テレワークが企業において当たり前になった現代では、テレワーカーのコラボレーションを支援し、新たな働き方における生産性を向上させることが鍵となる。活躍が期待されるVR/AR技術とは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を経て、企業はオフィスワークを中心とした働き方から、オフィスワークとテレワークを組み合わせるハイブリッドワークに移行した。テレワーカーのコラボレーションを支援することは、現代の企業において重要だと言える。そうした企業にとって活躍が見込めるのが、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術だ。
オーディオビジュアル(AV)サービス企業Diversifiedのオフィスや会議室は、ビデオトラッキングシステムを装備したスピーカーやマイクなどを活用して、シームレスな対面会議やWeb会議を実現している。同社は放送スタジオや没入型技術を構築して顧客企業用のVRシステムを導入した。保険会社などの同社の顧客企業は、代理店の研修にこのVRシステムを利用しているという。
セキュリティベンダーAkamai Technologiesの包括性、多様性、エンゲージメント担当バイスプレジデントを務めるカリル・スミス氏は、VR/AR技術が次にどこへ向かうのかは「企業の投資意欲次第だ」と解説する。もし企業が、各従業員にHMDが行き渡るよう投資することに前向きであれば、VR/AR技術の発展が期待できる。
従業員数の規模は異なるものの、Akamai TechnologiesとDiversifiedの共通点は、テレワークを採用している点だ。COVID-19が流行する前は、両社ともほとんどの従業員がオフィス勤務だった。
Akamai Technologiesは、オフィス内に従業員用のコラボレーション拠点を開設しており、必要に応じて会議室を貸し出している。従業員の一部はオフィス勤務が必須だが、そうした人々は主に政府機関のセキュリティ業務といった職務に従事している。スミス氏が社員証の認証データから推定したところ、オフィスに出社するのは1日当たり従業員の8〜9%だという。
米国の全ての州において、Akamai Technologiesは従業員の在宅勤務を認めている。他社がオフィス復帰ポリシーを発表した際は、同社の人材採用が恩恵を受けた。同社の在宅勤務ポリシーを「人材獲得チームは大いに歓迎した」とスミス氏は振り返り、「人材のつなぎ止めにも役立った」と話す。
コンサルティング企業Gallupは2022年6月、米国企業にフルタイムおよびパートタイムで勤務する18歳以上の8090人にアンケート調査を実施した。その結果、「今後完全な職場勤務を望んでいる」と回答したのはわずか6%であり、従業員はフルタイムでのオフィス復帰を望んでいないことが明らかになった。同社は「完全な職場勤務は過去の遺物であり続ける」との見解を示す。
アクセス制御ベンダーKastle Systemsは、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンなど米国の10大都市圏における入退室データを利用して、ビルの占有率を算定した。それによると、2023年12月中旬のオフィスの平均専有率は約51%だった。
コンサルティング会社Workplace Intelligenceのマネージングパートナーであるダン・シャウベル氏は、ハイブリッドワークを「両者が中間地点で折り合える雇用主と従業員の休戦協定」と形容する。シャウベル氏によるとハイブリッドワークは、テレワークの利点と対面コラボレーションの利点を組み合わせ、バランスの取れた解決策を提示する。「ハイブリッドワークは『チームワーク、創造性、組織の文化のための物理的な空間』を維持しながら、『職場や働き方の選択肢を増やしつつワークライフバランスを向上させたい』という従業員の欲求に応えるものだ」(同氏)
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