パブリッククラウド調査結果、セキュリティが不安な一方で3割は導入に前向きクラウドインフラの導入に関するアンケート調査リポート

TechTargetジャパンでは、クラウド(パブリック、プライベート、ハイブリッドクラウド)インフラの導入状況や課題、サービス事業者選びで重視するポイントなどを聞いた。

2012年02月22日 09時00分 公開
[荒井亜子,TechTargetジャパン]

 昨今、日本におけるクラウドインフラが目覚ましい発展を遂げている。外資系クラウド事業者による東京リージョンの開設、国産クラウド事業者による相次ぐ郊外型データセンターの設立、仮想化ベンダーやハードウェアベンダー、SIerによるプライベートクラウドやクラウド連携サービスの提供などが挙げられる。

 クラウドインフラが技術的に整いつつある中、ユーザー企業は徐々にクラウドの導入を検討し始めるのではないか。

 このような仮説の下、TechTargetジャパンでは2012年1月24日から2月9日にかけて、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、パブリッククラウド(PaaS/IaaS)といったクラウドインフラに関する利用動向調査を実施した。事業継続やコスト削減、IT統合など、クラウドに対する期待が分かった一方で、セキュリティやコストに関する課題意識も浮き彫りになった。

アンケートのダウンロード

 パブリック、プライベートクラウドで導入が検討されているサービス、サービスプロバイダーの製品選定基準など、詳細なアンケート結果は以下でダウンロードできる(TechTargetジャパン会員限定)。

 本稿では紹介しきれなかったさまざまなアンケート結果と共にアンケート回答者の詳細な属性も紹介されているので、ぜひ参照されたい。


調査概要

目的:TechTargetジャパン会員のクラウドインフラ導入について調査するため

方法:Webによるアンケート

調査対象:TechTargetジャパン会員

調査期間:2012年1月24日〜2月9日

有効回答数:312件

備考:本調査によるクラウドインフラとは、パブリック、プライベート、ハイブリッドクラウドを構築するためのインフラ(PaaS/IaaS)を意味する。自社で設備を構築し、統合的に管理しないオンプレミスシステムは除く。

※回答の比率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合がある。


パブリッククラウドの導入

 本稿ではパブリッククラウド(PaaS/IaaS)に焦点を当ててリポートする。まずは、パブリッククラウドの導入状況を見ていこう。

 「既に導入済み」と回答した人は全体の15.4%、「導入予定」と回答した人は13.5%だった。3割近くが導入済みまたは導入に向けて取り組んでいることが分かる。

図1 パブリッククラウド(PaaS/IaaS)導入状況(N=312)《クリックで拡大》

 参考までに、クラウドの足掛かりともいえるサーバ仮想化の導入状況は、「既に導入済み」が53.2%、「導入予定」が11.9%だった。2011年2月の同調査では「導入済み」が45.5%だったことから、1年で10ポイント近く増えた計算だ。サーバ仮想化の導入増が今後のクラウド導入増につながることも期待できる。

パブリッククラウドの課題と懸念

 一方で、パブリッククラウドに関して「現在計画はない」と回答する人も約4割いることから、浸透にはまだ時間がかかる様子もうかがえる。

 パブリッククラウドの導入に対する課題や懸念については、以下のような結果が得られた。

図2 パブリッククラウドの課題と懸念(N=310)《クリックで拡大》

おわびと訂正(2013年6月17日)

選択肢「ネットワーク回線の増強」が重複していたため、調査結果から削除しました。おわびして訂正いたします。


 やはり多いのがセキュリティへの不安だ。「クラウド事業者による情報漏えい」(62.6%)や、「ネットワークを介した第三者からの不正アクセス」(51.9%)への不安が上位に来ている。

 パブリッククラウドでは基本的にインターネットを介してクラウドのシステムを利用することになる。だが最近では、インターネット回線ではなくVPN接続や専用線接続を可能にするクラウドサービスも登場している。また、複数クラウド向けの認証基盤を提供するサービスも充実してきていることから、今後もセキュリティ面の向上は期待できるだろう。

 もう1点、「他社とのデータがきちんと隔離されているか」(35.8%)への不安も多く見られた。一般的にパブリッククラウドでは同一筺体内に複数のユーザー企業のデータが混在することになる。これについては、Amazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC)のように、自社だけの隔離されたAmazon EC2インスタンスを構築し、セキュアなVPN接続で企業内のITインフラとつなげられるサービスもあるため、機密性の高いデータをクラウドに預ける場合にはうまく活用したい(関連記事:オンプレミスからクラウド、過渡期における課題の解決)。

パブリッククラウドとオンプレミスの切り分け基準

 パブリッククラウドに対し上記のような不安も残る中で、現在クラウド導入における最も現実的な解とされているのがハイブリッドクラウドだ。設問では、パブリッククラウドとオンプレミスの切り分け方について聞いた。

図3 パブリッククラウドとオンプレミスの切り分け基準(N=306)《クリックで拡大》

 機密情報や個人情報、基幹システムに関してはオンプレミスで構築するという回答が上位にきていることは予想に難くない結果だった。だが、「仕組み的にパブリッククラウドに移行できないシステム以外、全てパブリッククラウド」(12.7%)が3位に来ている点にも注目したい。技術やラインセンスの課題が解決されればパブリッククラウドにシステムを移行したいと考える企業も一定数いるようだ。

パブリック、プライベートクラウドで導入が検討されているサービス、サービスプロバイダーの製品選定基準など、詳細なアンケート結果は以下でダウンロードできる(TechTargetジャパン会員限定)。

 本稿では紹介しきれなかったさまざまなアンケート結果と共にアンケート回答者の詳細な属性も紹介されているので、ぜひ参照されたい。


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