業績不振に陥っているIntelの新CEOに就任したリプブー・タン氏は長年、Cadence Design SystemsのCEOを務めた人物だ。同氏を評価するアナリストもいれば、ある懸念を示すアナリストもいる。
経営再建中の半導体ベンダーIntelの新CEOに、半導体業界の“ベテラン”であるリプブー・タン氏が2025年3月18日付で就任した。タン氏は長年、半導体開発ソフトウェアベンダーCadence Design SystemsのCEOを務めた人物だ。2024年12月に退任したパット・ゲルシンガー氏の後任を務める。
タン氏は、2025年12月にゲルシンガー氏の後任として就任した暫定共同CEOのデビッド・ジンズナー氏とミシェル・ジョンストン・ホルトハウス氏からCEOを引き継ぐ。ジンスナー氏はCFO(最高財務責任者)の職に戻り、ジョンストン・ホルトハウス氏はIntel Productsのトップにとどまる。
暫定取締役会議長のフランク・イェーリー氏は、声明で次のように述べる。「タン氏は優れたリーダーだ。テクノロジー業界の専門知識に加え、ファウンドリー(半導体の受託製造)業界に人脈を持ち、株主価値を創造してきた実績を有する。まさにIntelが次期CEOに求めていた要素だ」
同社によると、タン氏は「半導体とソフトウェアにおける20年以上の経験」を持っている。タン氏は2009~2021年までCadence Design SystemsのCEOを務め、在任中に同社の収益を拡大し、株価を上昇させた実績がある。
タン氏は「Intelはさまざまな顧客基盤、堅固な製造基盤を持っている」と述べ、「将来に向けたIntelの取り組みを、さらに発展させることを楽しみにしている」と語った。
ロイター通信の報道によると、タン氏は2024年、ゲルシンガー氏の下での事業戦略や官僚主義的な組織体制、リスク回避的な文化に不満を募らせ、Intelの取締役会を辞任した。タン氏はCEO就任と同時に取締役会に復帰する。
コンサルティング企業J.Gold Associatesのプリンシパルアナリスト、ジャック・ゴールド氏は、製品設計と製造の両面から半導体業界を理解しているCEOを選んだ取締役会の判断を評価する。Intelのファウンドリー事業に興味を持つ潜在的な顧客企業を獲得するためには、タン氏のような経験を持つ人材が必要だとゴールド氏は指摘する。
ゴールド氏によると、タン氏を選んだことは、取締役会が設計部門とファウンドリー事業を1つの会社として維持することに関心があることを示している。会社を分割する意向があれば、より財務経験の豊富な人物を選んだという。
ゴールド氏は「Intelを立て直すにはさまざまな課題があるが、タン氏の任命はポジティブな出来事だ」と話す。同氏は「必要な変革を進める際に取締役会が干渉しないことを願う」と述べ、Intelの立て直しには「最大2年かかる」と指摘する。「忍耐が必要だ」とも付け加えた。
他の半導体ベンダーがIntelの製造部門の買収を検討しているという報道もある。ファウンドリーのTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)、半導体ベンダーBroadcomがIntelのファウンドリー事業に関心を示している。ロイター通信は、TSMCがIntelのファウンドリー事業を運営する合弁事業への出資について、NVIDIA、Advanced Micro Devices(AMD)、Broadcomに打診したと報じた。
調査会社Forrester Researchのシニアアナリスト、アルビン・グエン氏は「Intelのファウンドリー事業の分離についてはさまざまな議論がなされている。タン氏がこうした議論を覆さないとは考えにくい」と述べる。
グエン氏は、タン氏のCadence Design Systemsでの長期にわたるCEOの経験が、Intelの立て直しに役立つとは限らないと懸念を示す。「タン氏の経歴は物足りないわけでも印象的というわけでもない。Cadence Design Systemsでの経験と業界知識はプラスに働くが、1つの会社に長くとどまっていたということは、Intelで直面する困難に対する経験は持ち合わせていない可能性がある」(グエン氏)
Intelの復活は容易ではない。同社は長年、スマートフォンとAI(人工知能)という2つのトレンドの中で、成功を収めることができなかった。2024年第2四半期(2024年4~6月)、Intelの半導体市場シェアは7.5%まで低下した。これは、Informa TechTargetの一部門であるアナリスト企業Omdiaが2002年に市場調査を開始して以来、最低水準となった。AMD、NVIDIAなどがIntelのシェアを奪っている。
前任のゲルシンガー氏は長期的な立て直しを計画していたが、取締役会はゲルシンガー氏が望んだ大規模投資では、十分なペースでリターンを生まないと判断した。2024年単体で同社の株価は50%以上下落し、時価総額は30年ぶりの低水準となった。
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
SSDの大容量化や価格競争力の向上により、「SSDオンリー」という選択肢が現実味を帯びつつある。しかし、HDDが完全に不要になるとは断言できない。その理由は何か。
昨今は企業で扱うデータが増加傾向にある上、働き方の変化などにも対応する必要性から、オンプレミスのファイルサーバをクラウドに移行する企業が増えている。そこで、移行先を選ぶポイントやセキュリティ対策について、動画で解説する。
ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。
職員700人が利用する部門システムの刷新を決断した大阪回生病院では、運用のシンプル化に期待して、HCIの導入を検討する。同病院がHCIに求めた要件とは何か。そして、この大規模移行プロジェクトを成功裏に完了できた理由に迫る。
長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。
Hyper-Vは「次の仮想化基盤」になり得るのか 有識者の本音を聞く (2025/3/14)
「生成AI」の自社運用に“ちょうどよいサーバ”の賢い選び方 (2025/3/12)
大量データのクラウド化を阻む「検索課題」を解決した東急建設の秘策とは (2025/2/25)
AI時代のデータ活用を阻む「ストレージ」の壁 悩める運用担当者の救世主とは? (2025/1/21)
生成AI時代の「コスト、電力、スペース」問題 救世主となるストレージはこれだ (2025/1/20)
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「政府」「メディア」への信頼度は日本が最低 どうしてこうなった?
「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果から、日本においても社会的な不満・憤りが大...
「Threads」が広告表示テスト開始 企業アカウント運用のポイントとは?
Metaのテキスト共有アプリ「Threads」で広告表示のテストが開始され、新たな顧客接点とし...