クラウドビッグ3のAWS、Azure、GCPはそれぞれ災害復旧のためのサービスを用意しているが、アプローチは全く異なる。
「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)はクラウド災害復旧(DR)のオプションも用意している。
クラウドDRが登場する前のDRは、DR用のサーバを二次データセンターで運用するか、DR専門企業のサービスを利用することを意味していた。だが、クラウドインスタンスならばWebブラウザとクレジットカードさえあればスピンアップできる。
とはいえ、各プロバイダーのアプローチは異なるので各社のサービスと独自インフラを理解する必要がある。各社のプラットフォームには長所も短所もある。
AzureのDRオプションは、大手3社の中で最も洗練されている。
「Azure Site Recovery」により、Azureのコンソールである「Azure Portal」を使って物理PCと仮想マシン(VM)、Azure VMを異なるAzureリージョンにレプリケートできる。
AzureはVMwareのVM、「Linux」および「Windows」の物理サーバをサポートし、これらをAzureインスタンスにレプリケート可能だ。顧客のローカルハードウェアで実行する「Azure Stack」のインスタンスのレプリケーションもサポートする。
VMをオンプレミスやセカンダリーサイトにレプリケートすることも可能だ。
Azureは非常にアグレッシブなRTO/RPOターゲットを提供する。「Hyper-V」はわずか30秒でリカバリーできる。
「Recovery Services vault」(訳注:日本では「Recovery Services コンテナー」)もAzureツールだ。これはAzureのリカバリーに使うデータと構成情報を保持する。LinuxとWindowsのVMで動作し、Azureのメインコンソールで管理される。
当然のことだが、AzureのDRサービスはMicrosoft製品環境に適している。だが他のプラットフォームのサポートも拡大している。
AWSは複数のDRサービスを提供する。もう少し正確に言うと、DR向けに構成可能なサービスを幾つか提供している。「CloudEndure」には専用のDRサービスもある。
DRの構成には、バックアップと復元、ウォームスタンバイ、パイロットライト、マルチサイト、などがある。バックアップと復元は、正確にはサービスというよりもツールだ。
AWSの最も基本レベルのDRはバックアップと復元だ。ユーザーはデータを「Amazon S3」(Simple Storage Service)にバックアップできる。テストや復元を目的にデータにアクセスする必要がある場合のみ、(有償の)「Amazon EC2」(Elastic Compute Cloud)のインスタンスを稼働させる必要がある。
ウォームスタンバイは運用環境の完全なコピーを作成することで機能し、常時稼働を確保する。
パイロットライトは、最小限のコアサービスだけをDR用として別のAWSリージョンで運用する方法だ。バックアップと復元よりも高速で、ウォームスタンバイよりも低コストだ。
マルチサイトは異なるAWSリージョン間でのアクティブ/アクティブバックアップを提供する。これにより、ダウンタイムはゼロ(ほぼゼロ)になる。問題は重複する環境を管理するコストだ。
CloudEndure DRは、物理サーバとVMに加えてクラウドインスタンスをバックアップできる点がマルチサイトと異なる。ただし、CloudEndureは従来のホットスタンバイシステムの運用ではない。どちらかといえば、このDR技術は低コストのステージング領域から「数分」でDRインスタンスを稼働状態にするものとAWSは説明している。
これはアクティブ/アクティブレプリケーションよりもコスト効率が高い。AWSによると、低コストのステージングではコストが95%削減されるだけでなく、OSとソフトウェアのライセンス料も削減されるという。
AWSとAzureとは異なり、Googleは特定のDR製品を用意していない。代わりに、独自のクラウドDR環境を作成したいITチーム向けに詳細なガイダンスを提供する。
Googleは「Cloud Deployment Manager」を使ってVMなどのリソースのプロビジョニングを自動化することを推奨している。そうすれば、オンプレミスのITに障害が発生するとGoogle環境が立ち上がる。
「Google Compute Engine」では、VMの構成を保存する「インスタンステンプレート」を作成できる。作成したテンプレートを使って、ユーザーは必要に応じてコンピューティングインスタンスを起動できる。インスタンスを予約することも可能だ。
その後、AWSのパイロットライトと同じ方法で、最小限のリソースで最小限のインスタンスを実行する。ダウンタイムを最小限に抑える必要がある場合は、サーバを永続的に実行することも可能だ。ただしコストは高くなる。
GCPには、現時点でAWSもAzureも提供していない機能が1つある。それがVMのライブマイグレーションだ。これは、ダウンタイムの許容度が低い企業に役立つ。
Googleは、ストレージのオプションとして「永続ディスク」も推奨している。永続ディスクならばコンピューティングインスタンスが削除されてもデータを保持し続けられる。増分バックアップやスナップショット用にも使える。だが、DR計画の一環として「Nearline Storage」「Coldline Storage」「Archive Storage」を選択することも可能だ。
GCPはパブリックなインターネットで機能する。Googleは、DR用にはコロケーション施設との接続に「Dedicated Interconnect」(訳注)を使用することを推奨する。
訳注:ユーザーのオンプレミスネットワークとGoogleネットワークを直接接続するサービス。
Googleが推奨するDRアーキテクチャの多くは、他のクラウドサービスからでも利用できる。Googleは独自のソリューションを提供するのではなく、ビルディングブロックをすぐに使えるソリューションにパッケージ化するパートナーと連携する。
Googleはオープンソース技術の強力な支持者でもあるため、オープンソースに慣れているITチームには魅力的かもしれない。
「ビッグスリー」のクラウドプロバイダーは、信頼性と低コストに定評があり魅力的な選択肢になる。ただし、オンプレミスまたは既存のクラウドシステムをレプリケートするインフラの設計に必要な作業を過小評価してはいけない。
現時点で、Azureは最も完全に形成されたDRサービスを用意している。コストとダウンタイムのリスクとのバランスを取ろうとしている企業には、AWSのCloudEndureが魅力的な代替策になる。
GCPとAWSのサービスは依然としてDIYを必要とする領域が非常に多い。DIYを望まないCIOはクラウドサービスのDRを重視するパートナーの利用を促されることになる。
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