アプリケーションスイッチの歴史は、その前身を含めて10年と長い。機能・性能とも大きく進化したが、ユーザーニーズはあまり変化していない。その基本機能を理解するとWebサイトで重宝される理由が見えてくる。
ロードバランサ、負荷分散装置、レイヤー4(L4)スイッチ、L7スイッチ、Webスイッチ、アプリケーションフロントエンド(AFE)、アプリケーションデリバリコントローラー(ADC)――。「アプリケーションスイッチ」は、その前身が約10年前に市場に登場して以来、その製品としての進化の過程を歩む中でいろいろな名称で呼ばれ、特にWebサーバトラフィックの高速化、最適化に大きく寄与してきた。
1996年ごろのギガビットイーサネットやL3スイッチの登場をきっかけに、LANはイーサネット、プロトコルはTCP/IPが事実上の標準となった。当時の技術的な背景としては、ASIC(特定用途向けIC)による高速化や、それまで汎用サーバ+ソフトウェアだったファイアウォールなどを専用ハードウェアに組み込んだ「アプライアンス製品」の普及があった。そのような中で、今のアプリケーションスイッチの草分けとなる、L4スイッチであるAlteon Networks(現Nortel Networks)の「ACEdirector」や、負荷分散アプライアンスであるF5 Networksの「BIG-IP」が登場した。
ご存じの通り、L2スイッチはイーサネットフレームを、L3スイッチはTCP/IPなどのパケットを処理するためのスイッチである。これに対しアプリケーションスイッチは、より上位のレイヤーであるセッションやトランザクション、つまりアプリケーションを処理するスイッチである。アプリケーションスイッチと呼ばれるゆえんはここにある。当初は専用アプライアンスだったSSLアクセラレータも、2000年ごろにはアプリケーションスイッチに内蔵されるようになった。ここ数年ではTCPコネクション集約やHTTPデータ圧縮など、さらに高速化、高機能化が進んでいる。
インターネットの広帯域化やWebコンテンツの普及・大容量化などを背景に、アプリケーションスイッチのマーケットも確実な成長を遂げ、今では全世界で10億ドル規模、日本でも100億円以上の市場といわれている。製品の登場から10年、その間に機能・性能は劇的に進化したが、アプリケーションスイッチに対して利用者が求めるものは、基本的に大きくは変化していない。ここではユーザーの要求やそれを実現する機能をひもときながら、アプリケーションスイッチの基本をより正しく理解していただきたいと思う。
かつてのホストコンピュータ全盛の時代、より高性能・高信頼性を求めるには、そのマシン自体の性能や信頼性を向上させるしかなかった。そしてオープンシステムへと変化した現在、サーバ単体の信頼性が飛躍的に向上、さらにシステム全体の性能や信頼性を向上させるためにサーバを冗長化して負荷を分散させるようになった。そのようなオープン化の流れの中で登場したのが、ロードバランサやL4スイッチと呼ばれる製品だった。
例えば1台のサーバを冗長化するとき、同じ機能を実現するサーバを2台用意し、1台を正系(アクティブ)、もう1台を副系(スタンバイ)とし、正系のサーバに障害が発生した際に、副系のサーバに切り替える。つまりサーバ2台のうち1台は、障害が発生しないと使われないことになる。2台あるのなら両方とも同時に利用すれば、信頼性の向上だけでなく性能の向上にもつながる。これが、アプリケーションスイッチへの要求で最も基本となる負荷分散と冗長化である。
アプリケーションスイッチでは、どのような仕組みで負荷分散を行い、システムの性能や信頼性の向上を実現しているのかを説明しておこう(図1)。
この中で、アプリケーションスイッチ特有の重要な機能として「負荷分散アルゴリズム」と「ヘルスチェック」が含まれている。
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