半世紀で“生物種2割減”の英国、鉄道会社の「AIを使った挑戦」とは?生物多様性にAIはどう役立つか【前編】

英国では生物種が1970年から19%減っているという報告がある。生物多様性を改善するため、英国の鉄道事業者はロンドン動物学会と共に、線路付近の動物のモニタリングに取り組んでいる。

2023年11月28日 05時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

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 英国の鉄道事業者Network Railはロンドン動物学会とGoogleと協力して、鳥やコウモリ、キツネ、ハリネズミなど、英国に生息する生物種のモニタリング調査に取り組んでいる。

 英国の複数の政府機関が共同で発表した調査報告書「State of Nature Report 2023」によれば、英国全土で1970年から2023年にかけて19%の生物種が減少した。こうした中、Network Railは自社が保有する鉄道網とテクノロジーを生かして英国の野生生物の保護を支援できる可能性があると考えている。なぜ鉄道網が野生生物の保護につながるのか。Network Railの思惑と共に説明する。

英国の鉄道事業者がまず取り組んだこととは

 Network Railは2020年に、同社の鉄道網沿線の生物多様性を向上するという公約「2020 Biodiversity Action Plan」を掲げた。同公約には以下のような目標が示されている。

  • 2024年までに生物多様性の損失を実質ゼロに抑える
  • 2035年までに生物多様性の純増を達成
  • 生物多様性への配慮をあらゆる意思決定や計画に組み込む

 これらの目標を達成するため、同社はまず現状の調査から始めた。グレーター・ロンドン(ロンドン市の32区と周辺の9郡からなる行政区)を対象として、生息している生物種と生息地の特定などを目的として調査した。

 調査方法としては、33台の音響モニター(スピーカー)によって約3万5000個、合計3000時間以上の音声ファイルを収集した。それらの音声ファイルをクラウドサービス群「Google Cloud Platform」で利用できる複数の人工知能(AI)技術ツールで分析した。

 沿線付近に住む動物種の生息地を特定するだけでなく、ロンドン南部の一部に生息するズグロムシクイやクロウタドリ、シジュウカラのような指標種の発見も目的としている。Network Railとロンドン動物学会によると、これらの種が生息していることは、環境が健全であることを示しており、生物多様性の重要なベンチマークになるという。

 Network Railとロンドン動物学会は2023年内に、対象地域をさらに広げるとともに、研究対象とする種についても、無脊椎動物や小型哺乳類へと範囲を拡大する計画を立てている。


 後編はNetwork Railが実際に利用したツールについて解説する。

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