米国では熱関連死亡数が増えているものの、企業は猛暑問題に冷静な対処をしている。研究者は「企業がリスクのある地域を避け、配置転換をする可能性がある」と指摘。一方、猛暑にもかかわらず雇用が増えている地域もある。
米国疾病予防管理センターの調べによると、米国では猛暑による死亡者が増加しており、2022年には1700人を超え、2000年以来最高となった。そうした中、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の論文「Do Firms Mitigate Climate Impact on Employment? Evidence from US Heat Shocks」によると、企業は猛暑問題に冷静に適応している。
米国で複数の拠点を有する企業は「ヒートショック」を受け、涼しい地域に移転するようになっている。ここでいうヒートショックとは、人間の健康を害し、火災の危険性を高めるほどの高温が続くことだ。
「われわれの分析が示しているのは、企業が気候変動リスクのある地域から、リスクの少ない地域に人員の配置転換をする可能性があるということだ」と、チューレーン大学A.B.フリーマン経営大学院の助教授であるアビシェク・バルドワジ氏は述べる。
それでも専門家は、気候変動のリスクより、労働力や税金、法規制などビジネスの外的要因が重視されるとみている。
調査会社Gartnerのアナリストであるエミリー・ローズ・マクレー氏は「現実には、雇用主にとって猛暑を含む気候変動リスクは、定期的に評価すべきリスクの一つになったばかりだ」と述べる。「企業は、気候変動リスクと、労働力の確保やサプライチェーンの運営に与える影響の両方を評価している」(同氏)
過剰な暑さがビジネスに影響を与えるという証拠は、まだ不明確だ。例えば、アリゾナ州のフェニックスは、全米の中でも雇用と人口が急増している地域の一つであり、半導体チップ製造の中心地となっている。一方、暑さに関連する死亡者数も記録的な数字となっている。
米国国勢調査局によると、2022年、フェニックスを含むマリコパ郡は米国で最大の人口増加を記録した。増加率は前年比1.3%増、人数は約5万7000人増えた。同年には雇用が約9万人増加し、年間雇用増加率は4.4%に達した。一方、マリコパ郡が発表した「2022 Heat Deaths Report」によると、2022年の暑さに関連する死亡者数は425人だった。
企業の用地選定を支援するコンサルティング会社The Boyd Companyのプリンシパルであるジョン・ボイド氏は「大局的には、気候変動リスクは事業用地の選定に影響を与えていない」と説明する。
ボイド氏は「当社の顧客企業は、犯罪への寛容さ、税金や法規制の上昇などを『反ビジネス』の要因として定期的に挙げている」と言う。「どれほどの企業が、用地選定の初期段階で、気候変動に対して脆弱(ぜいじゃく)な州を排除したのかを知ることは困難だ」(同氏)
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