レポートと専門家の見解を紹介
攻撃者が集う闇市場「ダークWeb」では誰が何をやりとりしているのか?
セキュリティベンダーによる調査レポートで、ダークWebのフォーラムサイトの実態が明らかになった。誰が参加し、どのようなやりとりがなされているのか。
通常の手段ではアクセスできない「ダークWeb」のサイバー攻撃フォーラムサイトに寄せられる投稿の9割は、攻撃者ではなく、サイバー攻撃サービスを探している人による。これは産業向けセキュリティベンダーPositive Technologiesの調査で明らかになった事実だ。
明らかになった闇市場「ダークWeb」の実態
Positive Technologiesは、2021年2月に発表したレポート「Custom Hacking Services」で、「ダークWebで活発なフォーラムサイト10件」を公表し、これら10件のフォーラムサイトを調査した。同レポートは調査対象のフォーラムサイト自体を名指しせずに「Webサイトへの攻撃、データベースの売買、Webサーバへのアクセスといったサービスを提供している」フォーラムサイトだと説明する。レポートによると、これらのフォーラムサイトに登録しているアカウントの総数は800万件以上、作成されたトピックの総数は700万件以上、投稿の総数は8000万件以上に上る。
今回調査対象となったフォーラムサイトに登録しているアカウントの内訳は以下の通りだ。
- 90%:攻撃サービスの利用希望者
- 7%:攻撃サービスの販売者
- 2%:攻撃プログラムの販売者
- 1%:攻撃の協力者を探している人
これらのフォーラムサイトで提供されているサービスの信用性について、Positive Technologiesでシニアサイバーセキュリティアナリストを務めるバディム・ソロビョフ氏は「投稿の信頼性を確認するのは難しい」と述べる。ダークWebは違法な攻撃サービスや違法サービスの広告を提供する人が集まる。そのため「匿名性が何よりも優先される」というのがソロビョフ氏の考えだ。「匿名なのをいいことに他の人をだまそうとする人もいる。このため、ダークWebで提供される攻撃サービスを100%信頼することは困難だ」(同氏)
Webサイト攻撃への関心
Positive Technologiesはレポートで「2020年3月以降、Webサイトを狙う攻撃への関心が急速に高まった」と指摘する。一因として挙げるのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だ。世界保健機関(WHO)は同月にCOVID-19のパンデミック(世界的大流行)を宣言した。「この状況に伴ってインターネットでビジネスをする企業が増加したため、攻撃者はそれを狙うようになった」とレポートは説明する。
「ダークWebの実態」は本当につかめるのか
Positive TechnologiesのレポートはダークWebのフォーラムサイトの実態を明らかにした。ただしダークWebが匿名性に支えられていることを考えると、ダークWebの全貌を徹底的に暴くことは難しいだろう。「『調査で参照した広告のうち幾つが合法なのか』『800万件のアカウントは重複を除くと何人のエンドユーザー、ひいては何人の生身の人間が登録したものなのか』を把握するのは困難だ」とソロビョフ氏は言う。ダークWebで攻撃サービスを提供する人や攻撃サービスを探す人と話し、正体を確認しなければ「ダークWebでどんな人が攻撃サービスを利用しているのか」「目的は何か」を明らかにすることはほぼ不可能だ。
一方800万件という数字は、近年ダークWebに膨大なエンドユーザーが流れ込んだことを示すものだと言える。著述家でダークWebを長年調査してきたアイリーン・オームズビー氏は、ダークWebが時間とともにいかに“退化”したかを論じる。オームズビー氏によれば、以前のダークWebは、主にサイファーパンク(サイバー空間での個人主義を重視し、プライバシーを守るため強力な暗号化技術の使用を支持する人)が構成する小規模なコミュニティーで、もっと健全で高度な議論が交わされていた。だが今は「ありとあらゆる人がダークWebに入り込んでいる」と同氏は述べる。
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