2020年09月24日 08時00分 公開
特集/連載

サービスとしての災害復旧(DRaaS)の主な選択肢Computer Weekly製品ガイド

災害復旧の構築に際して、完全なセルフサービス型かアシスト型かマネージド型かの選択は、何を守る必要があるのか、そしてどんな社内リソースがあるのかにかかっている。

[Stephen Pritchard,Computer Weekly]
iStock.com/ndreyPopov

 企業が災害復旧(DR)を調達する方法は急速に変化している。この数年間のクラウドストレージの成長に伴い、企業がバックアップに利用できる膨大なリソースが生成された。

 IDCは、2018年のDRaaS(サービスとしてのDR)市場の規模を30億ドル(約3204億円)と推計し、2022年までに54億ドル(約5767億円)に成長すると予想している。その大部分はクラウドサービスにけん引される。

 企業がDRaaSに移行する理由は、その性能(アップタイムの増加や復旧時間の短縮)とコストにある。バックアップ専用のデータセンターをクラウドに入れ替えれば、クラウドがもたらすスケールメリットを享受できる。顧客が高額なITインフラや不動産を持つ必要はなくなり、IT部門は消費モデルのDRに移行できる。

 アナリストによると、この市場は断片化しつつある。DRを提供するクラウドサービス企業は2000社を超す(IDCの推計)。加えて従来型のDR市場にもITおよびソフトウェアプロバイダーが存在する。DRaaS専業のサプライヤーにはAcronis InternationalやZertoなどがあり、Amazon Web Services(AWS)は「CloudEndure Disaster Recovery」を、Microsoftは「Azure Site Recovery」を提供している。

DRの選択肢

 これほど大規模で多様な市場で全ての製品について調べるのは難しい。だがDRaaSは、主にセルフサービス型、アシスト型、マネージド型の3種類に分類できる。

 企業が求めるDRの種類と守るべきデータおよびアプリケーションに目を向けることは、選択肢を絞り込む一助になる。だが、DRaaSは主にバックアップの形態だということをIT責任者は認識する必要がある。これは完全に複製されたライブの運用環境ではない。

セルフサービス型DRaaS

 セルフサービス型DRaaSには、DRサービスのカスタマープランニング、購入、設定、メンテナンス、テストが含まれる。自動化のオプションは向上しているものの、DRを発動して復旧プロセスを実行するためには、一般的にITチームを必要とする。

 セルフサービス型DRaaSには、柔軟性とコスト的なメリットもある。企業は必要とする復旧サービスと、バックアップおよびリカバリーソフトウェア、さらにはローストレージの具体的な組み合わせを選択できる。セルフサービスモデルは混合環境にも対応可能で、複数のクラウドデータストアやアプリケーションベースの可用性およびDRツールを利用できる。

 セルフサービス型DRaaSでは、ITチームがビジネスニーズに合わせて最善の技術および予算を選択できる。ただし特注ソリューションを組み立てて、それを管理する十分なスキルのあるスタッフを確保する負担は大きい。セルフサービス型DRaaSは、既にDR戦略を管理し、DR資産を運用している大規模ITチームがある組織に適している。

アシスト型DRaaS

 アシスト型DRaaSは、DR計画の策定と運用に伴う管理の負担をある程度軽減する。DRaaS企業にはシステム設計を支援するコンサルタントや、DR機能を構築して場合によっては運用するエンジニアが含まれる。

 アシスト型DRaaSは社内にある既存の資産とスキルを活用することから、マネージド型DRaaSよりもコストは抑えられる。必要に応じて追加的なサポートも提供されるが、カスタマイズされたシステムや特注システムのサポートを受けるのは難しいかもしれない。

 組織の一部に堅実なDRシステムがある場合、アシスト型DRaaSであれば重複を避けられる。企業は単純に、新しいアプリケーションのサポートといった追加的な機能や既存の構成では不十分だとITチームが判断した場合などに料金を支払えば済む。

 アシスト型DRaaSは、比較的少人数の社内DRチームで全般的なコントロールと運用を維持できる。

マネージド型DRaaS

 マネージド型DRaaSは最も包括的であると同時に、最も高額な選択肢でもある。主なメリットとして、社内ITチームはDR業務を完全にサードパーティーに委託できる。これでスキルを持ったスタッフの負担が減る。一般的に、マネージド型DRaaSは他のDRオプションに比べて高額だが、包括的なサービスと安心感のための堅実な出費でもある。

 マネージド型DRaaSの中核を担うのがSLA(サービス品質保証契約)だ。ここで目標復旧時点(RPO)と目標復旧時間(RTO)を定めてコストを算定する。プロバイダーは導入とテスト、メンテナンスの責任を持つ。

 プラットフォームもプロバイダーが選定する。マネージド型DRaaSのもう一つのメリットは、このシステムの大部分が特定の技術に依存しないことにある。プロバイダーは、ローストレージのためにどのクラウドサービスを利用するのか、あるいはクラウド、自社のデータセンター、顧客のオンプレミスリソースのいずれを使うのかを決定する。

 だが、ITチームが全責任を引き渡すことはできない。ITチームは引き続きビジネスの運用ニーズを把握して、それをマネージド型DRaaSプロバイダーに伝える必要がある。ITシステムやビジネスニーズが変化した場合は、プロバイダーがそのことを知る必要がある。

どのDRサービスをいつ利用するか

 適切なDR方式の選定は、その会社のアプリケーションよりも社内の能力やリスクに対する姿勢に懸かっている。

 リスクを嫌い、高水準のアップタイムを求める組織は、マネージドサービスを選ぶ可能性が大きい。コストはかさむかもしれないが、それは営業経費の一環だ。

 Arcserveによると、DRサービスは事業部門が直接調達する傾向がある。その場合、管理者はマネージドサービスを選ぶことが多い。

 社内に高い能力を持つ組織は、管理の容易さと引き換えに柔軟性の高さとコストの低さを選ぶこともある。マネージド型DRaaSは非常に高水準の耐久性を実現するが、企業が全アプリケーションに対してそれほど高い水準を求めるわけではない。結果として、アシスト型やセルフサービス型のアプローチの方が現実的なこともある。

 社内に大型のデータセンターとサポート用のインフラがある企業、あるいはデータをサードパーティーに引き渡すことに関するセキュリティやプライバシー上の懸念がある組織にとっては、DRに対する社内アプローチが最も適切な選択肢になるかもしれない。

 プラットフォームが混在している組織はアシスト型を選ぶかもしれない。CIO(最高情報責任者)にとっての疑問の一つは、もしもSaaSがダウンした場合、ビジネスの運用をどう保証するのかという点だ。SaaSプロバイダーの社内SLAだけでは不十分かもしれない。アシスト型なら、ITチームがそのプラットフォームに詳しい専門家を使って自分たちのリソースを強化できる。

 だがIDCのフィル・グッドウィン氏によると、ITチームは未来にも目を向ける必要がある。将来的には高可用性サービスやアプリケーション可用性サービスがインフラ中心のDRに取って代わる可能性が大きい。

 このトレンドは、瞬時に近い復旧と「サービスとしての可用性」に向かうとアナリストは予想する。つまり、どんなソリューションであっても、現在のビジネスを確実に守れる堅牢(けんろう)性と新興技術を活用できる柔軟性を兼ね備える必要がある。

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