テープも進化を続けており、他のメディアにはない無視できない利点も多い。一方で解決し難い弱点もあり、テープでは不適切な用途も出てきた。まずはテープのメリット/デメリットを再確認しよう。
テープはデータストレージ界の「マーク・トウェイン」だ。「テープは死んだ」という報道は明らかに誇張されている(訳注)。
訳注:マーク・トウェインは生前、新聞に死亡記事を掲載されたことがある。それに対してトウェインは「The report of my death was an exaggeration(私が死んだという報道は誇張である)」と発表した。英Computer Weeklyの原文(reports of its death are certainly exaggerated)はこれをもじっている。
テープにはまだまだ役割がある。バックアップとアーカイブにおける実証済みの技術であることだけが理由ではない。テープには他のメディアとは一線を画す特性がある。データをクラウドに移行する企業が増えても、それは変わらない。
磁気テープの歴史は1950年代までさかのぼる。そして今でもデータのバックアップ、復旧、アーカイブの重要な要素であり続けている。こうした用途では、オフラインストレージであることがデメリットではなくメリットになる。
テープはメディア自体が軽量で、HDDよりも輸送中の堅牢(けんろう)さに優れている。そのためオフラインストレージには最適だ。テープの動作はデータが読み書きされるメカニズムとは切り離されている。つまり自然な「空隙」が生まれる。
ストレージと災害復旧の専門家にテープが支持され続ける理由の一つが、この空隙だ。データストアが完全に分離されていれば、コードエラーが引き起こす障害やアプリケーションによるその他の問題からの回復力が高くなる。
ランサムウェアからの保護を大幅に強化できるため、テープに目を向ける企業も増えている。オンラインシステムやニアラインシステムは、運用システムを標的とするランサムウェアに対して脆弱(ぜいじゃく)だ。テープストレージを適切に管理すれば、ランサムウェアによる汚染を避けられるだろう。
コストもテープのメリットの一つだ。HDDとSSDの価格は下落の一途をたどり、特にHDDの容量は現時点で1ドライブ当たり16TBに達している。ところがテープストレージは、ユーザーがカートリッジを管理/保管する堅牢なシステムさえあれば論理上の制限はない。現在、ほとんどの企業が使用しているのはLTOベースのテープだ。
テープシステムが(特に中小企業にとって)比較的高価ではあることは変わらないが、HDDベースのアレイよりも容量追加の増分コストははるかに低い。最新世代のLTO-8テープの容量は12TBで、圧縮によって30TBまで拡張される。4sl ConsultingのCEO兼ストレージコンサルタントのバーナビー・モート氏によると、これは1GB当たり約0.4ペンスに換算されるという。
テープドライブをいったん購入すれば、メディアのコストは低くなる。ランニングコストもテープにとって有利な要素だ。HDDベースやSSDベースのシステムは電源と冷却を常時必要とする。テープを長持ちさせるには温度と湿度が制御された環境が必要だが、オフィス内に保管しておくことも可能だ。
このように生涯コストが低いため、テープは金融サービス、石油、ガス、調査、メディアなど多岐にわたる業界でデータの長期保管やアーカイブに適している。だがそれにもかかわらず、アーカイブストレージとしてクラウドを検討する企業が増えている。
テープにはデメリットもある。CIO(最高情報責任者)が別のメディアを検討する理由はそのデメリットにある。IDCでリサーチ部門のディレクターを務めるフィル・グッドウィン氏が指摘するように、テープバックアップは手動のプロセスになる。「ロード/アンロードが人手に依存する上、テープには紛失、破損、摩耗の恐れがある」と同氏は警告する。サプライヤーは自動化されたテープライブラリ(「テープジュークボックス」とも呼ばれる)を用意しているが、高価である上に機械的だ。
自動化により、テープはニアラインストレージへと変化する。これが適しているのは時折アクセスするデータを長期間保持する場合だ。または大量の連続した情報(放送業界のビデオファイル、科学の研究データなど)の保存にも適している。例えばCERNのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)のデータはテープに保存される。だがテープライブラリであっても手動での管理が必要だ。
そしてテープは遅い。LTO-8テープの読み取り速度は非圧縮データで360Mbpsとまずまずで、これは7200rpmのHDDに匹敵する。だがSSDベースのストレージよりもはるかに遅い。その上、この速度にはカートリッジ交換にかかる時間が含まれていない。
LTO-8テープはコンプライアンスの重要な要件であるアーカイブ、そしてデータ保護を目的としたWORM(write once read many)に対応させることもできる。しかしバックアップと復元の用途には遅過ぎる場合がある。
テープはさまざまな利点を持つものの、厳しさを増す目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)の達成には苦戦する可能性がある。テープライブラリはアーカイブ済みのデータを効率的に取得できる。だがテープから企業のシステム全体を復元するとなれば、恐らく長時間オフラインになる。
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