Microsoftによるロックインから脱却すべく、各国でOSSへの移行プロジェクトが進められている。成功したプロジェクトがある一方で、Microsoftによる巻き返しや政争へ発展して前途が不透明なプロジェクトもある。
Microsoftの支配に対する挑戦は、政府機関において「Microsoft Office」をオープンソースソフトウェア(OSS)の代替品に切り替えることから始まった。
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今回はイタリア国防省、フランス国家憲兵隊の取り組みと、それらに対する圧力、ドイツで起こっている政治論争を紹介する(第1回は6月21日号に収録)。
イタリアでは国防省が、OSSのOfficeスイート「LibreOffice」に移行するプロセスを2015年9月に開始した。2020年までに、同省で使用している10万台のマシンからMicrosoft Officeを削除するというのだから、これは平均的なタスクではない。同省ではこの施策によって、最大で2900万ユーロの歳費を節減できると見込んでいる。
本誌Computer Weeklyは、イタリアのトリノで開催されたオープンソース関連のあるカンファレンス会場で、カミロ・シレオ氏へのインタビューを行った。シレオ氏はイタリア国防省で、オープンソースへの転換プロセスを推進してきた人物だ。
シレオ氏は、自ら取り組んだデジタル移行プロジェクト「LibreDifesa」が成功したことをまずアピールし、続けて次のように語る。「われわれは、従来のMicrosoft Officeと現在のLibreOfficeについて、職員の利用法を比較し分析した。その結果、移行後も生産性は全く低下していないという結論に達した」
シレオ氏は幸運にも、職員向けに行ったLibreOfficeのトレーニングを受講者負担なしで提供することができた。その実態調査を基に、LibreOfficeの推進に専念している非営利団体の「LibreItalia Association」は、イタリア陸軍の職員向けトレーニングを提供するためボランティアを派遣した。
現時点ではまだ、LibreOfficeのファイル形式(ODF)はNATOが設定したセキュリティ基準の認証を受けていない。この認証はいずれ取得できるとシレオ氏は確信している。ただし実際に取得するまでの間、機密性の高い文書は従来通りMicrosoft Office形式で保存しなければならない。
イタリア軍は現在もなお2万人分のMicrosoftライセンスを使用しているが、有効期限は2020年だ。その時期になれば、Microsoftがイタリア政府の国防分野の関係者に対して、激しいロビー活動を展開するだろうとシレオ氏は予測している。
フランスの2大警察組織の1つである「国家憲兵隊」(Gendarmerie Nationale)は、イタリア以上に大胆なオープンソースプロジェクトに取り組んでいる。OSを「Windows」からOSSに切り替えるというのだ。
フランスの各州警察が使用している7万2000台のコンピュータでは現在、「GendBuntu」(国家憲兵隊用Ubuntu)と「OpenOffice」が稼働している。2016年10月にフランス当局が入手した最新のデータによると、オープンソースプロジェクトを開始した2005年から2014年までの10年間で、移行によって2000万ユーロの歳費を節減したという。
国家憲兵隊が2001年にOSSの利用に踏み切ったのは、経済的な理由からだった。2006年12月11日付の内部メモによると、国家憲兵隊はOSSへの移行によって、それまでMicrosoftに支払っていた年間約800万ユーロの経費を削減できると見積もった。
しかしその移行には危険が伴った。Microsoftや他の政府機関からプロプライエタリなソフトウェアの利用を継続しろという圧力がかかることを恐れた国家憲兵隊は、移行プロジェクトがかなり進行するまで、外部には情報を漏らさないよう徹底的に配慮した。
先述の内部メモには次のような記述もある。「Microsoftにとって、当組織がLinuxを選択することは、同社の独占体制に対する新たな脅威となるだろう。従って状況が明らかになれば移行を阻止しようとしたり、国家憲兵隊の施策の信用を傷つけたりする動きが正当化される恐れがある」
内部メモでは、外部からの干渉を受けて移行計画が混乱することを回避するため、「他言無用」で実施することを推奨していた。移行プロジェクトは「もはや後戻りできない段階に到達したときに」公表する予定だったと記されている。
現時点で、移行はほぼ完了している。ただし、フランス内務省で相当の地位にありIT分野に詳しい職員が、匿名を条件に内情を明かしてくれた。
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