開
[Les Johnson,TechTarget]

 古い格言にあるように、ぴったり合った靴を履けば、自分の足の存在は忘れてしまうものだ。これは、ITプロジェクトにも当てはまることだ。ITプロジェクトは、その存在を気にかけなくなるほど業務とうまく調和すれば、成功したと言える。

 ERPシステムの切り替えプロジェクトの第2フェーズに向けて準備を進めるに当たり、われわれITチームはアラスカ州フェアバンクスからアリゾナ州フェニックスまで、最も遠隔地にある当社の支店を4カ所訪ねた。そして、当社が導入した新しいアプリケーションが当社の既存インフラとうまくマッチしていないことを把握した。

 第1フェーズでは、当社のレガシーシステムのバックオフィス機能を変換した。多くの企業と同様、当社でも、本社の方が支店よりもリソースは潤沢だ。当社のデータセンターは温度・湿度が調節された環境にあるが、支店のデータセンターは物置部屋のようなものだ。

 こうした物置部屋には、われわれが3年前に最後のアップグレードを実施して以来のほこりが積もっている。そして、データケーブルや大昔のルータがスパゲティのようにもつれた状態で収納されている。会社の成長に伴い、ハブやスイッチが独創的に積み重ねられ、ネットワークを把握することはもはや「パズル愛好家の楽しみ」の域に達している。そのため、新しいアプリケーションの要件をめぐり、こうした物置部屋の集合体で問題が生じていることを知っても、われわれは驚かなかった。交換すべきパーツが手元に届き、必要としていた大半の要素はそろった。だが、そこには予期せぬ問題もあった。

問題点の修正

 われわれの事業にとって、運送料は主要なコストコンポーネントとなる。特に、アンカレッジのような遠隔地では尚更だ。われわれは、主要な商用輸送業者との完全な統合をうたう出荷アプリケーションをインストールし、業者間で料金を比較できるようにした。だが、このアプリケーションはアラスカには対応していない。そこで、われわれは妥協策を見つけた。そのソリューションは、統合重量計でパッケージを計量し、荷送人のインターネットサイトで料金を計算し、コストを当社のERPシステムに戻すようになっている。この方法の欠点は、「料金の比較ができないため、輸送業者を1つに絞らざるを得ない」という点だ。

 プラグアンドプレイなどありえない、とまでは言わないが、ハードウェアの初めてのインストールは危険なものだ。われわれの新しいプリンタとスキャナも非常に「個性的」と言っていいだろう。だが幸い、スタッフのなかにはこうしたハードウェアの微妙な差異を見極めることに魅力を感じる向きもいるようだ。

 アラスカでの作業を終えたとき、われわれはこのコアソフトウェアの新版がリリース間近であることを知った。新版は実装がより容易でバグも少ない、との話だった。われわれは、支店ではトレーニング用にこの新版を用いることにし、生産前テストを開始した。バックオフィスでは古いバージョンを使い続けた。

 支店のデスクトップのアップグレードに着手して1日か2日経ったとき、わたしのオフィスに導入コンサルタント主任が入ってきた。彼の話によると、このアップグレード版は改良版というよりも、全くの新版とのことだった。ある会社が実地テストを行ったところ、深刻な欠陥が見つかった。この新版は、100人以上のユーザーがログインすると壊れてしまうということだった。当社では1度に50人以上のユーザーをトレーニングすることはない。だが、最終的な稼働までには、この問題を解決しておく必要があるだろう。

 支店の準備を終えるころには、われわれも自信を回復していた。ハードウェアは協調して機能し、ソフトウェアもきちんと稼働していた。メールが届くたびに問題はますます複雑化していったが、それでもわれわれは次第に問題解決に迫りつつあった。模擬稼働を行ったところ、5つの支店で前日の取引を再入力する必要が生じたが、それでもなんとか対処はできた。われわれは、IT部門が学習するための最良の方法が何かを悟った。それは、問題点をうまく修正していくなかで学習するという方法だ。

 アメフトならば、フォースダウンでゴールまであと28ヤード、と言ったところだろうか。新しい靴でいつもそうするように、われわれは今、システムを“履き慣らして”いる段階だ。そして、IT部門以外の人たちは少しずつ、このプロジェクトを気にかけなくなってきている。

本稿筆者のレス・ジョンソン氏は、電力卸売会社ノースコーストエレクトリックのCIO。

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