脱Microsoftプロジェクトを阻む政治的圧力Microsoft帝国の逆襲

Microsoftによるロックインから脱却すべく、各国でOSSへの移行プロジェクトが進められている。成功したプロジェクトがある一方で、Microsoftによる巻き返しや政争へ発展して前途が不透明なプロジェクトもある。

2017年07月14日 08時00分 公開
[Investigate EuropeComputer Weekly]
Computer Weekly

 Microsoftの支配に対する挑戦は、政府機関において「Microsoft Office」をオープンソースソフトウェア(OSS)の代替品に切り替えることから始まった。

Computer Weekly日本語版 7月5日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 7月5日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。

ボタンボタン

 今回はイタリア国防省、フランス国家憲兵隊の取り組みと、それらに対する圧力、ドイツで起こっている政治論争を紹介する(第1回は6月21日号に収録)。

ちゃっかり移行を進めているイタリア

 イタリアでは国防省が、OSSのOfficeスイート「LibreOffice」に移行するプロセスを2015年9月に開始した。2020年までに、同省で使用している10万台のマシンからMicrosoft Officeを削除するというのだから、これは平均的なタスクではない。同省ではこの施策によって、最大で2900万ユーロの歳費を節減できると見込んでいる。

 本誌Computer Weeklyは、イタリアのトリノで開催されたオープンソース関連のあるカンファレンス会場で、カミロ・シレオ氏へのインタビューを行った。シレオ氏はイタリア国防省で、オープンソースへの転換プロセスを推進してきた人物だ。

 シレオ氏は、自ら取り組んだデジタル移行プロジェクト「LibreDifesa」が成功したことをまずアピールし、続けて次のように語る。「われわれは、従来のMicrosoft Officeと現在のLibreOfficeについて、職員の利用法を比較し分析した。その結果、移行後も生産性は全く低下していないという結論に達した」

 シレオ氏は幸運にも、職員向けに行ったLibreOfficeのトレーニングを受講者負担なしで提供することができた。その実態調査を基に、LibreOfficeの推進に専念している非営利団体の「LibreItalia Association」は、イタリア陸軍の職員向けトレーニングを提供するためボランティアを派遣した。

 現時点ではまだ、LibreOfficeのファイル形式(ODF)はNATOが設定したセキュリティ基準の認証を受けていない。この認証はいずれ取得できるとシレオ氏は確信している。ただし実際に取得するまでの間、機密性の高い文書は従来通りMicrosoft Office形式で保存しなければならない。

 イタリア軍は現在もなお2万人分のMicrosoftライセンスを使用しているが、有効期限は2020年だ。その時期になれば、Microsoftがイタリア政府の国防分野の関係者に対して、激しいロビー活動を展開するだろうとシレオ氏は予測している。

秘密裏にオープンソースに移行する戦術を選んだフランス国家憲兵隊

 フランスの2大警察組織の1つである「国家憲兵隊」(Gendarmerie Nationale)は、イタリア以上に大胆なオープンソースプロジェクトに取り組んでいる。OSを「Windows」からOSSに切り替えるというのだ。

 フランスの各州警察が使用している7万2000台のコンピュータでは現在、「GendBuntu」(国家憲兵隊用Ubuntu)と「OpenOffice」が稼働している。2016年10月にフランス当局が入手した最新のデータによると、オープンソースプロジェクトを開始した2005年から2014年までの10年間で、移行によって2000万ユーロの歳費を節減したという。

 国家憲兵隊が2001年にOSSの利用に踏み切ったのは、経済的な理由からだった。2006年12月11日付の内部メモによると、国家憲兵隊はOSSへの移行によって、それまでMicrosoftに支払っていた年間約800万ユーロの経費を削減できると見積もった。

 しかしその移行には危険が伴った。Microsoftや他の政府機関からプロプライエタリなソフトウェアの利用を継続しろという圧力がかかることを恐れた国家憲兵隊は、移行プロジェクトがかなり進行するまで、外部には情報を漏らさないよう徹底的に配慮した。

独占体制への脅威

 先述の内部メモには次のような記述もある。「Microsoftにとって、当組織がLinuxを選択することは、同社の独占体制に対する新たな脅威となるだろう。従って状況が明らかになれば移行を阻止しようとしたり、国家憲兵隊の施策の信用を傷つけたりする動きが正当化される恐れがある」

 内部メモでは、外部からの干渉を受けて移行計画が混乱することを回避するため、「他言無用」で実施することを推奨していた。移行プロジェクトは「もはや後戻りできない段階に到達したときに」公表する予定だったと記されている。

 現時点で、移行はほぼ完了している。ただし、フランス内務省で相当の地位にありIT分野に詳しい職員が、匿名を条件に内情を明かしてくれた。

続きはComputer Weekly日本語版 7月5日号にて

本記事は抄訳版です。全文は、以下でダウンロード(無料)できます。


Computer Weekly日本語版 最近のバックナンバー

Computer Weekly日本語版 6月21日号 Microsoft帝国からの脱出

Computer Weekly日本語版 6月7日号 Bluetooth 5仕様の真意とは?

Computer Weekly日本語版 5月24日号 ブロックチェーンの意外な活用法


ITmedia マーケティング新着記事

news047.jpg

SASのCMOが語る マーケティング部門が社内の生成AI活用のけん引役に適している理由
データとアナリティクスの世界で半世紀近くにわたり知見を培ってきたSAS。同社のCMOに、...

news159.jpg

SALES ROBOTICSが「カスタマーサクセス支援サービス」を提供
SALES ROBOTICSは、カスタマーサクセスを実現する新サービスの提供を開始した。

news139.jpg

「Fortnite」を活用  朝日広告社がメタバース空間制作サービスとマーケティング支援を開始
朝日広告社は、人気ゲーム「Fortnite」に新たなゲームメタバース空間を公開した。また、...