企業のデジタル化が広がり、ソフトウェア駆動型サービスが導入される中で、ITサービスデスクの役割が変わろうとしている。
1990年代後半、電子商取引サイトに障害が起きて、CEOが「誰の責任だ?」と問い詰めるテレビCMがあった。Webサイトの障害は、IT担当者にとっては日常茶飯事だ。だがその日常はさらに複雑化する見通しだ。会社が立ち上げるデジタルサービスはますます増え、そうしたサービスが従来型のITにのし掛かっている。
ITサービスマネジメント(ITSM)戦略は、ITインフラストラクチャライブラリ(ITIL)フレームワークの枠内にある。そのため、私物端末を使う従業員が増え、ソフトウェアがマイクロサービスやクラウドサービス、DevOpsで開発される現代においてはある程度の制約を受ける。
英AvivaのグローバルIT事業担当ディレクター、マーク・ホール氏は、2015年7月に英ロンドンで開催された「ITSM Leadership Council」で行った講演で、今ほどITSMが必要とされるときはなかったと述べ、「ITSMの形態、役割、境界はもはや明確ではなくなった。変わりゆく世界との関係も同様だ」と語った。
ホール氏によると、ITサポートは顧客の要求を満たすため、これまで以上に迅速な行動が求められている。公式プロセスが減る一方で、幅広いパートナーや関係者との交流は拡大した。
英EEのサービス管理ディレクター、クリス・ウィリアムズ氏は言う。「従来のようなスキルに加えて、『ソリューションインテグレーター』やコミュニケーション能力の高い人材が必要になった。事業の商業的側面を深く理解していて、適応力に優れ、われわれが働く環境の進化の速さを予測できる人材が求められている。つまり、人材を見つけて採用し、育成する手段を劇的に変えなければならない」
クリス・ピック氏は、ITとビジネスの連携を強化するための標準確立を目指して3年半前に設立された業界団体Technology Business Management(TBM)Councilの会長を務める。
「ITILとサービスデリバリーはCIO(最高情報責任者)が遂行する。だがわれわれは、ITとビジネスパートナーの間に根本的な断絶があると感じている」と同氏は話す。TBM Councilでは、IT部門が社内の仕組みの管理に使っている指標が、事業部門に理解しやすい言葉とは懸け離れているとの認識に至った。
「ITは基本的に、何もかも不透明なやり方で運営されるブラックボックスと見なされている。資金は注ぎ込まれても、そこから生み出される価値は理解できない」とピック氏。
IT部門は自らを再編し、計画を立てて実行することに専念する働き方から離れて、ITサービスをビジネスパートナーへと拡張しなければならないと同氏は述べ、「テクノロジーをビジネスへと乗り入れることが望ましい」と指摘した。
ITサービスマネジメントは現代のビジネス需要に歩調を合わせることができないという点で、業界専門家の見方はおおむね一致している。米Gartnerのリサーチフェロー、スティーブ・プレンティス氏は「従来型のITの中で進化が起きている」と話す。ITはかつて着実なペースで管理され、進歩してきた。だがそのペースが速まっている。
「1年がライフタイムだ。古いアプローチはうまくいっていて、安定性につながっていた。だが今ではその古いシステムを稼働させながら、「iPhone」や「Galaxy S6」のアプリをサポートしなければならない。ほとんどの組織にとってそれは困難だ」(プレンティス氏)
その答えは、Gartnerのいう「バイモーダル思考」を取り入れることにある。「15年モノのメインフレームに不具合が生じているところへ、ユーザーが来て『Galaxy S5のファームウェアをアップグレードしたのだが』と相談されるかもしれない」(プレンティス氏)
後者ではIT部門がその場で考える必要に迫られる。「ユーザーはIT部門が問題を解決してくれることを期待している。ユーザーの気に入るような答えが出せなければ、そのユーザーはIT部門の価値を否定して、シャドーITを勢いづかせることになる」とプレンティス氏。
同様に、モノのインターネット(IoT)のサポートでは、技術サポートに関する新たな課題を突き付けられるだろう。
これは、IT部門が社内スタッフをサポートするやり方だけでなく、ITシステムにアクセスする顧客やビジネスパートナーにも影響を及ぼす課題だ。電子商取引サイトのヘルプデスクは、商品販売の専門知識で顧客の注文を手助けしている。だが、顧客がそのサイトへのアクセスに使っている機器の技術サポートを提供するためには、全く別の心構えが必要だ。例えばそのアプリは古いiPhoneや「Android」端末には対応できないかもしれない。
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