AWSが2024年4月に一般提供を開始した生成AIツール「Amazon Q」は、開発者やビジネスユーザーにどのようなメリットをもたらすのか。その機能や特徴を解説する。
テキストや画像を自動で生成する人工知能(AI)技術「生成AI」市場が活況を呈している。Microsoftの「Copilot」やGoogleの「Gemini」をはじめ、各ベンダーは生産性向上につながるAIサービスを提供している。2024年4月、Amazon Web Services(AWS)は生成AIツール「Amazon Q」の一般提供を開始した。Amazon Qで開発者やビジネスユーザーの業務はどう変わるのか。
Amazon Qを構成する以下サービスと機能について解説しよう。
開発者向けの「Amazon Q Developer」は、ソースコードの提案や生成、自動補完ができるツールだ。Microsoftのソースコード生成ツール「GitHub Copilot」の対抗馬となる。開発業務の効率化と、開発者の生産性向上を支援するという。
2023年11月のAmazon Q発表時点で、AWSはその主な機能として「ソースコードの予測」に重点を置いていた。「2024年4月に投入したAmazon Q Developerはより包括的な機能を備え、会話型アシスタントとして使えるようになった」。こう説明するのは、AWSでAIデベロッパーエクスペリエンス担当ゼネラルマネジャー兼ディレクターを務めるダグ・セブン氏だ。
AWSによると、Amazon Q Developerは単にエンドユーザーの挙動を基にソースコードを提案するだけではない。エンドユーザーからの質問に答えられるなど、作業全体のサポートが可能だ。「なじみのないプログラミング言語や大規模なコードベースに取り掛かる際に、Amazon Q Developerに関数やファイル、プロジェクトについて説明してもらうことで、作業が大幅に楽になる」とセブン氏は述べる。
ビジネスパーソン向けの「Amazon Q Business」は、企業内のデータに基づいて質問への回答、要約やコンテンツの生成、タスクの実行などができる。約40種類のアプリケーションと連携可能で、これらのデータソースから得た情報を基に回答を生成する。連携先のシステムには、AWSのアプリケーションの他、「Microsoft 365」「Salesforce」「Slack」などサードパーティーアプリケーションが含まれる。
エンドユーザーがAmazon Q Businessに入力したクエリやコマンドは、生成AIサービス「Amazon Bedrock」経由で適切な大規模言語モデル(LLM)にルーティング(経路制御)される。利用できるLLMには、AWSのLLM「Amazon Titan」の他、サードパーティーのLLMが含まれる。
調査会社The Futurum GroupのCEO(最高経営責任者)兼アナリストのダニエル・ニューマン氏は、「AWSはAmazon Q Businessの提供を通して全てのビジネスアプリケーションを統合し、インタフェースを統一しようとしている」と語る。
「Amazon Q Apps」はAmazon Q Businessの一機能だ。ノーコード(ソースコードの記述なし)での生成AIアプリケーション作成が可能。非技術系のエンドユーザーでも自然言語を用いてアプリケーションの設計や開発、デプロイ(配備)をすることができる。例えば、社内データに基づいて営業資料を生成するといったアプリケーションが作れる。Amazon Q Appsは2024年7月時点でプレビュー提供中だ。一般提供の目途は発表されていない。
「Amazon Q in QuickSight」は、ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Amazon QuickSight」から利用できる「生成BIアシスタント」機能だ。エンドユーザーは自然言語を用いてBIダッシュボードを迅速に構築したり、データに関する質問をしたりできる。Amazon Q in QuickSightを使えば、データからインサイト(洞察)を引き出しやすくなる。
セブン氏は、AWSはAmazon Qの提供によってエンドユーザーがより楽に短時間で業務できるよう支援する点を強調する。一方で同氏は「Amazon Qが、エンドユーザーがAWSのさまざまなサービスやツールを使い続ける動機付けになることを期待している」と同社にとってのメリットを語る。
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