ハッキング可能なスマートデバイス
iPhone盗聴も可能か、セキュリティ研究者が示した危険なデモ
「Black Hat 2013」ではユーザーや開発者に警告する目的で、セキュリティ研究者によるスマートデバイスへのハッキングのデモが示された。iPhoneも安全ではないようだ。
先日開催された「Black Hat 2013」では、米国家安全保障局(NSA)のキース・B・アレクサンダー局長による2013年7月31日(米国時間)のオープニングキーノートに先立ち、「Black Hat」カンファレンスの創設者であるジェフ・モス氏が「今日、セキュリティコミュニティーに存在する、この種の緊張感は、1990年代初頭の『暗号化戦争』以来経験したことがないものだ」とコメントした(参考:市販製品を利用? 米国政府のネット情報収集手法が判明)。
その緊張感は、アレクサンダー氏の基調講演に対する聴衆の複雑な反応に見て取れただけでなく、Black Hat 2013で発表された数々のゼロデイ脆弱性の性格からも感じられた。Black Hatは、セキュリティ研究者や企業のセキュリティ担当者が集う年次カンファレンス。米国での開催は今回で第16回目となる。
アレクサンダー氏は基調講演で、セキュリティ専門家で埋め尽くされた会場に漂う疑惑を払拭すべく、同氏のいう「事実」を伝えようとしたが、新たな疑惑が生じる形となった。同氏が登壇する数時間前、元CIA職員のエドワード・スノーデン氏が新たに暴露した情報を英Guardian紙が初めて公表し、これまで知られていなかった秘密のインターネット監視プログラムに関する情報を明らかにしたのだ。
Guardianの報道によると、「XKeyscore」と呼ばれるこのプログラムは、「一般のユーザーがインターネット上でやりとりするほぼ全て」(リークされたNSAの文書)に研究者がアクセスすることを可能にするという。アレクサンダー氏は「NSAが電子通信を監視するために行う活動は全て政府の監督下にある」と主張した。だが、たとえアレクサンダー氏が取り上げた2つのプログラムがそうであったとしても、Guardianの記事はXKeyscoreプログラムではそのような監督が必要とされないことを示唆するものだった。
アレクサンダー氏の講演会場の奥の方から「あなたは議会にうそをついた。今回はうそをついていないなどとは信じられない」とやじが飛んだ。これに対してアレクサンダー氏は「議会での私の証言記録を読んでいただきたい」と応じた。全般的には、アレクサンダー氏の主張は大多数の聴衆から好意的に受け止められたようだ(少なくとも賛同の拍手があった)。
ハッキング可能なスマートデバイス
アレクサンダー氏は、米国政府による米国市民の監視について、「われわれの中に紛れ込んだテロリスト」に脅かされた世界では必要なものだと擁護したが、韓国の独立研究者であるスンジン・ベイスト・リー氏は、別のタイプの監視の可能性を聴衆に示した。「スマートテレビ(リー氏によると、2012年の全世界での販売台数は8000万台以上)に搭載されたカメラとマイクは、高度な監視装置として利用される可能性がある」と同氏は指摘した。
「私自身が監視されるのは構わないが、家族と恋人が心配だ」(リー氏)
別のセッションでは、セキュリティ企業の米iSEC Partnersの研究者であるトム・リッター氏、ダグ・デペリー氏、アンドリュー・ラヒミ氏が、家庭やオフィスで携帯電話の受信環境を改善するフェムトセルデバイス(小型中継機)の欠点を示すデモを行った。
デモで使われたデバイスは組み込み版Linuxで動作し、最大6人の携帯端末ユーザーをキャリアネットワークに接続する。この接続はSSLを使ってインターネット経由で行われる。iSECの研究チームはこのデバイスをルート化するのに成功したという。研究者たちが変更を加えたフェムトセルボックスでは、同デバイスに関連付けられた任意の電話とやりとりされるトラフィックを傍受、記録することが可能になる。
「知らないうちにあなたの電話が自動的にフェムトセルに関連付けられるのだ。これはWi-Fiネットワークに接続するのとは違い、自分で選択することができない」とリッター氏は語った。「実際、ここにいる人が持っている携帯電話の中には、今現在、われわれのネットワークに接続されているものもあるかもしれない」。また、セッションルーム入り口のドアに張られていた掲示について、「あれは単にショウのための注意書きではない。皆さんの携帯電話を機内モードにした方がいいかもしれない」と同氏は語った。
発表を行ったiSECの研究チームによると、この研究は米Verizonのネットワークで使用されるフェムトセルを対象としたものだ。これは、米国の携帯電話ユーザーの3人に1人がこの脆弱性の影響を受ける可能性があることを意味するという。「われわれのチームが変更を加えたフェムトセルデバイスのメーカーである韓国のSamsungはその後、われわれがデバイスへのルートアクセスを取得するのに利用した脆弱性を修正するパッチを提供した」とリッター氏は述べた。
3人の研究者はその次に、音声トラフィック、テキストメッセージ、デジタル画像のデータ送信を傍受し、聴衆の前でそれを再生するライブデモを行った。
「侵入されたフェムトセルデバイスにパッチを当てることは可能だが、悪意を抱いている人がプロバイダーのネットワークに直接アクセスできるハードウェアを入手できることに、欠陥があると思われる」と同チームは語った。この種の通信を処理するには、携帯電話にWi-Fi機能を組み込むというアプローチの方が望ましいという。一方、スマートフォンは基地局であれフェムトセルデバイスであれ、その時点で最も強い信号を出しているものとペアリングする。フェムトセルとペアリングしていることを示す小さなアイコンを表示する携帯電話も存在するが、「iPhone」を含む多くの携帯端末はそのような情報を表示しない。
工場への長距離攻撃
Black Hat 2013では、産業機器のバルブやセンサーなどを操作するために用いられる組み込み型制御デバイスを狙った攻撃を紹介したセッションもあった。米IOActiveの2人の研究者は、一連の厄介な脆弱性について報告した。これは、最大40マイル(約64キロ)離れた場所にある無線制御機器を攻撃者が操作することを可能にするというものだ。
「暗号方式の問題や機器間の通信に関連した問題のせいで、産業用無線センサーのネットワークへの侵入が可能となっている」と指摘したのは、セキュリティ研究者でコンサルタントのルーカス・アパ氏だ。こうした脆弱性が同氏の母国であるアルゼンチンの油田にも影響を及ぼすのではないかと同氏は危惧している。「われわれはこれらの油田施設に侵入する新たな手法を考案した。一部のデバイスは強力な無線信号を発しており、40マイルも離れた場所からでもこれらの機器と通信できることが分かった」
アパ氏と共同プレゼンターのカルロス・ペナゴス氏(IOActiveの上席研究者兼コンサルタント)によると、これらのデバイスの暗号鍵の扱い方は、ビジネスネットワークの標準的な鍵管理方式とは異なるという。一般的には、こうしたデバイスはIEEE802.15.4標準を採用し、下層のプロトコルの上に独自のセキュリティ制御技術が実装されている。
Black Hat 2013における他の多くのセッションで紹介された攻撃手法とは異なり、これらの脆弱性にはまだパッチが適用されていないという。「このことは世界各国の多数の施設に影響しかねない」とペナゴス氏は述べた。
「これは大きな金銭的損失や爆発事故につながりかねない問題だ」とアパ氏は付け加えた。こうしたリスクがあるために、両研究者は考案した攻撃手法の詳細を公開するつもりはないとしている。
「困った問題だ」とアパ氏は素っ気なく言った。
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