テープの無視できないメリットと残念なデメリットクラウド対テープ【前編】

テープも進化を続けており、他のメディアにはない無視できない利点も多い。一方で解決し難い弱点もあり、テープでは不適切な用途も出てきた。まずはテープのメリット/デメリットを再確認しよう。

2019年12月09日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 テープはデータストレージ界の「マーク・トウェイン」だ。「テープは死んだ」という報道は明らかに誇張されている(訳注)。

訳注:マーク・トウェインは生前、新聞に死亡記事を掲載されたことがある。それに対してトウェインは「The report of my death was an exaggeration(私が死んだという報道は誇張である)」と発表した。英Computer Weeklyの原文(reports of its death are certainly exaggerated)はこれをもじっている。

 テープにはまだまだ役割がある。バックアップとアーカイブにおける実証済みの技術であることだけが理由ではない。テープには他のメディアとは一線を画す特性がある。データをクラウドに移行する企業が増えても、それは変わらない。

 磁気テープの歴史は1950年代までさかのぼる。そして今でもデータのバックアップ、復旧、アーカイブの重要な要素であり続けている。こうした用途では、オフラインストレージであることがデメリットではなくメリットになる。

 テープはメディア自体が軽量で、HDDよりも輸送中の堅牢(けんろう)さに優れている。そのためオフラインストレージには最適だ。テープの動作はデータが読み書きされるメカニズムとは切り離されている。つまり自然な「空隙」が生まれる。

 ストレージと災害復旧の専門家にテープが支持され続ける理由の一つが、この空隙だ。データストアが完全に分離されていれば、コードエラーが引き起こす障害やアプリケーションによるその他の問題からの回復力が高くなる。

 ランサムウェアからの保護を大幅に強化できるため、テープに目を向ける企業も増えている。オンラインシステムやニアラインシステムは、運用システムを標的とするランサムウェアに対して脆弱(ぜいじゃく)だ。テープストレージを適切に管理すれば、ランサムウェアによる汚染を避けられるだろう。

コストの優位性

 コストもテープのメリットの一つだ。HDDとSSDの価格は下落の一途をたどり、特にHDDの容量は現時点で1ドライブ当たり16TBに達している。ところがテープストレージは、ユーザーがカートリッジを管理/保管する堅牢なシステムさえあれば論理上の制限はない。現在、ほとんどの企業が使用しているのはLTOベースのテープだ。

 テープシステムが(特に中小企業にとって)比較的高価ではあることは変わらないが、HDDベースのアレイよりも容量追加の増分コストははるかに低い。最新世代のLTO-8テープの容量は12TBで、圧縮によって30TBまで拡張される。4sl ConsultingのCEO兼ストレージコンサルタントのバーナビー・モート氏によると、これは1GB当たり約0.4ペンスに換算されるという。

 テープドライブをいったん購入すれば、メディアのコストは低くなる。ランニングコストもテープにとって有利な要素だ。HDDベースやSSDベースのシステムは電源と冷却を常時必要とする。テープを長持ちさせるには温度と湿度が制御された環境が必要だが、オフィス内に保管しておくことも可能だ。

 このように生涯コストが低いため、テープは金融サービス、石油、ガス、調査、メディアなど多岐にわたる業界でデータの長期保管やアーカイブに適している。だがそれにもかかわらず、アーカイブストレージとしてクラウドを検討する企業が増えている。

テープの問題点

 テープにはデメリットもある。CIO(最高情報責任者)が別のメディアを検討する理由はそのデメリットにある。IDCでリサーチ部門のディレクターを務めるフィル・グッドウィン氏が指摘するように、テープバックアップは手動のプロセスになる。「ロード/アンロードが人手に依存する上、テープには紛失、破損、摩耗の恐れがある」と同氏は警告する。サプライヤーは自動化されたテープライブラリ(「テープジュークボックス」とも呼ばれる)を用意しているが、高価である上に機械的だ。

