仮想マシンの集約率をいかに最適化するか【前編】
仮想マシンの過密集約に注意、vSphere新ライセンスの意味
仮想マシンの集約率の策定は極めて難しい 。利益のために集約率を高め過ぎれば不具合の原因になる。では、多くのITマネジャーはどのような集約率を採用しているのだろうか。
仮想マシン(VM)の理想的な集約率を判断するのは一筋縄ではいかない。大規模サーバや多数のコアが従来よりも低コストで利用できるようになってきていることは、集約率を高めるのに好都合だ。それでも、ライセンスモデルやアップタイムの問題から、ITマネジャーは集約を過度に行わないようにしている。
VMの集約戦略の策定では、集約率はどのレベルになると高過ぎるのか、どのレベルになると低過ぎるのかが問題になる。実際の仮想環境でその答えを出すのは、極めて難しいことがある。
サーバ仮想化が普及し始めた当初は、サーバ集約率は「高いほどよい」というのが大方の見方だった。ITマネジャーは、1台のサーバにできるだけ多数のVMを詰め込もうと考えた。ハイパーバイザーへの投資から最大限の利益を得るためだ。
しかし、仮想化はその当時、トランザクションの少ない軽いワークロードの処理に利用されていた。最近では、VMでダウンしてはならないミッションクリティカルなアプリケーションがホストされることがますます増えている。こうしたアプリケーションは、特に、お粗末なキャパシティープランニングのような単純な原因でダウンすることは許されない。そのため、サーバ集約率の追求の行き過ぎに大きくブレーキがかかった。ITマネジャーは偏向を改め、適切なリソース配分、アップタイム、キャパシティープランニングを重視することを迫られたのだ。
サーバ集約率を極力高めようというアプローチが見直されることになったもう1つの背景として、2011年7月に仮想化大手の米VMwareが導入した新しい価格モデルが、ITマネジャーに対し、リソース消費に注意を払うよう促すものだったことが挙げられる(関連記事:ユーザーが物議を醸す、VMware vSphere 5の新しいライセンス)。VMwareはそれまで、「VMware vSphere」スイートのライセンスを、ホスト上で動作するVMの数にかかわらずプロセッサ単位で販売していたが、「VMware vSphere 5」スイートではvRAMに関する制限が導入された。具体的には、1ライセンスでVMに割り当てることができる物理メモリ量の上限が新たに設定された。多くの点で、VMは物理メモリに制約されるため、この新しいライセンスモデルにより、1台のサーバ上で経済的に実行できるVMの数が制限されることになる。
これまでのところ、リソースベースの料金モデルを採用している仮想化ベンダーはVMwareしかない。他の仮想化ベンダーは、厳密にCPUベースの価格モデルを貫いていることを競争上の強みに挙げている。しかし、仮想化されたクラウドベースのモデルへとワークロードの移行が進むとともに、ベンダーがリソース消費に基づいてソフトウェアに課金するようになる兆しがある。
一方、インフラベンダーは、これまでより大規模で仮想化に利用しやすいサーバの投入を続けている。これらのサーバは、1台のホストに大量のVMを容易に詰め込むことができ、VMのサイジングや配置を最適化する必要性が低い。しかし、VM集約率を高くすると、ハードウェアやライセンスだけでなく、アップタイムの面でも弊害を招きかねない。集約率が高く、不適切に構成されたサーバで障害が発生すると、アプリケーションの可用性やアップタイムに重大な影響を与える恐れがある。
VMware vSphere 5に関する記事
VM集約率は千差万別
こうした状況の中、ITマネジャーは最近、どのようなサーバ集約率を採用しているのか。当然のことながら、それは状況次第だ。
「VMware ESX 3.x」時代には、経験則からVMの集約は1コアでVMを4台動作させるのがよいと考えられていたと、ホスティングプロバイダーの米Go DaddyでITマネジャーを務めるジョー・サンチェス氏は語った。その場合、例えば、デュアルプロセッサのクアッドコアサーバでは、ホスト当たりのVMが約8台で、集約率は8対1となる。
最近のほとんどのハイパーバイザーでは、理論上サポート可能な1コア当たりのVM台数は、もっと多くなっている。しかし、バランスの取れたパフォーマンスを目指すのであれば、やはり目安としては1~2個の仮想CPU(vCPU)を使用するVM 4台を1コアで動作させるのが望ましいとサンチェス氏は語った。
