AI技術はビジネスにさまざまなメリットをもたらす半面、リスクを内包する。例えば、「ChatGPT」への言及が理由で株価が急落した企業がある。何が問題だったのか。
オンラインの宿題サポートなど学生向けの教育サービスを提供するCheggは、2023年5月1日(現地時間)に、2023年度第1四半期(1月〜3月)の決算説明会を開催。同日、同社の株価は一時38%暴落した。背景には、同社のCEOダン・ローゼンズバイク氏が述べた、AI(人工知能)ベンダーOpenAIのAIチャットbot「ChatGPT」に関する言及がある。
ローゼンズバイク氏は説明会で、「ChatGPTの台頭は、当社が提供する教育サービスの新規登録率に影響を与える可能性がある」と語った。この発言は、ChatGPTがCheggのビジネスを危機にさらすのだという印象を投資家に与えた。この出来事を受けて、経済紙Financial Timesは、生成AIがビジネスに与え得る悪影響について懸念を表明した上場企業はCheggが初めてだと指摘した。
企業の経営者の大半は、「より良い顧客体験(CX)や業務改善を実現するために高度なAI技術を導入したい」と考える。基盤モデルの利用が商業的成功につながる可能性を見込み、AI技術を積極的に採用する企業も存在する。
一方でCheggのように、AI技術の進歩によって市場が混乱したり、自社の価値が減じたりするのではないかという懸念を抱く企業も存在する。大規模なAIモデルのトレーニングにはかなりの量のデータが必要になるため、膨大な計算能力やコストが必要になることを懸念する声もある。
他にも、AIモデルが作り出す虚偽情報に対する懸念や、倫理やプライバシー、知的財産の問題についても対処する必要がある。「AIの父」と呼ばれるジェフリー・ヒントン氏や、Appleの共同設立者スティーブ・ウォズニアック氏も、メディアによる取材の中で、AI技術に対する同様の懸念を示していた。
AI技術がもたらすリスクへの対策を講じる企業もある。2023年5月、通信社BloombergはSamsung Electronicsの開発者が自社のソースコードを誤ってChatGPTにアップロードした件を取り上げた。Samsung Electronicsはこの件の発覚後、ChatGPTやGoogleのAIチャットbot「Bard」への社内利用を禁止する措置を取った。
後編は、AI技術の進化に対処するため、各国の規制当局がどう動くのかを紹介する。
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