IntelのCEOを4年近くにわたって務めたパット・ゲルシンガー氏が退任した。同氏はIntelの再建計画を進めてきたが、同社を復活させるには至らなかった。
業績不振に陥っている半導体ベンダーIntelの再建を背負ってきたパット・ゲルシンガー氏が、2024年12月1日に同社CEO(最高経営責任者)を退任した。ゲルシンガー氏は2021年2月にIntelのCEOに就任して以来、4年近くにわたって同社の地位を取り戻すための施策を続けてきたが、その奮闘は道半ばにして終わりを迎えることになった。Intelの再建計画は、どれほど深刻な状態に陥っているのか。
ゲルシンガー氏は、再建計画として半導体の受託製造(ファウンドリー)事業や製品ポートフォリオの革新、人員削減などが進められてきたが、Intelは苦境から抜け出せていない。
2024年8月の決算報告で、再建に向けたゲルシンガー氏の努力は一段と厳しい目で見られるようになった。売上高が期待通りに伸びない中で、同氏は全従業員の約15%に当たる1万5000人以上の人員削減や、2025年に設備投資を100億ドル削減する計画などを明らかにしていた。同氏がCEOに就任して以来、Intelの株価は50%以上も下落している。
ゲルシンガー氏はIntelで約30年間勤務し、同社の初代CTO(最高技術責任者)となった後、2009年に退社。当時のEMCでCOO(最高執行責任者)兼プレジデントを務めた後、2012年からはVMwareのCEOを務めた。
IntelのCEOとなってからのゲルシンガー氏の戦略の中心にあったのは、ファウンドリーを全てのチップ設計者や競合他社に開放することで、Intelのかつての支配的な地位を取り戻すことだった。この戦略を多くのアナリストは「正しい計画」として評価していたが、Intelはこの再建計画をもってしても迅速に苦境から脱することはできなかった。Intelの取締役会独立議長であるフランク・イヤリー氏は、「世界トップクラスのファウンドリーを構築する上では大きな進展を遂げたが、やるべき多くの作業が残されている」と語る。
「ゲルシンガー氏が3年以上にわたってCEOを務めたことを考慮すれば、取締役会は会社を立て直すための十分な時間を与えたと言えるが、同氏はその期間の中で復活を実現できなかった」。調査会社J.Gold Associatesのプリンシパルアナリストであるジャック・ゴールド氏はそう述べる。
半導体産業は、Intelの全盛期から劇的に変化している。かつてはゲームやPC用のGPU(グラフィックス処理装置)を供給するニッチ市場のベンダーだったNVIDIAは、AI(人工知能)技術の活用が広がる今日においては主要なプロセッサベンダーの地位を獲得し、同社の企業価値はうなぎのぼりだ。
Intelの長年のライバルであるAdvanced Micro Devices(AMD)も、AI市場で苦戦が続くIntelとは異なり、収益を伸ばしている。AMDのデータセンター向けGPU「AMD Instinct」シリーズが市場シェアを着実に獲得している一方で、IntelのAIアクセラレーター「Gaudi」は市場での地位を確立できていない。
NVIDIAとAMDの成功は、Intelのデータセンター事業大きな損失をもたらしたとアナリストは分析する。これからのIntelにとっては、やはりAI技術の需要が高まるデータセンター分野に好機がある。「Intelはまずはデータセンター分野の製品ポートフォリオを健全にしなければならない」。調査会社Forrester Researchのアナリストであるアルビン・グエン氏はそう述べる。ゲルシンガー氏の計画の中心にあったファウンドリーの戦略を継続することも重要だ。
ゲルシンガー氏はCEO退任において、「Intelは私の人生の大部分を占めてきた」と振り返りつつ、「Intelを率いることは私の人生における名誉だった」と述べた。正式な後任が決定するまでの間、CFO(最高財務責任者)だったデイビッド・ジンスナー氏と、クライアントコンピューティングのゼネラルマネジャーだったミシェル・ジョンストン・ホルタウス氏が、Intelの暫定CEOとして任命されている。
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