Reutersの報道によると、Googleの親会社AlphabetがHubSpotの買収を協議している。正式な買収提案はしていないと報じられているが、買収する可能性があるとすればAlphabetの狙いは何なのか。
Googleの親会社であるAlphabetがマーケティング支援ベンダーHubSpotの買収を検討していると、英国の通信社Reutersが報じた。HubSpotの時価総額は約350億ドルに及び、実現すれば大規模な買収になる。ただしAlphabetはHubSpotに正式な買収提案はしていないとも報じられており、両社ともに明言は避けている。買収する可能性があるとすれば、Alphabetの狙いはどこにあるのか。
Googleはマーケティング、Eコマース、顧客関係管理(CRM)、カスタマーサービスを支えるさまざまなクラウドサービスを提供しているが、実際のアプリケーションは提供していない。HubSpotは、そうしたマーケティング、CRM、カスタマーサービス向けのアプリケーションを提供している。Eコマースについては、HubSpotはそれ単体で完結するアプリケーションは有していないが、Eコマース構築サービス「Shopify」と連携している他、「Stripe」を介した決済機能を提供している。
HubSpotが持つ資産のうち、Alphabetにとっての最大の資産は、2006年の創業から蓄えた、約20年分のマーケティングデータとマーケティングの効果測定のノウハウだとみられる。これらは、Googleが推進する人工知能(AI)技術を活用したサービスやチャットbotの開発に役立つ。
モバイルコマースプラットフォームベンターButtonのCEO兼創設者であるマイケル・ジャコーニ氏は、この買収は「HubSpotが持つデータが全ての鍵を握っている」と推測している。HubSpotの同名ツールは、ユーザー企業のファーストパーティーデータを基に、特定の広告、リンク、またはインフルエンサーに売り上げを帰属させるためのさまざまなファーストパーティーコンバージョンデータを生成している。Googleが同社のブラウザ「Chrome」で「サードパーティーcookie」を無効化する方針を発表し、英国規制当局が消費者データ保護に目を向ける中で、こうしたデータの価値は高まっている。
「広告ベースの収益モデルに支えられている企業は、コンバージョンデータやファーストパーティーデータの情報源を強化する必要がある」(ジャコーニ氏)
Alphabetは、2023年第4四半期(2023年10月〜12月)決算で、広告事業が市場予想を下回ったことを受け、GoogleとYouTubeの広告販売強化を模索しているとみられる。このことはサードパーティーcookieの廃止、英国規制当局の監視強化と併せて、Alphabetが広告インフラに投資する動機を裏付けるものだ。
問題は、規制当局がHubSpotの買収を許すかどうかだ。調査会社Constellation Researchのアナリストであるリズ・ミラー氏は「厳しい」と指摘する。Googleは自社の検索エンジンをデフォルト設定にするように携帯電話会社と排他的な契約を締結したとして、独占禁止法の疑いで調査を受けている。さらにHubSpotを買収するとなれば、米国規制当局の審査に“赤信号”が点灯する恐れがある。
ミラー氏は、AlphabetがHubSpotのユーザー企業を他ベンダーのユーザー企業よりも優遇する可能性も疑っている。「Alphabetが買収を提案したとしても、HubSpotが受け入れるかは別の話だ。HubSpotも規制当局の監視を受けることになるが、同社の取締役会はそれを望んでいるだろうか」(ミラー氏)
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