ディレクトリ構造の限界とフラットなオブジェクトストレージの可能性フランス原子力・代替エネルギー庁導入事例

ファイル/ブロックベースの大規模なストレージをオブジェクトストレージにリプレースしつつあるフランス原子力・代替エネルギー庁。彼らがオブジェクトストレージに見いだした可能性とは?

2016年01月19日 08時00分 公開
[Antony AdsheadComputer Weekly]
Computer Weekly

 フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)は、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の運用に利用するストレージアーキテクチャを開発するに当たり、テストベッドプロジェクト向けに米Scalityのオブジェクトストレージソフトウェアを選んだ。

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 CEAの狙いは、Military Applications Division(DAM:軍事応用局)のストレージアーキテクチャの一部として「Scality」を組み込むことだ。そのメリットとして、ストレージハードウェアへの依存性をなくすことと、HDDのスループット向上を期待している。

 仏パリ近郊のCEA/DAMの拠点では、何十万基ものCPUと数十P(ペタ)Bのストレージを使って処理する、数Pフロップス級の研究を行っている。

 現在は、米DataDirect Networksの大容量ストレージと英Xyratex(2014年にSeagateが買収)の並列ファイルシステム「Lustre」を使用するファイル/ブロックベースの高速ストレージで構成されている。

 DAMは、このHPCのファイル/ブロックベースのストレージを2020年までに置き換えることを目指し、オブジェクトベースのソフトウェア定義分散ストレージ「Scality RING」を利用するテストプログラムを開始した。

 「Scalityはソフトウェア製品であり、ストレージのハードウェアが限定されない。それだけでなく、入出力(I/O)効率を大幅に改善して、物理ストレージの帯域幅を広げることを目的としている」と、CEAで科学コンピューティング施設部門の責任者を務めるジャック・チャールズ・ラフォクリエール氏は語る。

 「ブロックモデルやファイルモデルによるアクセスにすると、帯域幅の効率が20〜30%向上する。これをオブジェクトストレージインタフェースに移行すれば、向上する帯域幅効率が100%近くになると考えている」と同氏は言う。

 「POSIX」(UNIX系OSの最小限のAPIセット)とブロック/ファイルストレージのツリー構造が原因で、アプリケーションやストレージはハードウェアを最大限に生かせず、効率を低下させているとラフォクリエール氏は言う。

 「オブジェクトインタフェースに移行すれば、何百MBものオブジェクトを処理できるようになり、I/Oも最適化できる。さらに、データとメタデータの複雑さを管理する必要もない」

 「ファイル/ブロックストレージは、そのツリー構造と複数のディレクトリに散在するデータを収集しなければならない。その上、POSIXのセマンティクスへの準拠が求められる。その結果、スケーリングに問題が生じたり、多くのCPUから同じデータセットにアクセスする際に問題が発生したりすることになる」

 ラフォクリエール氏は次のように付け加えた。

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