2019年12月04日 08時00分 公開
特集/連載

新トレンドはオブジェクトストレージへの移行とオンプレミスへの回帰オンプレミスオブジェクトストレージという選択【前編】

ストレージ市場に新たなトレンドが生まれている。既に始まっているオブジェクトストレージへの移行に加え、クラウドからオンプレミスへの回帰が見られる。今何が起きているのか。

[Stephen Pritchard,Computer Weekly]

 クラウドサービスを根底で支えているのがオブジェクトストレージだ。「Dropbox」や「Facebook」のファイルシステム、「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)もこれを基盤としており、オブジェクトストレージは世界最大のストレージシステムとも言える。

 オブジェクト技術は巨大なパブリッククラウドを巡る課題、すなわちペタバイト規模のデータ量、高度に分散されたシステム、長期のデータ保存などの解決と関わっている。

 オブジェクトストレージは、速度よりも柔軟性に定評がある。インターネット接続は単純に言って、ローカルのフラッシュはもちろん、HDDにさえもかなわない。

 だが、オブジェクトストレージは主流に移行しつつあり、それに伴って企業のオンプレミスシステムに導入されるようになっている。

 IHS Markitのアナリスト、デニス・ハーン氏によると、オンプレミスオブジェクトストレージへの関心は、保存すべきデータが増え続けている企業のニーズによって高まっている。その大部分は、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)によって生成される大量のデータに起因する。だがオブジェクトストレージの用途はそれだけにとどまらない。

 「拡張性の向上やどこからでも利用できるアクセス性だけでなく、ストレージ管理コストの引き下げや地理横断的なデータ保護の向上につながる」とハーン氏は解説する。

オンプレミスへの移行

 クラウドベースのストレージシステムがオブジェクト技術を使っているのは、それが膨大な量の顧客データを保存でき、しかも顧客が求めるコストと安定性でそれを実現できる唯一の手段になりつつあるためだ。

 例えばAmazon S3は99.999999999%の耐久性をうたっている。ハーン氏が指摘する通り、企業は今、コスト削減と耐久性強化のために、データとメタデータを分離するオブジェクトストレージの柔軟性を活用している。

 当然ながら、オンプレミスのオブジェクトストレージをいち早く採用してきたのは、貴重なデータを超大量に保存している企業だった。

 早くから採用に踏み切ったのはメディア組織が多い。南アフリカのメディアサービス企業MediaCloud NetworksはObject Matrix製品を使って、顧客がクラウドベースのワークフローにアクセスし、ビデオコンテンツの編集とアーカイブに利用できるようにしている。コンシューマーオンラインビデオサービス企業のDailymotionは「Scality RING」を使って本番用とバックアップ用のビデオ35億本(30PB)を処理している。同社は今ではプライマリーのストレージ技術としてオブジェクトストレージを使うようになった。

 オブジェクトストレージを使う業界はメディアだけにとどまらない。英国ではTelent(telent Technology Services)が、ミッションクリティカルなデータサービスを防衛、運輸、司法などを含む業界に提供している。Telentが英国警察に提供するクラウドベースのデジタル証拠システムにはオブジェクトストレージが使われている。

 今のところ、それらはストレージニーズの極端な事例かもしれない。だがIHS Markitの予想では、企業のデータ量は年間で33%増える見通しだ。しかも、企業はオンプレミスかクラウドベースのストレージかの二者択一をしているわけではない。IHS Markitのハーン氏によると、双方が拡大している。

技術的ハードル

 オブジェクトストレージへの移行には課題もある。この技術をオンプレミスに移行すれば、クラウドストレージに関するレイテンシは縮小できるが、他の障壁は残る。

 調査会社Freeform Dynamicsのブライアン・ベッツ氏は言う。「オンプレミスオブジェクトストレージの最大の問題は、既存アプリケーションのほとんどがファイルまたはブロックストレージを前提としていることにある。オブジェクトストレージの開発者はゲートウェイやNASタイプのエミュレーションでそうしたニーズに対応しようとしてきたが、限定的な成功しか収めていない」

 「オブジェクトストレージがAmazon S3を中心に事実上の標準として融合し続ける中で、そしてクラウドのオブジェクトストレージを前提とした新しいアプリケーションが登場する中で、この状況は変わりつつある」。Amazon S3と相互運用できるアプリケーションであれば、社内でオブジェクトストレージを運用するのはずっと簡単になる。

 メディア保存やアーカイブなどのアプリケーションは、オブジェクトストレージにいち早く対応してきた。そうしうたアプリケーションは、単純にデータ量の多さのためにブロックやファイルを超えたITアーキテクチャに目を向ける必要に迫られている。少なくともアーカイブに関しては、安定性に比べてパフォーマンスの重要性が低い。

 実際のところ、データ量以外の理由でオブジェクト技術を必要とするアプリケーションはほとんど存在しない。

 「オブジェクトストレージを必要とする(ワークロードは)ほとんど存在しない」と語るのは、ストレージ付加価値リセラーTectradeの技術販売責任者イアン・リチャードソン氏。「オブジェクトストレージは一般的に、500TBから1PB以上の規模が求められる場合に有効な選択肢だ。この分野は他のシステムが限界に達しているか、製品ファミリーの最上級モデルを使う必要に迫られている」

 そこにまで達すると、複雑さや互換性の限界よりもオブジェクト技術の利点が勝るようになる。だがハイブリッドストレージに目を向ける組織、あるいは少なくともワークロードやデータをクラウドから出し入れできる能力に目を向ける組織が増える中で、オンプレミスオブジェクトストレージは合理的になっている。

 「ソフトウェア定義ストレージの『下敷き』としてのオブジェクトストレージが受け入れられるようになっている。その大部分はファイルやブロックの形態で消費される」とFreeform Dynamicsのベッツ氏は解説する。

 「例えばCephコミュニティーの内部から、CephFSやRBDの話が出ている(訳注)。だが当然ながら商用ベンダーもそれをやっており、ゲートウェイやエミュレーションに頼るのではなく、ネイティブなフロントエンドファイルやブロックアクセスをオブジェクトストアに追加している」(ベッツ氏)

訳注:Cephは分散ストレージソフトウェア。CephFSはオブジェクトベースの分散ファイルシステム。RBD(RADOS Block Device)はCephのオブジェクトをブロックデバイスとして提供する機能。

 このやり方であれば、オンプレミスであれオフプレミスであれ、オブジェクト技術は単なるもう一つのストレージツールになる。

後編(Computer Weekly日本語版 12月4日号掲載予定)では、オブジェクトストレージの主要サプライヤーとその製品、そしてオブジェクトストレージの事例を紹介する。

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