IT活用で健康長寿社会を実現
アベノミクスと医療のIT化、厚労省予算から動向を探る
アベノミクスの成長戦略の要ともいわれる医療・介護分野。2013年8月末に発表された厚生労働省の2014年度予算概算要求では、成長戦略の実行を後押しする要求項目が盛り込まれている。
政府や関係省庁が進める各種施策は、関連分野のIT化に強い影響力を持つ。医療分野におけるIT化は今後どのような取り組みが行われるのか? 厚生労働省が2013年8月末に公表した2014年度予算概算要求の内容を踏まえ、医療IT化の推進策をまとめた。
健康長寿社会の実現をITで支援
厚生労働省は8月27日、2014年度の予算概算要求を公表。一般会計の合計額は30兆5620億円となり、2013年度当初予算額29兆4321億円よりも1兆1299億円多くなった(予算比3.8%増)。また、政府の成長戦略を後押しするために設けられた「新しい日本のための優先課題推進枠」関連では1617億円を計上している。特に、医療IT化に関する新規施策は課題推進枠での要望項目が多い。
厚生労働省の「平成26年度予算概算要求の概要」によると、同省は、2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」における以下の2点に取り組むという。
- 雇用制度改革・人材力の強化を推進し、全ての人材が能力を高め、その能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」を構築する
- 国民の健康寿命の延伸を目指し、予防サービスを充実しつつ、より質の高い医療・介護を提供する「健康長寿社会の実現」を図る
そのうち、「(2)健康長寿社会の実現」では「予防・健康管理の推進等」「医療関連イノベーションの一体的推進」「良質な医療・介護へのアクセスの確保」などに関する施策に取り組む。
レセプト・健診情報の有効活用を促進
IT化推進の観点では「予防・健康管理の推進等」の新規施策が挙げられる。2014年度予算概算要求では、予防・健康管理の推進等関連で305億円を計上している。具体的には、医療保険者によるレセプトや健診情報などのデータ分析に基づく保健事業(データヘルスケア)の推進に取り組む。加えて、健康保険組合や市町村国保などにおける「データヘルス計画」の作成や事業の立ち上げを支援する。
また、健康・疾病データベースにおける研究・分析基盤の確立を目指す。国が保有するレセプトやDPC(診断群分類別包括評価)データの活用を促進する。さらに、循環器疾患の発症予防に関する調査研究データを国立循環器病研究センターに集積し、予防から診断、治療法に至るまでのモデル開発を推進する。その他、ITを活用した地域医療ネットワークの推進などで、重複受診・重複検査を防止することで医療資源の有効活用にも取り組むという。
日本版NIHの創設などで医療イノベーションを推進
「医療関連イノベーション」関連では1082億円を計上。米国立衛生研究所(NIH)にならった「日本版NIH」を創設し、医療分野の研究開発の促進などを行う。日本版NIHは、革新的な医療技術の実用化を進めるため、医療分野の研究開発の司令塔機能を持たせる予定。また、国立がん研究センターや国立循環器病研究センターなど、6つの医療系独立行政法人(国立高度専門医療研究センター)における治験・臨床研究体制の充実を目指す。
さらに、再生医療実用化研究実施拠点の整備や創薬支援ネットワーク事業の強化、付加価値の高い医療機器を開発するための「健康・医療戦略クラスタ」を構築することで、再生医療の実用化や新たな医薬品・医療機器の開発などを促進する。その他、日本発の医療機器や医薬品の海外への輸出促進などの国際展開の充実を図る。
良質な医療・介護提供体制を強化
「医療・介護へのアクセスの確保」関連としては274億円を計上。ドクターヘリの運航体制の拡充、搬送先が決まらない救急患者を受け入れる医療機関の確保など、救急医療の体制を強化する。また、新たな専門医の養成プログラムの作成支援などで、良質な医療の提供体制の構築を目指す。さらに、国が備蓄しているワクチンの有効期限切れに伴う買い替え、先天性風しん症候群予防のための抗体検査の実施といった「感染症対策の強化」を目指す。
その他、超高齢社会の到来を踏まえ、今回の予算概算要求では介護分野における「安心で質の高い介護サービスの確保」に関する予算も多く要求されている。地域包括ケアシステム構築に向けた普及啓発や人材確保の促進などに7億4000万円が、二次医療圏単位における医療・介護連携の推進などに7100万円が計上されている。
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