AWSがなぜ生物多様性? 自然史博物館は「クラウド」で何を実現するのか自然史博物館のクラウド活用【後編】

英国のロンドン自然史博物館はAWSと協力し、生物多様性に関する研究強化を目的としたツールを共同開発した。このツールは、研究の未来をどう変えるのか。

2022年12月27日 05時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

 英国のロンドン自然史博物館(Natural History Museum)は、クラウドサービス群を提供するAmazon Web Services(AWS)と協力し、生物多様性に関する研究を強化する。同博物館はなぜAWSと協力し、その取り組みの狙いはどこにあるのか。

研究で重要性を増すクラウドサービス

 ロンドン自然史博物館とAWSはデータ管理ツール「Data Ecosystem」を共同開発した。同博物館に務める科学者はこのデータ管理ツールを使用することで、従来は異なる場所に保存していた研究データを1つの場所に格納し、データの結合や比較といった処理ができるようになる。ストレージの容量は収集したデータ量の増加に応じて拡張可能だ。

 ロンドン自然史博物館は、Data Ecosystemを同博物館が手掛ける生物多様性プロジェクト「Urban Nature Project」に活用する。このプロジェクトは、同博物館が保有する約2万平方メートルの敷地を、多様な生物が生息する緑地にすることを目的とする。具体的には、動植物を間近に観察できる庭園を複数作り、同博物館に所属する科学者の調査に役立てる。これらの庭園は2023年に一般公開になる計画だ。

 AWSとロンドン自然史博物館によると、Data Ecosystemは以下のような環境観測データを集約する。

  • 植物と野生生物に関する環境DNAを視覚化したデータ
  • ロンドン自然史博物館の庭園内に設置された高空間分解能センサーが収集する音声データ

 ロンドン自然史博物館の科学者は、Data Ecosystemに取り込んだ豊富なデータを利用することで、草地から沼地に至るまで、生息地の創出や回復、移動が英国都市部の野生生物に与える影響の科学的根拠を示せるようになる。

 将来的には、ロンドン自然史博物館がData Ecosystemを用いて、英国の自然環境や生物多様性を「デジタルツイン」(現実の物体や物理現象をデータでモデル化すること)で再現することも期待されている。

 ロンドン自然史博物館の生物多様性センターAngela Marmont Centre for UK Biodiversityで責任者を務めるジョン・トウェドル氏は、「AWSとData Ecosystemを共同開発したことで、当博物館の研究に抜本的な変化をもたらすだろう」と話す。「Data Ecosystemは、野生生物の観測から都市部における自然の回復促進に至るまで、生態系危機の解決策を見いだす上で欠かせないツールになる」(トウェドル氏)

 AWSで英国とアイルランド担当のバイスプレジデント兼統括マネジャーを務めるダレン・ハードマン氏は次のように話す。「ロンドン自然史博物館の科学者が、生態系の危機を防ぐための研究に取り組む上で、幅広いデータにアクセスできることは極めて重要だ。これを実現する上で、重要な役割を果たすのがクラウドサービスだった」

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