「新しいサーバやVMware ESXの新バージョンは多くのVMを扱える」と同氏。「しかし、あまりに多くのVMが同じコアを共有すると、CPU待ち時間に影響が出てしまい、パフォーマンスの問題が発生する恐れがある」
パフォーマンスがあまり問題にならない場合、例えば、開発およびテスト環境はどうか。「これらのVMは、コアにどんどん詰め込めばよい」(サンチェス氏)
規制対象文書の管理サービスを提供する米Walz Groupは、VMの集約戦略にこうしたモデルを採用している。本番システムでは、VMとホストの比率を非常に保守的な数字に設定する一方、開発やテスト、品質保証などの環境では、この比率を大幅に大きくしている。
米TemeculaのCISO(最高情報セキュリティ責任者) バート・ファルザラノ氏も、「われわれは本番システムでは、1台のホストで実行するVMを15台より増やすことはほとんどない」と語った。同社は検証済みのFlexPod構成で、VMwareソフトウェア、デュアルプロセッサのクアッドコア製品である米Cisco Systemsの「UCS Bシリーズブレードサーバ」、米NetApp製ストレージを運用している。
しかし本番システム以外ではそうした上限は設けておらず、VM集約率が40対1になることもよくあるとファルザラノ氏は語った。同氏が知っている他の組織の環境では、100対1程度という高いVM密度でVMが運用されているケースもあるという。
プロセッサコア数の増加がもたらすVM密度の向上
現在のVM密度の向上は、仮想化ベンダーやユーザーが胸を張れる成果というわけではない。サーバのコア数の増加がVM密度向上の主な要因であり、これらのベンダーやユーザーが効果的な手を打ったのではないからだ。
実際、仮想化管理ベンダーの米VKernelは、顧客企業による仮想環境の使用状況データを調査し、これらの企業におけるVM密度の向上は、サーバのコア数の増加と非常に似た経過をたどっていることを発見した。
「データセンターで見られる仮想化による高い集約率は、CPUやメモリの効率的な利用とはほとんど関係がないことが分かった」と、VKernelのCMO(最高マーケティング責任者)、ブライアン・センプル氏は述べている。「むしろこの集約率は、x86プロセッサのコア数によって決まる、ホスト当たりのコア密度とほぼ完全に連動している」
実際、Intel XeonプロセッサE7ファミリー(開発コード名:Westmere EX)は、最大10個のプロセッサコアを備え、最近リリースされたAMD Opteronプロセッサ(開発コード名:Interlagos)は最大16個のコアを備える。このようにプロセッサ性能が向上すると、スケールアウトサーバで、100対1に迫るVM集約率をたやすく実現できる。VKernelのセンプル氏が、「Intelのポール・オッテリーニCEOに感謝状を送った方がいい」と述べている通りだ。
クラスタとリソースプールの考え方が浸透してきたことで、個々のサーバとその構成にはあまり注意が払われなくなっている。「われわれは、サーバについてはあまり考慮せず、全体的なリソースプールについて考えている」と、英プリマス大学のインフラ・オペレーションマネジャーを務めるエードリアン・ジェーン氏は語った。同大学では、学内最大規模のVM(8個のvCPU、24Gバイトのメモリが割り当てられ、Microsoft Exchange Serverが実行されている)をホストできるように1台のサーバのサイジングを行っており、それ以外については「VMware Distributed Resource Scheduler」で管理している。
後編「コスト削減への近道、仮想マシン集約率向上のヒント」では、仮想マシン集約率を最適化するためのヒントをお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
仮想マシンの集約率をいかに最適化するか
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
5
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
「SIEMの利用」に関するアンケート
-
10
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー