IT活用と業務プロセス改善を組み合わせた手法「ビジネスプロセスマネジメント」(BPM)が、人工知能(AI)技術によって新たな展開を見せつつある。AI技術のおかげで劇的な変化が起きている分野とは。
「ビジネスプロセスマネジメント」(BPM:Business Process Management)は、IT活用によってビジネスプロセスの自動化を図るとともに、ビジネスプロセスそのものも見直して改善を目指す考え方だ。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えてきたBPMは、人工知能(AI)技術の後押しで進化しつつある。
「AI技術を使って、業務プロセスを効果的に検出したり、業務プロセスを自動化する仕組みを開発したりすることが可能になった」。データ分析ベンダーDAS42のプリンシパルコンサルタント、ジェフ・スプリンガー氏はこう話す。企業のシステムやセンサー、ソーシャルメディアなど、さまざまな情報源から取得したデータの利用が進み、人間だけでは識別することが難しい法則や“成功のパターン”をAI技術で識別できるようになった。
どのような分野が、「AI技術のおかげでBPMのアプローチが劇的に変化した」のか。本稿は11個の具体例のうち、1~4つ目を紹介する。
カスタマーサポートや営業、マーケティングなど、顧客と接点を持つのがフロントオフィス業務だ。コールセンター向けのAI技術活用を支援するGryphon Networks(Gryphon.aiの名称で事業展開)で製品管理のバイスプレジデントを務めていたブライアン・スティール氏は、フロントオフィスの業務プロセスにAI技術を導入するメリットとして以下を挙げる。
例えばコールセンターでは以下のようなAI技術の活用が可能だ。
システムからログを収集して分析することで業務プロセスを改善する「プロセスマイニング」は、BPMの重要な要素だ。非効率な業務を洗い出し、コスト削減の余地を見つけるのに役立つ。「AI技術がプロセスマイニングをより迅速に、より簡単にする」。プロセスマイニングツールベンダーCelonisの製品担当バイスプレジデントであるクリス・モンクマン氏は、こう説明する。
ただし、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングやハルシネーション(AIモデルが事実に基づかない情報を生成する現象)の問題に取り組む上では、構造化データや単語や文脈の解釈に使用する「意味的知識」のリアルタイムな改善が必要になる。
Celonisはドイツのアーヘン工科大学(Rheinisch-Westfalische Technische Hochschule Aachen)の協力に基づき、プロセスマイニングにAI技術を組み合わせることで業務プロセスをより深く理解しようとしている。その取り組みの一つが「オブジェクトセントリックプロセスマイニング」(OCPM)だ。これはビジネスプロセスにおける具体的なアイテムや概念を指す「オブジェクト」(発注書、請求書など)と、それにひも付いて相互作用する「イベント」(承認や受理といった業務の動き)をAI技術で分析するアプローチといえる。“注文書”や“請求書”などのオブジェクトがビジネスプロセスを移動したら、AI技術がそれを検知して予定納期を継続的に更新する。遅延が発生した場合にはアラートを送信して、問題解決のためのアクションに着手できるようになる。
SAPのBPMツール「SAP Signavio」は、業務プロセスの正確な理解を目的に、LLMで生成したラベルあり教師データを基に学習させた「大規模プロセスモデル」(LPM)を作り上げ、機能拡充を図っている。
SAPはドイツのマンハイム大学(University of Mannheim)の研究者と共同で「SAP Signavio Academic Models: A Large Process Model Dataset」というLPMを発表した。これは同社が研究機関向けに提供しているビジネスプロセス分析モデル「SAP Signavio Academic Models」を通じて作成したデータセットであり、主な内容はビジネスプロセスモデリング表記法(業務フロー図を書く際のルール)を使って作成した数十万件のビジネスモデル集だ。SAPでSignavioグローバルマーケティング部門責任者を務めるディー・ホウシェン氏は、ベストプラクティスのレコメンデーションや業務プロセスの分析、コンテンツ作成やデータの増強といった場面でLMPが役に立つ、と説明する。
中編も引き続き、AI技術を取り入れて進化を遂げているBPMの分野のうち、5~8つ目を紹介する。
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