人材不足と採用難から、人事部門は「アルムナイ」(退職者)を再雇用する仕組みに熱視線を送っている。企業主導でアルムナイのコミュニティーを立ち上げ、魅力的な参加者を集めるためのこつは。
アルムナイ(企業の退職者、離職者)は、人事部門にとって長期的な採用活動の鍵になり得る。「アルムナイネットワーク」は企業や元従業員が運営する、元従業員のコミュニティーだ。人事部門にとってアルムナイネットワークは、リファラル(従業員による人材紹介)のきっかけを作ったり、「従業員は自社をどう評価しているか」といった口コミの情報源になったりする。
人事ソフトウェアベンダーEnterpriseJungle(EnterpriseAlumniの名称で事業展開)は、調査レポート「2023 H.R. Statistics: Hiring, Retaining & Rehiring」を公開した。それによると、経済誌Fortuneによる企業売上高ランキング「Fortune 500」に挙がる企業の98%は何らかのアルムナイ制度を実施している。アルムナイ制度は収益の増加、イノベーションの促進、定着率の向上につながる可能性がある。
企業がアルムナイネットワークを構築する際には、LinkedInの同名SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)でグループを立ち上げるだけでは不十分だ。元従業員の注目を集め、きちんと機能するアルムナイネットワークを構築するための7つのヒントを紹介する。
アルムナイネットワークには、その企業で事業を推進してきたキーパーソンが不可欠だ。人事リーダーは、その人物に適切なリソースを投入する必要がある。
人事ソフトウェアベンダーInsperityで人事コンサルタントを務めるシェリル・ラプラス氏は「アルムナイネットワークの構築や改善について経営者の賛同を求める前に、人事リーダーや関係者は、必要なリソース、予算、プロジェクト参加者を特定する必要がある」と述べる。
例えば出身大学の同窓会運営に深く関わっている従業員は、アルムナイ施策の運営に適している。リーダーとして必要なスキルを既に持っているためだ。
管理職は、アルムナイ施策を担当する従業員に過度の負担を掛けないように配慮しなければならない。人事コンサルティング会社Burr Consultingで人事コンサルタントを務めるマシュー・バー氏は「担当の従業員が週に数時間程度アルムナイ施策に時間を投入できるよう、企業は配慮が必要だ」と述べる。
アルムナイネットワークを構築する際には、一律的なやり方で全員の要求を満たせるとは限らないことを考慮する必要がある。成功のためにはパーソナライズが重要だ。
ラプラス氏によれば、企業によっては単一のグループを作るよりも、「退職者」「季節労働者」「フリーランス」など、特定の層を対象としたグループを作ることが理にかなう可能性がある。こうしたグループ分けをすることによって、企業はグループごとの活動を後押しできる。「例えばフリーランス限定の集会では、参加者は似た立場の専門家たちと人脈を構築可能だ」(ラプラス氏)
LinkedInをはじめとするさまざまなSNSを使って、退職者が独自の、つまり企業にとっては“非公式”のアルムナイネットワークを構築し、かつての同僚と連絡を取り合っている場合がある。
「マーケティング部門の現メンバーや元メンバーが、つながりを維持するためにSNSで非公式アルムナイネットワークを作っているならば、人事はその活動を拡張して公式化できる可能性がある」とラプラス氏は指摘する。
全ての非公式アルムナイネットワークを公式化できるとは限らない。しかし少なくとも、現役の従業員や元従業員は、企業が認可している公式のアルムナイネットワークなら喜んで参加してくれる可能性がある。
後編はアルムナイネットワークを構築するための7つのヒントのうち、4〜7つ目を紹介する。
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