データより「人」が課題――意外に多い災害復旧の盲点災害復旧が失敗する6つの落とし穴【後編】

IT部門はシステムやデータの扱いには慣れており、災害時の復旧手順も心得ている。だが復旧時は「人」が重要なファクターになる可能性がある。これを見落とすと痛い目に遭う可能性がある。

2020年03月31日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 3月4日号掲載)では、災害復旧(DR)計画が陥りやすい2つの落とし穴を紹介した。

 後編では、残る4つの落とし穴とその解決策を解説する。

DRの落とし穴3:バックアップの保護の怠り

 ここ数年DRが再び検討課題として優先順位を上げている理由の一つは、マルウェア、特にランサムウェアにある。

 ランサムウェアからシステムを保護するには、運用システムとバックアップコピーの間にエアギャップを作るか、変更できないストレージ技術を使う必要がある。攻撃者が最初にデータバックアップを標的にすることを学習していることから、こうした対策がますます欠かせなくなっている。データをオフサイトに移動する比較的安価な方法として、テープの利用を見直すIT部門もある。

 残念なことに、DRチームにとってこれは必ずしも容易ではない。事業継続計画とRTOの短縮は、継続的なデータ保護に左右される。

 「だが、継続的にエアギャップを設けることはできない」とIDCのグッドウィン氏は警告する。クリーンなデータを得る代償として、12~24時間分のデータが失われることを覚悟する必要があるだろう。

DRの落とし穴4:指揮、制御、コミュニケーションの問題

 DRの実施においては連絡手段と指揮担当者を明確にすることが不可欠だ。

 DRを発動する担当者を定め、障害時に主要スタッフ全員が継続的にコミュニケーションを取れるようにすることも必要だ。通常は、DR計画の堅牢なテストを実施することで指揮と制御の不足が明らかになる。大企業は、危機的状況でのコミュニケーションを計画に含める必要がある。

 だが、DRと事業継続性に関する継続的なコミュニケーションも欠かせない。

 「ユーザーは恐らく、何もかもが即座に復旧するだろうという非現実的な期待を抱く。重圧が大きくなれば、事態はいとも簡単に悪い方向へと進んでいく」(ロック氏)

 コミュニケーションを明確にしておけば、どのデータやシステムをどの順序で、どれくらい早く復旧できるかという期待を管理しやすくなるだろうとIDCのグッドウィン氏は補足する。

DRの落とし穴5:人員の軽視

 当然ながら、IT部門がDR計画で重視するのはシステムとデータだ。だが効果的な計画には、主な事業拠点が被害を受けた場合の従業員の働き場所や働き方に対応することも必要だ。

 最初は、従業員が自宅で仕事をすることも可能かもしれない。だが、そうした状況をどの程度維持できるだろうか。

 デスクトップPCを必要とする従業員、家庭用回線やモバイル回線よりも広い帯域幅を必要とする従業員はいないだろうか。会議スペースやチームの身体的健康および精神的健全性についてはどうだろう。災害発生時に士気を保つことが、復旧計画の技術面と同じくらい重要になることも多い。

DRの落とし穴6:クラウドの見落とし

 オンラインバックアップサービスが増えていることもあり、クラウドを利用するとDRが大幅に簡単になる要素もある。

 だがハイブリッドクラウドやマルチクラウドでは、クラウドによってIT運用の複雑さが増すことがある。

 事業部門が独自にクラウドリソースを稼働させたりSaaSを購入したりすることも可能なため、IT部門がITインフラの全体像を把握できていないこともあり得る。DR計画にはクラウドサービスで障害が起きたときにやるべきことが盛り込まれているだろうか。

 Spiceworksの調査では、DR計画にクラウドサービスやホスト型サービスを含めているIT部門はわずか28%だったという。クラウドプロバイダー独自のバックアップ計画や事業継続計画に頼るだけでは不十分だ。

 例えばユーザーが誤ってデータを削除した場合、クラウドプロバイダーができることはほとんどない可能性もある。

 例えばクラウドアプリケーションにサービスを提供するオンサイトのデータストアで障害が起きるといった部分的な障害が発生した場合、データとアプリケーションが同じ場所にある従来のスタックよりも復旧が難しくなる恐れがある。

 徹底したテストを実施すれば、復旧計画におけるクラウドインフラの弱点も明らかになるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

市場調査・トレンド SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

ベンダー依存から脱却、柔軟かつ統合的なLinux環境を構築する方法とは?

