「古いmacOS」を使うのは“自己責任”? 専門家がAppleのパッチ配布姿勢に苦言Appleの脆弱性への姿勢に疑問の声【後編】

同じ「macOS」の脆弱性なのに、以前のバージョンのmacOSへのパッチ配布が後回しに――。こうしたAppleの姿勢に、セキュリティベンダーMalwarebytesが苦言を呈する。

2022年01月24日 05時00分 公開
[Alexander CulafiTechTarget]

関連キーワード

Apple | セキュリティ | 脆弱性対策 | パッチ


 MalwarebytesでAppleのクライアントデバイス「Mac」およびモバイルデバイス分野の担当ディレクターを務めるトーマス・リード氏の説明によれば、AppleがクライアントOS「macOS Big Sur」における脆弱(ぜいじゃく)性「CVE-2021-30869」を修正してから約7カ月間、同社は以前のバージョンである「macOS Catalina」の同脆弱性を修正しなかった。CVE-2021-30869は、AppleのクライアントOS「macOS」が採用するカーネル(OSの中核プログラム)「XNU」の脆弱性だ。

 2021年4月開催のセキュリティカンファレンス「Zer0con」では、セキュリティ研究者がCVE-2021-30869を詳細に解説した。「それにもかかわらず、パッチは未配布のままだった」とリード氏は説明。「攻撃者は攻撃活動を検出されることなく、macOS Catalinaを利用する人を狙うことができた」と問題を指摘する。

 Appleは2021年2月にmacOS Big Surのバージョン11.2を公開した当初、CVE-2021-30869の修正をリリースノートに記載しなかった。CVE-2021-30869を修正したことをリリースノートに追記したのは、macOS Catalina向けのCVE-2021-30869修正パッチを公開した2021年9月だった。

古いmacOSを使うのは“自己責任”か Appleへの不信感

 こうしたAppleの行動に対して、リード氏は「非常に不審に思う」と述べる。その理由についてリード氏は、以下の2つの可能性を挙げる。

  • Appleは「CVE-2021-30869はmacOS Catalinaで修正する必要がある」ことを以前から知っていた
  • Appleは「2021年2月に修正したmacOS Big Surの脆弱性と、CVE-2021-30869が同じだとすぐ見抜いた」ことを示唆しようとしていた

 「macOS Catalinaの修正が遅れたことは、『macOSの最新バージョンの修正に関してのみAppleを信頼できる』ということだ」とリード氏は話す。2021年11月時点で、macOSの最新メジャーバージョンは「macOS Monterey」だ。「あなたが古いmacOSを使っている場合、それは自己責任ということになる」と同氏は指摘する。

 Appleのセキュリティに関する動向は過去にもやり玉に挙げられた。米TechTargetがAppleに不満を抱える複数のバグハンター(脆弱性を探し出し、バグ報奨金プログラムに報告するセキュリティ研究者)に取材したところ、「Appleはコミュニケーションが不十分で、セキュリティ研究者を適切に評価していない」との批判があった。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

狙うは「銀髪経済」 中国でアクティブシニア事業を展開する企業とマイクロアドが合弁会社を設立
マイクロアドは中国の上海東犁と合弁会社を設立。中国ビジネスの拡大を狙う日本企業のプ...

news068.jpg

社会人1年目と2年目の意識調査2024 「出世したいと思わない」社会人1年生は44%、2年生は53%
ソニー生命保険が毎年実施している「社会人1年目と2年目の意識調査」の2024年版の結果です。

news202.jpg

KARTEに欲しい機能をAIの支援の下で開発 プレイドが「KARTE Craft」の一般提供を開始
サーバレスでKARTEに欲しい機能を、AIの支援の下で開発できる。