保険会社IAGが保有するデータは、1年間で80TBから2PBに増加した。この間に、データの量だけでなくストレージシステム、管理方法、クラウドなども大きく変化した。ストレージ戦略を見直すべき時がきたのだ。
大手保険会社Insurance Australia Group(IAG)が1年前に保管していたデータは80TB余りにすぎなかった。だがその量は毎月14TBずつ増加し、同社が管理するデータは2P(ペタ)Bバイトに達した。
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IAGのデータは文書、顧客との通話記録、無秩序な広がりを見せるモノのインターネット(IoT)ネットワークのデータや自動運転のテストデータなどで構成されている。これはまさにデータの「Volume(量)、Variety(多様性)、Velocity(発生速度や更新頻度)」の典型といえる。
Cisco Systemsの最新調査によると、全世界の年間インターネットトラフィック量は2016年には1.2Z(ゼタ)Bバイトだったが、2021年には3.3ZBに到達するという。個人の単位では、2016年は1カ月当たり13GBだったが、2021年にはこれが35GBに達すると見込まれている。
当然、こうしたデータの多くはコンシューマーデバイスやクラウドサービスに保管される。とはいえ、この調査が明らかにしている兆候はデータの増加速度だ。
IAGでデータおよび生産エンジニアリングとデータ運用の部門を率いるエディ・サタリー氏によると、使用方法や収集場所といったデータの性質も変化しているという。その結果、同氏がIAGで勤務した16カ月の間に、ストレージへのアプローチが大きく変化した。
「当社は、レガシーのストレージエリアネットワーク(SAN)を、商用/非商用のオープンソースストレージに移行した」とサタリー氏は言う。さらに、コモディティストレージとコンバージドストレージをソフトウェア定義ネットワーク(SDN)で利用することで、データプールの稼働速度が大幅に上がったとも補足する。
こうした速度や柔軟性の向上は、イノベーションだけでなく、突如急増する需要に対処するためにも不可欠だ。台風などの大きな天候異変が発生すると、平常時の4〜5倍のストレージ容量が必要になる場合があるとサタリー氏は説明する。こうした変動には、低コストで瞬時に対応できることが非常に重要になる。
パフォーマンス、データ量の増加、コストのバランスをうまく取ることも必要だ。同社はこうしたバランスを取るために、複数のホスティングプロバイダーを利用するOpenStackの共有クラスタを導入している。複数の層からなるストレージメディアを利用し、最上層にはフラッシュストレージを配置している。また、8TBのアーカイブ用ストレージもある。
「ストレージ環境にはバースティングを可能にするため25%のオーバーヘッドを見込んでいる。これは、四半期ごとに見直しを行う」とサタリー氏は言う。さらに、ストレージアーキテクチャを改良して、「完全な柔軟性を得た上で、5分の1のコストで4倍のパフォーマンス」を実現している。
調査会社Gartnerでストレージインフラとコンバージドテクノロジーの調査部長を務めるジュリア・パーマー氏は、ストレージサプライヤーが行うハイレベルなイノベーションにより、ストレージの問題が高度化していると指摘する。
だがこうしたイノベーションに伴い、プライマリーストレージとセカンダリーストレージに使用するテクノロジーや、さまざまな種類のデータに使用するテクノロジーが多様化し、複雑性も増している。その上、CIO(最高情報責任者)が求めるのはパフォーマンスを低下させずにデータの増加をサポートするテクノロジーだ。
基盤となるストレージメディアについては、パフォーマンスを重視する多くの企業がソリッドステートドライブ(SSD)を検討している。だが、サプライヤーの主張はともかく、ビジネスクリティカルなアプリケーションを実行できるほどSSDが安定しているかどうかは慎重に検討する必要がある。
オールフラッシュとSSDの売り上げは2020年まで毎年31%ずつ増加すると予測される。だが、一般的にレガシーアプリケーションの設計では、高速ストレージに対応するのはキャッシュソリューションぐらいだ。こうした設計がフラッシュ導入の妨げとなる。
パーマー氏は、依然として、「オールフラッシュ用にソフトウェアスタックを設計するのは大仕事」であることを挙げ、「フラッシュの導入はいまだに時期尚早だ」と言う。
Dell EMCのCTO(最高技術責任者)アーロン・パターソン氏は、さらに課題を挙げた。
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