生成AI活用の広がりに伴い、「ベクトルデータベース」が注目されている。ベクトルデータベースを使うことで企業はどのようなメリットを得られるのか。基本的な仕組みと併せて解説する。
テキストや画像を自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」や、そのベースとなる大規模言語モデル(LLM)の人気が、「ベクトルデータベース」の需要を押し上げている。
既にリレーショナルデータベースやグラフデータベースなどを使っている組織であっても、生成AIプロジェクトを進める場合は、ベクトルデータベースを検討する価値がある。本稿は、ベクトルデータベースの基本的な仕組みと、なぜベクトルデータベースが生成AIの活用時に役立つのかを解説する。
ベクトルデータベースは、非構造化データを数値化して扱えるベクトル形式で管理する、類似検索に特化したデータストアを指す。その歴史は古く、生成AIが話題になる前から存在している。近年の生成AI人気が高まったことで、ベクトルデータベースは改めて注目されるようになっている。
企業はベクトルデータベースを導入することで、LLMで扱うデータを効率的に格納、管理、検索できるようになる。ベクトルデータベースはテキストや画像などの非構造化データを、高次元ベクトル(数百以上の数値が並んだリスト)として埋め込み(エンベディング)空間内で処理する。こうすることで、非構造化データをLLMが扱える形式に変換できる。
コンサルティング会社Nuvalenceの共同設立者兼マネージングパートナーを務めるシンクレア・シュラー氏は、「企業はベクトルデータベースだけでなく、グラフデータベースやリレーショナルデータベースといった選択肢も検討すべきだ」と話す。
生成AIアプリケーションは、プロンプト(指示文)に対する回答を作成するために、以下のようなさまざまな形式のデータを使用する。
生成AIの利用を考える上でベクトルデータベースは不可欠な存在だが、ベクトルデータベースはそれ単体で使用するというよりは、他のデータベースと組み合わせて使うものだ。そのため、例えば表形式データの管理であればリレーショナルデータベースが欠かせないし、グラフデータベースは「データの複雑な関係を定義する」という独自の価値を提供する。
次回は、ベクトルデータベースと他のデータベースの違いを比較解説する。
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