完全テレワーカーは昇進させない Dell“異例”決断の背景ハイブリッドワークで生じる“偏見”

Dell Technologiesが、テレワーカーの昇進を制限する方針を打ち出した。なぜ、同社は「昇進機会を奪う」という方法を採るのか。専門家は、テレワークに伴う“ある偏見”の問題を指摘する。

2024年03月29日 17時00分 公開
[Patrick ThibodeauTechTarget]

 近年、Dell Technologiesは柔軟な働き方を推進してきたが、その方針を変えつつある。Webメディア「Business Insider」の報道によると、同社はフルタイムのテレワーク勤務を希望する従業員を昇進の候補にしない方針だ。

 報道によると、Dell Technologiesはハイブリッドワーク(テレワークとオフィスワークの組み合わせ)を選ぶ従業員に対し、四半期当たり少なくとも39日、平均すると週に約3日はオフィスに出社することを義務付けている。

 Dell Technologiesは米国TechTarget編集部の取材に対して「世界的に技術革新が進む中、当社がイノベーションを起こして差別化を図るには、従業員同士の直接的なつながりが重要だ」と説明する。しかし、なぜ「昇進の機会を奪う」という方法を採用したのだろうか。

なぜ「昇進させない」のか

 Dell Technologiesが方針を変える背景には、経済的な事情がある。同社の2024年度通期(2023年2月〜2024年1月)決算は、売上高が前年比14%減の884億ドルだった。

 人事ツールベンダーLeapsomeのCEOであるジェニー・フォン・ポデウィルス氏は、Dell Technologiesの方針変更は業績悪化に対する“パニック的な反応”だとみる。「短期的には生産性が向上する可能性はあるが、そのメリットを『エンゲージメントの低下』というデメリットが上回る可能性もある」とポデウィルス氏は指摘する。

 IT業界の雇用市場は流動的だ。AI(人工知能)技術やサイバーセキュリティのスキルに対する需要は高まっているものの、IT企業の人員削減が続いている。世界のIT企業の解雇状況を収集しているWebサイト「Layoffs.fyi」によると、2024年1月から3月までの間に5万人以上がレイオフ(一次解雇)されている。

 しかしIT業界の雇用市場が回復すると、Dell Technologiesの計画は「定着リスクという点で、悪影響を及ぼす可能性がある」というのが、ポデウィルス氏の考えだ。

ハイブリッドワークで生じる“偏見”

 カリフォルニア大学デービス校経営大学院の名誉教授であるキンバリー・エルスバッハ氏は、評価者が物理的に遠い人よりも近い人を優遇する「近接性バイアス」を研究している。同氏によると、テレワーカーはオフィスワーカーと比べて「献身的ではない」と評価されてしまう傾向がある。

 「こうした偏見が昇進や報酬に影響を与える限り、テレワーカーは不利な立場に置かれる」とエルスバッハ氏はみる。ただし同氏の研究によると、雇用する企業が客観的な尺度を導入し、それに基づいて従業員を評価すれば、近接性バイアスは軽減できる。

TechTarget発 世界のITニュース

新製品・新サービスや調査結果、セキュリティインシデントなど、米国TechTargetが発信する世界のITニュースをタイムリーにお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news035.jpg

低迷するナイキやアディダスを猛追する「HOKA」の “破壊的”ブランディングとは?
ランナーの間で好感度が低迷しているNikeに対し、ディスラプター(破壊的企業)として取...

news051.jpg

新紙幣の発行、3社に1社が日本経済に「プラスの影響」と回答――帝国データバンク調査
20年ぶりの新紙幣発行は日本経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか。帝国データバン...

news196.png

WPPとIBMが生成AIを活用したB2Bマーケティング領域で連携
IBMのビジネス向けAIおよびデータプラットフォームである「watsonx」の機能を「WPP Open...