Dell Technologiesが、テレワーカーの昇進を制限する方針を打ち出した。なぜ、同社は「昇進機会を奪う」という方法を採るのか。専門家は、テレワークに伴う“ある偏見”の問題を指摘する。
近年、Dell Technologiesは柔軟な働き方を推進してきたが、その方針を変えつつある。Webメディア「Business Insider」の報道によると、同社はフルタイムのテレワーク勤務を希望する従業員を昇進の候補にしない方針だ。
報道によると、Dell Technologiesはハイブリッドワーク(テレワークとオフィスワークの組み合わせ)を選ぶ従業員に対し、四半期当たり少なくとも39日、平均すると週に約3日はオフィスに出社することを義務付けている。
Dell Technologiesは米国TechTarget編集部の取材に対して「世界的に技術革新が進む中、当社がイノベーションを起こして差別化を図るには、従業員同士の直接的なつながりが重要だ」と説明する。しかし、なぜ「昇進の機会を奪う」という方法を採用したのだろうか。
Dell Technologiesが方針を変える背景には、経済的な事情がある。同社の2024年度通期(2023年2月〜2024年1月)決算は、売上高が前年比14%減の884億ドルだった。
人事ツールベンダーLeapsomeのCEOであるジェニー・フォン・ポデウィルス氏は、Dell Technologiesの方針変更は業績悪化に対する“パニック的な反応”だとみる。「短期的には生産性が向上する可能性はあるが、そのメリットを『エンゲージメントの低下』というデメリットが上回る可能性もある」とポデウィルス氏は指摘する。
IT業界の雇用市場は流動的だ。AI(人工知能)技術やサイバーセキュリティのスキルに対する需要は高まっているものの、IT企業の人員削減が続いている。世界のIT企業の解雇状況を収集しているWebサイト「Layoffs.fyi」によると、2024年1月から3月までの間に5万人以上がレイオフ(一次解雇)されている。
しかしIT業界の雇用市場が回復すると、Dell Technologiesの計画は「定着リスクという点で、悪影響を及ぼす可能性がある」というのが、ポデウィルス氏の考えだ。
カリフォルニア大学デービス校経営大学院の名誉教授であるキンバリー・エルスバッハ氏は、評価者が物理的に遠い人よりも近い人を優遇する「近接性バイアス」を研究している。同氏によると、テレワーカーはオフィスワーカーと比べて「献身的ではない」と評価されてしまう傾向がある。
「こうした偏見が昇進や報酬に影響を与える限り、テレワーカーは不利な立場に置かれる」とエルスバッハ氏はみる。ただし同氏の研究によると、雇用する企業が客観的な尺度を導入し、それに基づいて従業員を評価すれば、近接性バイアスは軽減できる。
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