エンタープライズ向け技術は、Linuxを中核に据え、オープンソースで動作しているものが多い。しかし近年、一部のベンダーが契約による囲い込みを強めており、ベンダーロックインのリスクが高まっている。安定したLinux運用を実現するには?

製品資料 株式会社野村総合研究所

運用効率化に欠かせないITSMツール、ノンカスタマイズが正解とは限らない?

ITサービスへの要求は年々増大しており、その対応を手作業でカバーするには限界がある。そこで導入されるのがITSMツールだが、特に自動化機能には注意が必要だ。自社に適した運用自動化や作業効率化を実現できるのか、しっかり吟味したい。

製品レビュー 株式会社クレオ

現場でカスタマイズ可能なITシステム、コストと時間をかけずに実現する方法とは

業務効率を高めて生産性を向上させるために、多くの企業がITシステムの導入を進めている。しかし、自社の業務に合わないITシステムを導入してしまっては、逆に生産性が低下する可能性も高い。この問題をどう解決すればよいのだろうか。

製品レビュー グーグル合同会社

重要なエンドポイントを守る、Chromeブラウザを企業向けに安全性を強化する方法

世界中で広く利用されているChromeブラウザは、業務における重要なエンドポイントとなっているため、強固なセキュリティが必要となる。そこでChromeブラウザを起点に、企業が安全にWebへのアクセスポイントを確立する方法を紹介する。

製品資料 グーグル合同会社

Chromeの拡張機能:企業における今求められる管理戦略とは

Google Chromeの拡張機能は生産性の向上に不可欠な機能であり、ユーザーが独自にインストールできる一方、IT管理者を悩ませている。ユーザーデータを保護するためにも、効率的な運用・監視が求められるが、どのように実現すればよいのか。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

繧「繧ッ繧サ繧ケ繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー

2025/05/11 UPDATE

  1. Windows縺ョ縲後き繝シ繝阪Ν縲阪→縺ッ菴輔°�溘€€縺�∪縺輔i閨槭¢縺ェ縺ОS縺ョ窶懷渕譛ャ縺ョ蝓コ窶�
  2. 縺ゅk縺ッ縺壹�縺ェ縺�€碁㍽濶ッPC縲阪r遉セ蜀�ロ繝�ヨ繝ッ繝シ繧ッ縺九i縺ゅ�繧雁�縺吮€懊%繧後□縺代�譁ケ豕補€�
  3. 縲係indows縲阪�ISO繝輔ぃ繧、繝ォ繧貞�謇九〒縺阪k窶懈э螟悶↑邨瑚キッ窶昴→縺ッ��
  4. 縺ゅ▲縺ヲ縺ッ縺ェ繧峨↑縺�€梧悴謇ソ隱阪�PC縲阪′遉セ蜀�ロ繝�ヨ繝ッ繝シ繧ッ縺ォ邏帙l霎シ繧€窶懈$繧阪@縺�炊逕ア窶�
  5. Windows縲後Ξ繧ク繧ケ繝医Μ謗�勁縲阪�譛ャ蠖薙�蜉ケ譫懊→縺ッ��
  6. 縲係indows 11縲咲ァサ陦後↓證鈴峇繧ゅ€€PC蟶ょ�エ繧呈昭繧九′縺吮€憺未遞弱�陦晄茶窶�
  7. ThinkPad縺ョ襍、縺�€後ヨ繝ゥ繝�け繝昴う繝ウ繝医€阪�縺ェ縺懈�縺輔l縲√↑縺應ク�ココ蜿励¢縺励↑縺��縺具シ�
  8. Windows 11縺梧ーク邯壹Λ繧、繧サ繝ウ繧ケ繧偵↑縺上@縺ヲ縲梧ッ取怦隱イ驥大梛OS縲阪↓逕溘∪繧悟、峨o繧倶コ域─
  9. 縲景Pad縺ァ繧8indows縺御スソ縺医k縲阪�縺ッWindows 365縺�縺代§繧�↑縺�€€隨ャ莠後�謇九���
  10. Windows縲御ソョ蠕ゥ繧、繝ウ繧ケ繝医�繝ォ縲阪€後け繝ェ繝シ繝ウ繧、繝ウ繧ケ繝医�繝ォ縲阪�驕輔>縺ィ繝医Λ繝悶Ν蟇セ蜃ヲ豕�

データより「人」が課題――意外に多い災害復旧の盲点:災害復旧が失敗する6つの落とし穴【後編】 - TechTargetジャパン システム運用管理 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。