イーロン・マスク氏が生成AI「Grok」をオープン化する“語られない狙い”OpenAIへの報復だけではない?

イーロン・マスク氏が、生成AI技術を活用したチャットbot「Grok」をオープンソースで提供する方針を明らかにした。背景にはOpenAIへの恨みがあるようだが、もう一つの狙いを指摘する向きもある。

2024年03月14日 17時00分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

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 実業家のイーロン・マスク氏は2024年3月11日(現地時間)、自身で創業した人工知能(AI)技術の会社「xAI」が、生成AI(ジェネレーティブAI)技術を活用したチャットbot「Grok」をオープンソースで提供することを明らかにした。

 同社は2023年11月にGrokを発表。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「X」の有料会員に先んじて提供している。Grokは大規模言語モデル(LLM)「Grok-1」を搭載し、Meta Platformsの「Llama 2」や、OpenAIの「GPT-3.5」のようなLLMに匹敵する性能だと、同社は説明している。

 マスク氏はOpenAIの共同創設者だったが、2019年に同社から撤退。2024年2月には、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏と社長のグレッグ・ブロックマン氏を契約違反で提訴した。「OpenAIの技術はオープンで、人類の利益のためにあるべきだったが、アルトマン氏が閉鎖的な方向に誘導した」というのがマスク氏の主張だ。

 ワシントン大学情報大学院の教授であるチラグ・シャー氏は、マスク氏がGrokをオープンソースにしようとする動機は、OpenAIに対する報復の可能性があると述べる。しかし理由はそれだけではない。

オープンソース化する“もう一つの狙い”

 マスク氏がGrokをオープンソースにするという決断は、ITベンダーがオープンソースの性質を利用して、生成AIの開発競争で互いに先んじようとしていることを示している――コーネル大学の博士研究員デビッド・グレイ・ウィダー氏はこのように指摘する。

 “オープンソース”は、それ自体に広告効果があるとウィダー氏は付け加える。例えば、Meta PlatformsはLlama 2をオープンソースにすることで、外部開発者が同社の内部システムと互換性のある技術を構築するのにどのように役立つかをアピールした。

 xAIの場合、オープンソースにすることは、生成AIの市場でけん引力を得るのに役立つはずだとシャー氏は指摘する。「マスク氏は、慈善活動をしたいわけではない。彼は金を稼ぎたいのだ。LLMだけではなく、今後xAIが投入するAI技術への関心を集める狙いもあるのではないか」と考察する。

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