 自動化により、テープはニアラインストレージへと変化する。これが適しているのは時折アクセスするデータを長期間保持する場合だ。または大量の連続した情報(放送業界のビデオファイル、科学の研究データなど)の保存にも適している。例えばCERNのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)のデータはテープに保存される。だがテープライブラリであっても手動での管理が必要だ。

 そしてテープは遅い。LTO-8テープの読み取り速度は非圧縮データで360Mbpsとまずまずで、これは7200rpmのHDDに匹敵する。だがSSDベースのストレージよりもはるかに遅い。その上、この速度にはカートリッジ交換にかかる時間が含まれていない。

 LTO-8テープはコンプライアンスの重要な要件であるアーカイブ、そしてデータ保護を目的としたWORM(write once read many)に対応させることもできる。しかしバックアップと復元の用途には遅過ぎる場合がある。

 テープはさまざまな利点を持つものの、厳しさを増す目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)の達成には苦戦する可能性がある。テープライブラリはアーカイブ済みのデータを効率的に取得できる。だがテープから企業のシステム全体を復元するとなれば、恐らく長時間オフラインになる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

市場調査・トレンド SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

ベンダー依存から脱却、柔軟かつ統合的なLinux環境を構築する方法とは?

エンタープライズ向け技術は、Linuxを中核に据え、オープンソースで動作しているものが多い。しかし近年、一部のベンダーが契約による囲い込みを強めており、ベンダーロックインのリスクが高まっている。安定したLinux運用を実現するには?

製品資料 株式会社野村総合研究所

運用効率化に欠かせないITSMツール、ノンカスタマイズが正解とは限らない?

ITサービスへの要求は年々増大しており、その対応を手作業でカバーするには限界がある。そこで導入されるのがITSMツールだが、特に自動化機能には注意が必要だ。自社に適した運用自動化や作業効率化を実現できるのか、しっかり吟味したい。

製品レビュー 株式会社クレオ

現場でカスタマイズ可能なITシステム、コストと時間をかけずに実現する方法とは

業務効率を高めて生産性を向上させるために、多くの企業がITシステムの導入を進めている。しかし、自社の業務に合わないITシステムを導入してしまっては、逆に生産性が低下する可能性も高い。この問題をどう解決すればよいのだろうか。

製品レビュー グーグル合同会社

重要なエンドポイントを守る、Chromeブラウザを企業向けに安全性を強化する方法

世界中で広く利用されているChromeブラウザは、業務における重要なエンドポイントとなっているため、強固なセキュリティが必要となる。そこでChromeブラウザを起点に、企業が安全にWebへのアクセスポイントを確立する方法を紹介する。

製品資料 グーグル合同会社

Chromeの拡張機能:企業における今求められる管理戦略とは

Google Chromeの拡張機能は生産性の向上に不可欠な機能であり、ユーザーが独自にインストールできる一方、IT管理者を悩ませている。ユーザーデータを保護するためにも、効率的な運用・監視が求められるが、どのように実現すればよいのか。

