2024年、エンドユーザーや企業はAI技術にどのような期待を持ち、実際はどのような結果に落ち着いたのか。「AI規則は進んだのか」など、さまざまな予測とその結果を紹介する。
テキストや画像を生成するAI(人工知能)技術「生成AI」の市場は、2023年から2024年にかけて急激に発展した。2024年、エンドユーザーや企業がAI技術に抱いていた期待やさまざまな予測に対して、実際にはどのような結果になったのかを振り返る。
2024年、AI技術への規制は緩やかに進むと予測されていた。2023年10月、米国大統領ジョー・バイデン氏はAI技術に関する大統領令を発令した。この大統領令は、国民のプライバシーの保護、AI技術を教育現場で活用する教育者の支援、公平性と市民権の推進、労働者の保護など8つの項目で構成されている。2024年5月には、欧州連合(EU)が「AI法案」(Artificial Intelligence Act)を採択した。
「2024年、連邦レベルでの(AI規制の)動きは見られなかった」。ノースイースタン大学(Northeastern University)の研究機関Institute for Experiential AIのマイケル・ベネット氏(「責任あるAI」のビジネスリーダー)はこのように述べる。
調査会社RPA2AI Researchのアナリスト、カシュヤップ・コムペラ氏も「大統領令には法的な拘束力がそれほどなく、実効性に欠けている」と指摘する。大統領令に基づき、米国政府が各連邦機関に対して最高AI責任者(CAIO)を任命するように求めるなど、小さな動きにとどまった。
一方、AI関連の訴訟に動きはない。例えば米紙The New York Times(NYT)は2023年12月、AIベンダーOpenAIとMicrosoftを提訴した。この訴訟について、早期の解決は難しいとコムペラ氏は述べる。
ただし、OpenAIは複数の出版社と契約を結び、出版社のコンテンツを大規模言語モデル(LLM)の学習に使用している。Getty ImagesやAdobeは、AIモデルのトレーニングに使用するデータを提供したクリエイターに報酬を支払い始めた。
「誰もがコンテンツは永久に無料ではないと気付き始めている。コンテンツにはコストがかかる」とコムペラ氏は指摘する。
2024年11月の米国大統領選で当選したドナルド・トランプ氏は、AI規制を撤廃する動きを見せている。一方、州や地方レベルでの規制は厳しくなるとベネット氏はみる。同氏は「各州が適切な政策を模索し、新たな規制を施行する可能性もある」と述べる。
出版社とAIベンダーとの訴訟はどうなるのか。コムペラ氏は「訴訟を通して、権利に関する各社の立場が明らかになる」と予測する。同氏はその結果、「ニュースサイトの記述や出版物、音楽、映画、動画などさまざまなコンテンツをAIベンダーが使用する権利があるのかどうかを明確にするためのガイドラインが策定される」とみる。
2023年2月にMeta Platformsが基盤モデル「Llama」を、同年12月にGoogleがAIアシスタント「Gemini」を発表したことで、2024年にはマルチモーダルAI(テキストや音声などの数種類のデータを組み合わせて処理するAI技術)が増えるという予測があった。オープンソースのAIモデルの増加を期待する声も聞かれた。
2024年は2023年よりも生成AIモデルが発展した。ソフトウェアベンダーResponsiveのAJ・サンダー氏(最高製品責任者兼最高情報責任者)は、以下の点が進歩したと説明する。
一方、ベネット氏は、LLMは真のマルチモーダルには達していないと指摘する。
「テキストや画像、音声などさまざまなデータを使って短編映画のようなものを作り出すAIの研究は進んでいるが、全てのデータ形式を1つのシステムで扱う方法はまだ見つかっていない」(ベネット氏)
オープンソースのAIモデルは「予測したほど普及しなかった」ともベネット氏は指摘する。「大半のAIモデルはソースコードや学習データが非公開のままだ」(同氏)
次回も引き続き、2024年のAI技術に関する予測とその結果を紹介する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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