「テレワーク廃止論」に大多数が賛同――その危険な現実このまま“オフィス回帰”が進んでいいのか

かねて議論されてきた「テレワーク継続かオフィス回帰か」に関して、大多数の企業がある決断を下そうとしている兆候がある。テレワークを希望する働き手が少なくない中、何が変わろうとしているのか。

2024年09月18日 07時15分 公開
[Patrick ThibodeauTechTarget]

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 テレワークを継続するのかオフィス回帰を進めるのか――。働き方に関する方針は企業それぞれの判断によるものだ。だがある時期をめどに、大多数の企業がオフィス回帰の計画を進めようとしている兆候がある。一方では、その動きをとどまらせようとする議論も浮上している。働き方は今、どう変わろうとしているのか。

「テレワーク廃止論」に大多数が賛同――この現実が危ない理由とは

 履歴書作成ツールを提供するWebサイト「ResumeBuilder.com」を運営するBOLDが2023年8月に公開した調査結果によると、84%の企業が、2024年末をめどとしたオフィス回帰に向けて活動している。調査時点で、既に36%の企業は週5日のオフィス勤務を義務付けていた。ただし労働者は依然としてテレワークを好む傾向にある。同調査は2023年8月、ResumeBuilder.comの委託で調査会社Pollfishがオンラインで調査し、世帯年収7万5000ドル以上の労働者1000人が回答した。

 企業がオフィス回帰を求めるのは、さまざまな面で会社が改善するという期待に基づいている。同調査では回答者の81%が「収益が向上する」と答え、81%が「企業文化が良くなる」と答え、83%が「従業員の生産性が向上する」と答えた。

 一方でこうしたオフィス回帰の判断において、企業が忘れてはいけない判断要因がある。企業がオフィス回帰を進めれば、オフィスの滞在時間や通勤時間に発生するエネルギー使用量が増え、温室効果ガスの排出量も増加する可能性があることだ。

 コーネル大学(Cornell University)とMicrosoftの研究者らによる論文「Climate mitigation potentials of teleworking are sensitive to changes in lifestyle and workplace rather than ICT usage」は、テレワーカーやオフィスワーカー、ハイブリッドワーカーが排出する温室効果ガスの量について以下の事実を明らかにした。

  • テレワーカーが排出する二酸化炭素量は、オフィスワーカーが排出する量の54%
  • ハイブリッドワーカーが週に2〜4日在宅勤務をした場合、温室効果ガス排出量の削減率は11%から29%

 論文によると、週1日のテレワークで削減できる温室効果ガスの排出量は2%にしかならない。一方で、テレワーク中に業務とは関係のない目的での移動や、自宅でのその他のエネルギー使用量が増加すれば、テレワークで削減できる温室効果ガスは減少してしまうことに注意が要る。

 人事調査会社Global Workplace Analyticsでプレジデントを務めるケイト・リスター氏は、テレワークやハイブリッドワークと環境負荷の関係について次のように指摘する。「環境負荷の軽減に貢献するというメリットが、テレワークやハイブリッドワークの実施に関する企業の意思決定に大きく影響しているわけではない」。環境面でいかにメリットがあるとしても、それはテレワークやハイブリッドワークを推進する上での“おまけ程度”の動機にしかならないということだ。

 ただしリスター氏は、環境負荷がテレワークやハイブリッドワークの推進と無関係だとはみていない。論文の調査内容はオフィス回帰を推進しようとしている企業がテレワークを再検討するきっかけになり得るものだと同氏は指摘する。

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