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

郢ァ�「郢ァ�ッ郢ァ�サ郢ァ�ケ郢晢スゥ郢晢スウ郢ァ�ュ郢晢スウ郢ァ�ー

2025/05/11 UPDATE

  1. 邵コ繧�ス狗クコ�ッ邵コ螢ケ�ス邵コ�ェ邵コ�スツ€遒√鎖豼カ�ッPC邵イ髦ェ�帝♂�セ陷€�ス繝ュ郢晢ソス繝ィ郢晢スッ郢晢スシ郢ァ�ッ邵コ荵晢ス臥クコ繧�ソス郢ァ髮�ソス邵コ蜷ョツ€諛奇シ�ケァ蠕娯味邵コ莉」�ス隴�スケ雎戊」慊€�ス
  2. Windows邵コ�ョ邵イ蠕後″郢晢スシ郢晞亂ホ晉クイ髦ェ竊堤クコ�ッ闖エ霈板ー�ス貅伉€ツ€邵コ�ス竏ェ邵コ霈費ス蛾蜜讒ュ��邵コ�ェ邵コミ朶邵コ�ョ遯カ諛キ貂戊ュ幢スャ邵コ�ョ陜難スコ遯カ�ス
  3. 邵イ菫Jndows邵イ髦ェ�スISO郢晁シ斐<郢ァ�、郢晢スォ郢ァ雋橸ソス隰�ケ昴€堤クコ髦ェ�狗ェカ諛尉崎棔謔カ竊鷹お迹夲スキ�ッ遯カ譏エ竊堤クコ�ッ�ス�ス
  4. 邵コ繧�夢邵コ�ヲ邵コ�ッ邵コ�ェ郢ァ蟲ィ竊醍クコ�スツ€譴ァ謔エ隰�スソ髫ア髦ェ�スPC邵イ髦ェ窶イ驕会スセ陷€�ス繝ュ郢晢ソス繝ィ郢晢スッ郢晢スシ郢ァ�ッ邵コ�ォ驍丞ク呻ス碁恷�シ郢ァツ€遯カ諛茨シ�ケァ髦ェ��邵コ�ス轤企€包スア遯カ�ス
  5. Windows邵イ蠕湖樒ケァ�ク郢ァ�ケ郢晏現ホ懆ャ暦ソス蜍∫クイ髦ェ�ス隴幢スャ陟冶侭�ス陷会スケ隴ォ諛岩�邵コ�ッ�ス�ス
  6. 邵イ菫Jndows 11邵イ蜥イ�ァ�サ髯ヲ蠕娯�隴蛾斡蟲�ケァ繧�€ツ€PC陝カ繧�ソス�エ郢ァ蜻域亊郢ァ荵昶€イ邵コ蜷ョツ€諞コ譛ェ驕槫シア�ス髯ヲ譎�幻遯カ�ス
  7. 邵イ譎ッPad邵コ�ァ郢ァ�亙ndows邵コ蠕。�ス�ソ邵コ蛹サ�狗クイ髦ェ�ス邵コ�ッWindows 365邵コ�ス邵コ莉」ツァ郢ァ�ス竊醍クコ�スツ€ツ€髫ィ�ャ闔�蠕鯉ソス隰�ケ晢ソス�ス�ス
  8. Windows 11邵コ譴ァ�ー�ク驍ッ螢ケホ帷ケァ�、郢ァ�サ郢晢スウ郢ァ�ケ郢ァ蛛オ竊醍クコ荳奇シ�邵コ�ヲ邵イ譴ァ�ッ蜿匁€ヲ髫ア�イ鬩・螟ァ譴娑S邵イ髦ェ竊馴€墓コ倪穐郢ァ謔滂ス、蟲ィ�冗ケァ蛟カ�コ蝓溪楳
  9. ThinkPad邵コ�ョ隘搾ス、邵コ�スツ€蠕後Κ郢晢スゥ郢晢ソス縺醍ケ晄亢縺�ケ晢スウ郢晏現ツ€髦ェ�ス邵コ�ェ邵コ諛茨ソス邵コ霈費ス檎クイ竏壺�邵コ諛会スク�ス�コ�コ陷ソ蜉ア��邵コ蜉ア竊醍クコ�ス�ス邵コ蜈キ�シ�ス
  10. Windows邵イ蠕。�ソ�ョ陟包スゥ郢ァ�、郢晢スウ郢ァ�ケ郢晏現�ス郢晢スォ邵イ髦ェツ€蠕後¢郢晢スェ郢晢スシ郢晢スウ郢ァ�、郢晢スウ郢ァ�ケ郢晏現�ス郢晢スォ邵イ髦ェ�ス鬩戊シ費シ樒クコ�ィ郢晏現ホ帷ケ晄じホ晁汞�セ陷�スヲ雎包ソス

テープの無視できないメリットと残念なデメリット:クラウド対テープ【前編】 - TechTargetジャパン システム運用管理 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

TechTarget鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ク鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�」鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス雜」�ス�ヲ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。