AI処理用プロセッサの市場が激化する中で、Intelは矢継ぎ早にプロセッサ新製品を発表している。同社はAI PCの需要増加の波に乗れるのか。
Advanced Micro Devices(AMD)やQualcomm Technologiesといった競合の半導体ベンダーの勢いに押されているIntelにとって、人工知能(AI)技術向けの製品ラインアップを強化することは喫緊の重要事項だ。
Intelは2025年1月に米ラスベガスで開催された電子機器の見本市「Consumer Electronics Show」(CES)で、AI処理を担うプロセッサを搭載する「AI PC」向けのプロセッサとして「Core Ultra」の新シリーズを披露した。同社は競合の攻勢にさらされる中で、AI PCの需要増の波に乗ることができるのか。
AIタスクの処理のために使われるプロセッサ(AI半導体)の開発が進んでも、AI PCの導入が加速するわけではない。とはいえIntelにとっては、AI半導体のラインアップを増やし、AMDの「Ryzen AI」シリーズや、Qualcommの「Snapdragon X」シリーズといった競合製品に対抗することが重要だ。
PC市場における半導体ベンダーの勢力図は、ここ数年で変わりつつある。IntelのシェアはAMDに奪われている。IntelとAMDが「x86」(Intelが開発したCPUのアーキテクチャ)のCPUを提供する一方、QualcommはArmアーキテクチャ(Armが設計したCPUアーキテクチャ)のプロセッサを提供している。モバイルデバイスにおけるバッテリー持続時間は、総じてArmアーキテクチャのプロセッサの方が長い。ただしArm版とは互換性がないアプリケーションも存在することもあり、Qualcommが企業向けの市場で飛躍的に勢力を拡大しているとは言えない。
調査会社IDCが発表している2024年第3四半期(2024年7〜9月)の全世界のPC出荷台数は、前年比2.4%減の6880万台だった。伸び悩むPC市場において、AI PCは高級な部類に属する。消費者はAI PCにお金をかけるのであれば、それだけの価値のあるアプリケーションが使えることを期待するはずだ。IDCは、消費者を引き付ける機能を備えるアプリケーションが登場し始めるのは2026年に入ってからになるとみている。
一方の企業向け市場はやや様相が異なる。アナリストによると、企業におけるAI PCの購入が増加すると見込まれる要因が幾つかあるという。まず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(感染症の世界的大流行)時に企業が購入したPCの老朽化が進んでいる。通常、企業は4〜5年のサイクルでPCを入れ替える。これから新たにPCを購入する企業は、将来に備えてAI PCを選択する可能性がある。
Microsoftが2025年10月にクライアントOS「Windows 10」のサポートを終了する計画であることも企業向けの市場でAI PCの販売が伸びる一因になる。「Windows 11」はWindows 10よりも高スペックのPCを必要とするため、OSの移行と同時にハードウェアとしてAI PCを選択する可能性がある。
そうした中でIntelが提供するのが「Core Ultra 200HX」と「Core Ultra 200H」だ。それぞれコア(演算処理を担うユニット)数が24個と16個と、コアを豊富に搭載していることが特徴の一つだ。Core Ultra 200Hはその他、同社のGPU「Intel Arc」とAIアクセラレーションエンジン「XMX」(Xe Matrix Extensions)を搭載する。Core Ultra 200HXはGPUとストレージを接続するための汎用(はんよう)インタフェースとして「PCI Express 5.0」(PCIe 5.0)のインタフェースを搭載している。
これに先立ちIntelは、コードネーム「Lunar Lake」で開発してきたAI PC向けの新プロセッサとして「Core Ultra 200V」を発表するなど、AI分野での製品拡充を急いでいる。コンサルティング企業J. Gold Associatesで主席アナリストを務めるジャック・ゴールド氏は、「こうした新しいAI半導体を投入しなければ、IntelはAI PC分野で競合に後れを取ることになっただろう」と指摘する。
Core Ultra 200Hシリーズを搭載するPCは2025年2月に、Core Ultra 200HXシリーズを搭載するPCは2025年上半期にPCメーカー各社から発売になる見込みだ。
IntelはCore Ultraの次世代となるプロセッサをコードネーム「Panther Lake」として開発を進めており、AI市場でのさらなる勢力拡大を狙っている。Panther Lakeは1.8ナノの次世代プロセスに基づいて製造されることになる見込みだ。
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