職員が使いたいIT環境をサポートするスウェーデン国立図書館「標準化された環境を採用する方が簡単だ。だが」

スウェーデン国立図書館は、職員のIT環境を統一した方が容易であるにもかかわらず、職員が使いたい環境をサポートすることにした。この決断を下したCIOは、他に数々の重要なプロジェクトを推進している。

2017年04月14日 08時00分 公開
[Eeva HaaramoComputer Weekly]
Computer Weekly

 スウェーデンの国立図書館(KB:Kungliga Biblioteket)でCIO(最高情報責任者)を務めるピーター・クランツ氏は常に自問している。“今の時代、どうすれば国の文化遺産を何十年後も利用できる形に保護しながら、より充実したサービスを国民に提供できるか”と。

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 クランツ氏がKB初のCIOに任命されたのは2013年。KBで大規模な再編成が行われ、KBのさまざまな部門のIT運用を1つのIT部門に統合した直後のことだった。以降、KBはデジタルサービスの相互運用性とユーザビリティの促進、データのオープン化推進に重点を置いてきた。

 クランツ氏は次のように語る。「KBは長年にわたって無料で情報を提供し、社会知識の育成に取り組んできた。国民に多くの情報を提供する方法を見据えながら、国民が事実に基づく議論を社会の中でもっと集中して行えるような方向に向かえばよいと考えていた」

 「KBは長い年月をかけて素晴らしい取り組みを行ってきた。オープンデータを取り扱い、ユーザビリティに関しても多くのことを成し遂げた。だが部門間やプロジェクト間のまとまりはなかった。それが今では、どのような目標をどのような方法で実現するというビジョンを共有できるようになっている」(同氏)

 クランツ氏がKBの仕事に魅力を感じたのは、355年の歴史を持つ組織に最新のIT運用を導入するという挑戦だった。同氏が最初に手掛けたのは、KBでのIT使用を調和が取れたものにすることだった。そのために、同氏は中核を成す一連の原則を適用した。つまり、部門の垣根を越えたチームを編成し、ユーザビリティを重視して、サービスの機能ではなく、効果を重視したのだ。

 この戦略の中で重要なのは、図書館の職員全員が標準化された同じ環境(端末やOSなど)で業務に取り組むという慣習を廃し、職員にとって柔軟性の高いIT環境を構築することにある。

 「標準化された環境を採用する方が簡単だ。だが、ユーザーが環境を管理できれば、より満足感が得られると分かっていた。使用する環境にこだわりのないユーザーに環境を用意するのは当然だが、別のOSや端末を使いたいというユーザーの声にも対応しようとしている」(クランツ氏)

 こうした取り組みは、ITシステムに負担を強いる。さまざまな環境の互換性を保つ必要があるためだ。だが、長い目で見ればシステムのユーザビリティを改善することになるとクランツ氏は言う。

 「多くの組織がこの方向を目指すことになるだろう。ユーザーは自宅で独自のコンピューティング環境を拡大させている。ユーザーはその環境に慣れているため、職場でもサポートが必要になる。公共機関では標準化された環境の時代が終わりに近づいている」(クランツ氏)

 スウェーデンの公共機関におけるITの展望をクランツ氏よりも把握している人はそれほど多くない。2007年以降、同氏はスウェーデンの電子政府代表団の一員として活動しており、国のIT担当大臣や国民フォーラムの議長に対し、ユーザビリティとアクセシビリティーについてアドバイスしてきた。同氏はデジタルサービスをもっと使いやすくすることに情熱を燃やしているのだ。

 「スウェーデン政府は全体として、10年前よりもユーザビリティの領域に大幅な改善が見られる。KBでも、今やユーザーエクスペリエンスの専門家を何人か雇用している。こうした専門家は、望んでいることをユーザーにただ尋ねるのではなく、ユーザー調査を実施してユーザーが必要とするものを見つけ出す方法を知っている」(クランツ氏)

根底にあるニーズ

 クランツ氏によると、ユーザーは自身が求めているものと、根底にある本当に必要なものをよく混同するという。

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