AI技術専用のプロセッサを搭載する「AI PC」が、PC市場で一定のシェアを占めつつある。そうした中で、Windows PCにおいては常識のようにして使われてきた「x86」に、変化の時が訪れている。
調査会社Canalysが2024年11月に公開した市場調査レポートによると、2024年第3四半期(2024年7〜9月)に出荷されたPCのうち、5台に1台はAI(人工知能)技術専用の機能を搭載する「AI PC」だった。MicrosoftのクライアントOS「Windows」を搭載するPCにおいては、従来は「x86」アーキテクチャを採用することが一般的だったが、AI PCが台頭するのと同時にそれは常識ではなくなった。Windows PCはどう変わりつつあるのか。
Canalysは、AI PCについて「NPU」(Neural Processing Unit)などのAI技術専用のプロセッサを搭載するデスクトップPCまたはノートPCと定義している。同社の調べによると、2024年第3四半期におけるAI PCの出荷台数は1330万台に達し、全体の約20%を占めた。
AI PCのうち、Windowsを搭載するPCは53%と過半数のシェアを獲得した。注目すべきは、2024年第3四半期までに「Copilot+ PC」のブランドで提供されたWindows搭載のAI PCは、従来の主流として搭載されてきたIntelやAdvanced Micro Devices(AMD)のプロセッサではなく、Qualcomm Technologiesのプロセッサを搭載している点だ。IntelやAMDはx86アーキテクチャ互換のプロセッサであるのに対して、Qualcommの場合は「Arm」アーキテクチャを採用している。IntelやAMDのプロセッサ搭載のCopilot+ PCもこれから使われるようになると考えられるが、その前にQualcomm製プロセッサ搭載のCopilot+ PCがいち早く市場に登場していたのだ。
「Windows 10」から「Windows 11」へのリプレースのサイクルが回る中で、AI PCの需要は当面続くとみられるが、CanalysはAI PCを導入することに対しては一定程度の抵抗が出るとみている。「販売パートナーとエンドユーザーの両方をAI PCの利点に納得させるために、Microsoftはまだ多くの努力をする必要がある」。Canalysの主任アナリスト、イシャン・ダット氏はそう語る。
AI PCは、PC市場において主にハイエンドの需要をターゲットにしている。AI PCとしては比較的低価格帯のPCであっても、一般的なPCよりも高価格帯となっており、ユーザー企業が通常用意できる予算を超えている可能性がある。
実際、CanalysによればPC再販業者のほぼ3分の1(31%)が、2025年にCopilot+ PCを販売する計画がない。PC再販業者の34%は、2025年のPC販売のうちCopilot+ PCは10%未満になると見込んでいる。
Canalysの調査は、AppleがMicrosoftと直接競争していないことを明らかにしている。2020年以降、AppleはIntel製プロセッサの使用をやめ、Armアーキテクチャに基づく自社製プロセッサに移行した。Appleはいわゆる「Appleシリコン」としては第3世代となる「M3」を搭載したデバイスを出荷している。これは、Copilot+ PCの一過的なブームに乗ったPCベンダーの主力製品よりも、成熟した製品になっていると見ることができる。
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